「吊り構造」最高峰インシュレーターがさらに進化。 WELLFLOAT「WELLDELTA Basilis II」を4人の評論家が体験
独自の「吊り構造」を採用した究極の振動対策ウェルフロート・シリーズの最高峰インシュレーター「ウェルデルタ バシリス」がマークIIへと進化を遂げた。
最大のポイントは重力波の検出にも用いられている振り子構造を従来の1段から2段にしたこと。最高峰オーディオボード「WELLFLOAT Double 4548」の技術を余すところなく投入したモデルとなっている。
スピーカーやオーディオラック等のスパイクベースとして、あるいはハイエンド・アンプや各種プレーヤーのグレードアップアイテムとして、さらには1個使用することで、コンパクトなシステムにも適合するなど幅広い用途提案ができる。
前回の本誌198号でデビューしたこの「WELLDELTA BasilisII」は、絶大な評価を受けて本年度のオーディオアクセサリー銘機賞2026にて最高栄誉の"グランプリ"を受賞した。
本項では井上千岳氏、小原由夫氏、山之内 正氏、角田郁雄氏が様々なシステムで効果を体験。その魅力をレポートする。
多段振り子型を採用したインシュレーターの究極形
三角形のウェルデルタ・バシリスIIについては前回の198号でも紹介しているが、引き続きその威力を検証してみることにしたい。
というのは、ひとつにはこれまでずっとソースにはCDを使ってきたが、本格的にストリーミングを使うようになったのでそこをよく聴いておきたいということ。
もうひとつは、ストリーマーなどにはコンパクトなものが多いので、バシリスIIの1個使いをきちんと試してみたいということがあった。今回はそういう方向で聴いてみたいと思う。
始めに少し繰り返しになるが、バシリスIIについて簡単に復習しておくことにしたい。
バシリスの原型はウェルデルタである。元はピアノ用のフルコン・メカを応用したL字型のバネ構造を基礎として、このウェルフロート・メカを三角形のベースに3基搭載してインシュレーターとしたものである。
この時点ではカバーのないスタンダード・バージョンだったが、その後中村史郎氏のデザインによってアルミ削り出しのトップボードを加えたスペシャル・バージョンが登場。これがウェルフロート・バシリスである。
バシリスIIはこのウェルフロート・メカを、2段に重ねた構造である。「バベル」に始まる多段振り子型で、ウェルフロートの場合1段増すごとに計算上は除振比が1万分の1になる。2段だと1億分の1ということになり、1段のバシリスと比べてさらに1万分の1という結果が得られるわけである。(井上千岳)
各種機器に使用した4人の評論家による試聴レビュー
ストリーミングプレーヤー Bluesound「NODE ICON」に使用
従来モデルにはなかったより深い静寂感を再現(井上千岳)
ブルーサウンドのストリーミングプレーヤー、NODE ICONの下にバシリスIIを1個セットして、ストリーミングで聴いてみることにした。幸いこれまでCDで試聴していたのと同じソースがQobuzでも聴けるので、それを使用する。
ただいずれも24bit 96kHzないし192kHzのハイレゾ音源なので、それがどう出てくるかが焦点である。
これにはちょっと面白い現象が見られた。
まず乗せた直後はあまりパッとしない。というより音が減ってしまったような感じがしたのである。これは逆効果かなと思ったが、そのまま乗せておいた。
するとしばらくして、妙に周囲がしーんとしていることに気がついた。静寂感が異様なほど高まり、音数は元に戻って今度はディテールの起伏が大変繊細に鮮やかに聴こえる。
多分機器となじんだのである。インシュレーターなどにはこういうことがよくある。そして一度なじむと、後はひたすら静かさが深まってゆく。エレクトロニクスの場合は、こういう具合に利いていくものなのだと納得したのである。
音が出てまず感じたのは静かさである。静寂感が深い。微振動まで消えてしまったようなしんとした空間がある。これがいままでのバシリスにはなかった違いで、そこから音楽の再現性に色々な変化が生じてくるのである。
バロックでは低域が深いところまで伸びやかに沈んでゆくのがわかる。チェロやヴィオローネ、テオルボなどだが、それも重々しく沈むのではなくするりと引っかかりなく伸びている。また遠近がわかりやすく、立体感がもっと明瞭だ。音場空間の中に、ヴァイオリンやチェロ、チェンバロなどが点在して、その前後や距離感がよく見える。
ここまでの立体感があったかと思って試しにCDも聴いてみたが、ストリーミング特有のもののようである。
しかしそれがバシリスIIになってはっきりわかるようになったのも事実で、ハイレゾ音源の意義というものがより確実に引き出されてきたのを感じるのである。
ピアノも低音部の実在感が高い。底の方までにじみや濁りがないだけでなく、その響きが高密度なのだ。肉質感が高い。タッチが太く芯が強く骨格が明確で音楽の存在感ががっしりとしている。重い軽いということではなく、目が詰まっているということである。
コーラスのハーモニーが厚手でしかも軽快なのは言うまでもなさそうだ。これはノイズが激減していることの現れで、空間を満たす余韻の量が歴然と違う印象である。
オーケストラは鮮烈さが際立つ。ディテールがていねいに拾い上げられて、小さな凹凸まで明快な起伏を見せる。弾みがよくなったようにも感じられるが、それも微小な信号から汚れが消えたためである。
1万分の1と1億分の1の違いというのはこういうものかと考えるのはちょっと行き過ぎのようにも思うが、現実にそれくらい音が変わるのは間違いないことである。
スピーカー Bowers & Wilkins「802 D4」に使用
2段は明らかに次元が違う 低域の向上度が半端でない(小原由夫)
ステンレスとアルミニウムを組み合わせ、免振構造の小型ウェルフロートメカを採り入れた振動対策アイテムが2層構造になったからといって、果たしてどれほどの改善効果のアップがあるものか、試聴前は半信半疑でしかなかったのだが、音を聴いてその改善度合いに心底たまげた次第だ。
試聴はB&W 802 D4のスパイク脚部に1段と2段構造のウェルデルタ・バシリスを入れ替えて比較したのだが、1段タイプでも十分な効果が実感できたのに、2段タイプは明らかに次元が違う。
付属スパイクから1段タイプに交換した段階で、S/Nの向上と音像定位の明瞭度アップは実感できた。低域は淀みなく深く伸びる。
それがどうだろう、2段にした途端に低音の立ち上がりにスピード感が付き、ウーファーの制動力がさらに上がった感じになった。まるでパワーアンプのダンピングファクターが高まったような印象。音像定位は安定してくっきりと迫り出し、足元がふらつかない。ベースラインの克明さと解像感のアップが半端ないのだ。
インシュレーターの効果で低音が一段と深く伸びる経験は何度もあるが、解像力が上がり、ベースラインのピッチが克明になったように聴こえたことはそうそうない。
吊り構造による多段振り子の仕組みは、いわばジークレフ音響のシンボリックなメソッド。そこにハイエンドオーディオ機器との組合わせに配慮したデザインが採り入れられれば、最早鬼に金棒。私も自宅システム導入を検討したい。
前後方向の定位の精度が向上 瞬発力や微細な情報も高まる(山之内 正)
床やラックを介して伝わる不要振動は音像のにじみや歪など様々な形でオーディオ機器に悪影響を及ぼし、再生音の純度が低下する。その不要振動を独自の振り子構造メカによって水平方向の動きに変換し、オーディオ機器を有害な振動から解放するのがウェルフロート製品の重要な役割だ。
今回、ウェルデルタの上位モデルであるバシリスが進化した2層構造の「バシリスII」の効果を確認した。
3個のメカで構成されるバシリスの振り子構造を上下2層に重ねて計6個のメカを配置し、制振効果を向上させるという。
私はコントラバスのエンドピンを支える用途に楽器用のウェルデルタを使っており、演奏技術と耳の鍛錬に役立つことを体験済みだ。オーディオ機器用のウェルデルタも音の立ち上がりと音色を改善する効果が非常に大きく、リスニングルームやスタジオで顕著な効果を確認している。
今回は802 D4のスパイクベースとしてバシリスと「バシリスII」を使用し、効果の違いを確認した。
未使用時に比べるとバシリスを使用することで音像定位が高精度に定まる。
「バシリスII」は前後方向にも定位の精度が上がり、ティンパニや金管楽器の瞬発力が明らかに向上する。声や旋律楽器の表情のゆらぎや息遣いなど微細情報もIIの方がよりきめ細かく伝わり、演奏家の意図が明確に聴き取れるようになった。
スピーカーに導入すると、音色とハーモニーの再現力を高める顕著な効果が得られる。
アナログプレーヤー Technics「SL-1000R」に使用
演奏の空気感や微細な音をさらにリアルに引き出す(角田郁雄)
ウェルフロートのアイテムは用途に応じて選択の幅が実に広い。同社の吊り構造は、設置する機器の振動を低減するだけではなく、床振動から機器に伝わる振動まで低減させてしまう。それは実際に使用すればすぐさま分かる効果である。そのシリーズから独自の振り子構造が1段仕様から2段仕様に進化した「ウェルデルタ・バシリスII」が発売された。
まず、ハイエンド・インシュレーターらしい精密感のあるデザインがいい。
仕様としては、ウェルフロート・ダブル4548の技術を投入していることが特徴。筐体自体もアルミとステンレスの異種金属の組み合わせで不要共振が発生しない。
内部には新開発の3基×2層のウェルメカがあるのだが、実際にテクニクスのアナログプレーヤー、SL-1000Rを使いその脚部4点の下に1段式、2段式の順に設置して、その違いを聴き比べてみた。
1段式も絶大な効果なのだが、2段式は一聴して明らかに音像にブレがなくなるのがわかる。それどころか演奏の空気感や微細な音がさらに引き出されてきて、システム全体がさらにアップグレードされたかのような感覚になる。
音の透明度にも差がある。ダイナミックなドラムスや低い音階のベースの響きはさらにリアルに聴こえてくる。再生機器の持ち味をさらに鮮明にしてくれる。これは一旦使用すると手放せないハイエンド・インシュレーターである。
製品情報・スペック
インシュレーター(2層多段振り子構造):WELLFLOAT「WELLDELTA Basilis II」
- 設計:小型ウェルフロートメカ 6機(3機×2層)内蔵
- 材料:ステンレス、アルミニウム
- 耐荷重:200kg/個あたり(静荷重)
- サイズ:幅155mm、高さ40mm
- 質量:1.2kg
- 価格:110,000円(1個/税込)
取り扱い:ジークレフ音響(株)
〒563-0023 大阪府池田市井口堂1丁目10番19号
TEL:072-762-8730
公式サイト:https://www.wellfloat.com/
※本記事は『オーディオ・アクセサリー 199号』からの転載です。


































