公開日 2019/04/24 06:00

大ヒット機が “正常進化” 超えた飛躍、 マランツの手頃・小型な本格オーディオ「M-CR612」レビュー

2倍の駆動力を実現する“パラレルBTL”も試した

写真を見てもらうと、スピーカーと比較して、M-CR612がいかにコンパクトなのかわかるだろう。やや丸みを帯びたコンパクトなボディから、もう少し“かわいい”雰囲気をイメージしていたが、シャンパンゴールドのボディはオーディオ製品として上品な装いで、筆者宅のオーディオ環境に設置しても全く引けを取らない。また、白色の壁で冷たい部屋・暖かい雰囲気の部屋のどちらでもインテリア的にフィットしてくれる。

オーディオルームでも引けを取らないデザイン

リビングスペースに設置してみたが、インテリアに馴染んでくれる

セッティングをしていて気がついたことだが、スピーカーターミナルは金メッキされている価格以上のものが付いていたり、電源ケーブルは着脱可能なメガネ型を採用しているなど、細かい部分でも手の込んだ仕様になっている。こういうところからも、マランツがこのコンポーネントに本機で取り組んでいることが見て取れる。余談だが、M-CR612はブラックカラーもラインアップされているので、今回のようなブラックカラーのスピーカーと組み合わせれば、より高級感を演出することもできる。

カラーは、シルバーゴールドおよびブラックの2色をラインナップする

そして実際に使ってみて便利さを感じたのは、簡単に初期設定ができる「かんたん設定」機能が搭載されていること。フロントのディスプレイは3行表示で読みやすく、対話形式で初期設定ができる。ボタンひとつでWi-Fiルーターと接続設定できる「WPS」機能も備えるなど、幅広いユーザーの使いやすさが考えられていると感じた。製品がユーザーフレンドリーなのは何よりも嬉しいところだ。


DALI「OBERON1」で通常再生をテスト

試聴では、最初にデンマークの人気スピーカーメーカー、DALI(ダリ)のエントリー・ブックシェルフモデル「OBERON1」と組み合わせ、標準設定のアンプ駆動モード「スタンダード」(それぞれのスピーカーにおいて、+/-で接続する一般的な接続方法)の設定で聴いた。

まずはCDをトレイに入れ、ムラヴィンスキーがレニングラード・フィルを指揮したクラシックの名盤「交響曲第6番 -悲愴-」を再生。第一印象は解像感の高い音だということ。オーケストラを構成する各楽器の分解能が高く、ヴァイオリンをはじめとする弦楽器のアコースティックな質感も秀逸に表現する。このクラスのアンプは、機器が備える音調が支配的になり、楽曲の表現をスポイルする時があるが(再生する楽曲がその音調にはまらないと、ひどいことになる)、M-CR612は全くそんなことはない。基本性能の高さを実感した。

DALI「OBERON1」で試聴を行う土方氏

DALI「OBERON1」で試聴を実施

次にNASのネットワーク再生を用いて、筆者が最近ジャズ・ボーカルのリファレンスにしている、ノラ・ジョーンズ「And Then There Was You」(96kHz/24bit FLAC)を試聴した。先ほどのムラヴィンスキーは録音年代も古いが、こちらは最新の録音ということで、高域から低域までのレンジも広く、イントロのピアノは透明感があり、聴感上のSN比が良く、ボーカルにはリアリティがある。明るい音色で聞きごたえも良好だ。スピーカーが安価な割に情報量も出ており、実売価格で10万円を切るであろう組み合わせとしてコストパフォーマンスの高さを感じる。


DALI「OBERON1」でパラレルBLTをテスト

さて、OBERON1はシングルワイヤリング仕様のスピーカーシステムなので、バイアンプ駆動ができない。そこで活きるのが、今回から採用されたアンプ駆動モード「パラレル BTL」だ。モード変更は付属リモコンか本体のボタンを用い、「設定メニュー → オーディオ → スピーカー設定 → アンプモード」と進み、「標準」「バイアンプ」「パラレルBTL」から選ぶだけだ。

OBERON1の入力は1系統のみ。そこで活きるのが「パラレル BTL」だ

改めてノラ・ジョーンズを再生してみると、衝撃に近いほどの変化であった。ピアノを含む全体帯域の音の締まりが良くなり、音像のリアリティやサウンドステージの奥行き感さえ変わってくる。中でも低域の変化が特に大きく、一聴してベースの立ち上がりが早くなり力感が向上。締まりの良い音を聴かせてくれる。オーディオにおける低域再生のお手本のような音で、これをこのサイズのコンポーネントが実現しているのだから驚くほかない。

次ページスピーカーのグレードを上げ、B&W「707 S2」で試聴

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