公開日 2018/10/23 19:00

「iPhone XR」レビュー。XSやXS Maxと肩を並べる完成度、廉価機でも下位機でもない

10月26日発売
山本敦
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iPhone XRの実力検証

それでは、iPhone XRの実力検証に進もう。まず最初に、筆者が最も気になっていた液晶ディスプレイの画質を、有機EL方式のSuper Retina HDディスプレイを搭載したiPhone Xと見比べてみた。

ディスプレイは全画面表示に対応。iPhone Xよりもディスプレイ周辺の黒いベゼルが若干広くデザインされている

通常の画面表示についてはまったく粗さを感じない。むしろiOS 12のフラットデザインのアイコンが、iPhone Xよりも画面により深く、素直に馴染んでいるようにすら感じられる。

前面を覆うディスプレイは、明るさを最大にしてみても明暗のムラが見つからない。iPhoneで撮った風景写真は、自然な色合いや青空に浮かぶ雲の階調まできめ細かく描いてみせた。視野角も広く、iPhoneで撮った写真をふたり並んで見る、といったシチュエーションでも高い画質を保てる。

自然なきめ細かさを表現できるLiqiud Retina HDディスプレイの完成度は想像以上によかった

iTunes Storeに公開されている映画から『スパイダーマン :ホームカミング』を視聴した。iPhone XRのディスプレイはHDR表示に非対応だが、自然な明るさと色合い、コントラスト感のバランスをキープしつつ、沈み込む暗部と煌めく明部に隠れてしまいがちな情報を丁寧に引き出した。街の夜景シーンの奥行き感、光に照らされて浮かび上がる登場人物の肌の凹凸も鮮明に、かつ自然に浮かび上がってくる。進化したRetina液晶ディスプレイの底力を感じた。

なお音質についても、オーディオ用DSPのアルゴリズムを見直し、ステレオスピーカーによる音声の分離感を高めている。前へ立体的に浮かび上がる役者の台詞と、細やかなサラウンド音声の粒立ちにも満足した。そして、小さなお子様がいる家庭にとっては、新iPhoneが動画音声のステレオ記録に対応したことも買い換えの動機になるかもしれない。

本体内蔵スピーカーはクロストークノイズを大幅に減らし、ステレオイメージをブラッシュアップ。中央の端子はLightning

シングルレンズでも演算パワーで自然なボケ味

iPhone XRのカメラで撮影した写真・動画も安定している。4K動画は60fpsでの記録にも対応。30fpsでの動画撮影時には、明暗差のあるシーンがより美しく撮れる、ビデオの拡張ダイナミックレンジにも対応した。

メインカメラによるポートレートモード撮影は、iPhone Xのそれとは少し異なる。iPhone XRのポートレートモードは「人物」撮影に特化しているのだ。

デュアルレンズのカメラユニットを使うiPhoneとは異なり、シングルレンズでポートレート撮影を可能にしている・そのためにA12 BionicチップとNeural Engineによる機械学習のパフォーマンスがフル活用される。人物を撮影したデータを機械学習させ、人物を被写体として捉えた際の輪郭分析、背景との切り分けを瞬時に行う。そしてワンシャッターで記録した写真に、背景の自然なボケ味を付けて残せるのだ。

同じ撮影位置からiPhone XRとiPhone Xのメインカメラでポートレートモードにセットして人物を撮影。写真はiPhone Xのもの

iPhone XRの方が人物の背景を広く写真に収められる。そのぶんiPhone Xのようにバストアップを撮影したい場合は被写体により近づき、シャッターを切ることになる

iPhone XRのレンズは広角26mm相当なので、被写体の人物の背景もワイドに捉えられる。より雰囲気のある写真が撮れ、旅行の思い出などが鮮明に蘇ってくるだろう。そして、撮影後のデータを「写真」アプリで開けば、背景のボケ具合を後処理で調整することもできるのだ。

メインカメラで撮影したポートレート写真の被写界深度を調整。人物の輪郭を正しく検知しながら背景だけがぼかせる

実際、たくさんの木が並んでいるようなごちゃっとした背景でも、人物の輪郭が正確に解析され、ボケ味を調整できた。被写体の人物の肌色の鮮やかさ、陰影のコントロールはメインカメラで撮ったポートレートもライティングモードで整えられるが、メインカメラ側のモードは「ステージ照明 カラー/モノ」を省いた3種類までになる。

夜景写真も明部・暗部の情報を目で見た印象に近いレベルで残せる

メインカメラで花壇を撮影。鮮やかな色合いと自然な明暗のコントラスト感がiPhoneらしい

次ページiPhone XS/XS Maxと序列が付けられない完成度

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