公開日 2015/04/22 15:24

Dynamic Motionのダイナミック型イヤホン「DM008P」レビュー − オールアルミ筐体の上位機

DM008との個性のちがいも検証
Dynamic Motionのダイナミックドライバー採用イヤホン「DM008」は、その実力とコストパフォーマンスで、ブランド初号機ながら着実にそのファンを増やしてきた。今回はその上位モデルとなる「DM008P」を高橋敦氏がレビュー。イヤホンファンを唸らせるその魅力を分析する。

Dynamic Motion「DM008P」

Dynamic Motion社のイヤホン「DM008」は、同ブランド初の製品として2013年に国内発売された。しかし、Dynamic Motion社の創業は1982年である。創業からDM008開発に至るまでの約30年、同社にはスピーカーのドライバーユニットやヘッドセットドライバーの開発や設計、そして生産を手がけてきた歴史がある。特にダイナミック型ドライバーについては長年の実績があり、著名なイヤホンにも搭載されてきたという。

長年培ってきた技術を最大限活かして、ダイナミック型イヤホンに真正面から取り組んだ結果誕生したのがDM008だ(レビューはこちら)。目新しい技術やブランド力にこだわることなく、ひたすらに音質を追求した本機は、コストを抑えながら優れたサウンドを持つイヤホンとして、日本のポータブルオーディオファンの間で着実にその存在感を増してきた。その位置づけは「新人にして燻し銀の実力派」とも表現できるだろう。「DM008P」は、このDM008をベースに筐体をオールアルミ筐体を採用したモデルとなる。

「DM008」 ¥12,800円(税抜)

「DM008P」 ¥19,800円(税抜)

今回の主役はDM008Pだが、筐体以外の構成を同じくするということで、改めてPM008にもスポットを当てながら話を進めていきたい。

イヤホンに限らず、何らかの市場に新規参入する際にメーカーには、企画・開発・製造など様々な力が求められる。例えば豊かな発想や飛びきりのアイディア=「企画」があるならば、イヤホンの「開発」「製造」の技術や設備を持つ会社と組んだり、そこに外注に出したりすれば、そのブランドの製品としては成立する。もちろんそれはそれでよい。そのおかげでその豊かな発想や飛びきりのアイディアを具現化した製品が、我々の元に実際に届くのだから嬉しいことだ。

一方で、大した発想も優れたアイディアがなくても、それらしくまとめてあるだけで実際の音質も期待外れ、そんなメーカーや製品の参入ハードルは下がり、玉石混交の度合いが強まっている感は否めない。

だからこそ、前述のように裏方としての実績を積んだ上での自社ブランド参入となるDynamic Motionのような存在は貴重なのである。「派手さはないが堅実な良品」という個性はさらに頼もしく思えてくる。その堅実さはスペックや技術からも伺うことができる。

PM008、PM008Pともに、最大のアピールポイントはもちろんダイナミック型ドライバーだ。振動板の口径は8mmで、ドライバーユニット全体のサイズもそれに準ずる。しかし駆動力の基盤となるマグネットは、通常の10mmドライバーに搭載されるマグネットに相当するサイズのものが搭載されている。マグネットの配置を従来よりも外周寄りにするなどの工夫により、大型マグネットの搭載を実現したそうだ。

PowerDynamicDriverの説明図

小さめの振動板を大きな磁石で駆動する。いわゆるパワーウェイトレシオ(出力重量比)に優れる構成と言えるだろう。軽い車体に強力なエンジンを積んだスポーツカーのようなものだ。振動板を強力に加速させ制動し、正確かつ力強い駆動を期待できる。なお振動板の素材は、樹脂の一種ではあるが一般的に多く用いられているそれ(PET)とは少し異なる、彼らの求める特性の素材とのことだ。

そして筐体。ここがDM008とDM008Pの大きな違いだ。前者はアルミと樹脂を半々くらいで組み合わせているが、後者はオールアルミ筐体だ。オールアルミ化したことで剛性を高め、それに伴って専用の音質チューニングも施されたとのこと。アルミの仕上げ、質感もよい具合だ。アルミの輝きをほどよく生かしており、プレミアムモデルらしい雰囲気を漂わせる。

DM008はアルミと樹脂を半々くらいで組み合わせた筐体を採用

DM008Pはオールアルミ筐体を採用する

形状としてはシンプルなデザインだが、フラットケーブルが筐体にそのまま流れ込むように見せる処理、そしてそのラインで左右の筐体に「L」「R」を記すというあたりは面白い。

次ページDM008Pのサウンドを徹底分析

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