公開日 2013/06/24 11:02

SHURE「SE425」を鴻池賢三がレビュー − 人気イヤホンの実力に改めて迫る

上位「SE535」、下位「SE315」との違いは?

音質レビュー:上位「SE535」、下位「SE315」との違いは?


音質傾向は結論から言うとモニターライク。シュア製品の根幹として、全ての製品はプロの使用にも耐える原音に忠実な音調と言えるが、上位のSE535が低域用ドライバーを2基搭載し、やや厚みのあるリッチな音調を、下位のSE315はシングルドライバーでやや低域が薄いものの、ネットワークを廃した高鮮度の音調を特徴とするのに対し、本機は周波数特性面でフラットな印象だ。

試聴はフォームタイプのイヤパッドで行った。良い意味で面白く無い。特定のジャンルや音で飛び抜けた魅力を発すると言うよりは、クラシック、ジャズ、ポップス、何が来ても無難に鳴らすバランスの良さや安定感が魅力と言えるだろう。

試聴の定番、Art Pepperのアルバム「Art Pepper meets The Rhythm Section」の「You’d Be so Nice To Come Home To」を聴いたが、多くのイヤホンでペラペラの草笛のような音色になってしまいがちなサックスの音色は、低音が適度にサポートされているので、野太くもならず深みや奥行きが伴って質感が高い。特に音色がグイッと低域側へシフトする場面では、移行がナチュラルでサックスの胴鳴りもリアル。楽器の音色を忠実かつ、豊かに描き分ける能力の高さは、モニター用途に適した特性と言えるだろう。

基本となる音質性能は申し分なく、高域の解像度を伴いつつ柔らかで硬質な印象を与えないのは、SHUREならではの巧さだ。低域は音圧に頼らず、レンジの広さで空気感も豊か。コンサートホールで収録された楽曲では、ホール独特の空気感もありありと感じられ、奥行きや立体感を伴って空間の広さも掴み取れる。遮音性能の高さによるS/Nの良さ、感度の良いドライバー、上質な低域再現能力の相乗効果と言えるだろう。

まとめ:SE535とはキャラクターの異なる“モニターライク”なモデル

さいごに、本機はバランスド・アーマチュアの得意とする繊細さに、2ウェイ構成で低音を強化したモデルであるが、低域の強化は「強調」でなく、あくまでもバランスド・アーマチュアの弱点を補う適度な使いこなしに魅力を感じる。音質を左右する要素として周波数特性が全てではないが、周波数特性が整う事による「美しさ」は必ず存在する。

SHUREのラインナップとして、本機はSE535の下位に位置するが、製品のグレードとしては下位と言うよりも、キャラクターの違いと考えて良い。モニターライクな音調を好むユーザーなら、むしろ本機の方がバランス良く感じるに違いない。

冒頭でモニターライクと表現したが、モニター用途としてはもちろん、あらゆる音楽ジャンルで、制作者の意図を確認するには、本機はおすすめしたいモデルである。


鴻池賢三 プロフィール
THXISF認定ホームシアターデザイナー。ISF認定映像エンジニア。AV機器メーカー勤務を経て独立。現在、AV機器メーカーおよび関連サービスの企画コンサルタント業を軸に、AV専門誌、WEB、テレビ、新聞などのメディアを通じてアドバイザーして活躍中。2009年より(社)日本オーディオ協会「デジタルホームシアター普及委員会」委員/映像環境WG主査。

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