ノズル交換で音をチューニング可能

SHURE、4ドライバーのハイエンドイヤホン「SE846」

ファイル・ウェブ編集部
2013年05月09日
SHURE Japanは、4ドライバーを搭載した同社カナル型イヤホン最上位機「SE846」を7月中旬に発売する。価格はオープンだが12万円前後での販売が予想される。本体色はクリスタルクリアー。


SE846

本体色はクリスタルクリアー
本日開催された新製品発表会には、米国のShure Incorporatedからモニタリング・カテゴリー・ディレクターのマット・エングストローム氏、並びに同社イヤホン・プロダクト・マネージャーのショーン・サリバン氏が出席し「SE846」の特徴を説明した。


Shure Incorporatedから来日したショーン・サリバン氏(左)、マット・エングストローム氏
SE846は、SE535の上位機にあたるカナル型イヤホン「SEシリーズ」の新たなフラグシップモデル。「型番は末尾が『6』。SE530からSE535へのステップアップ時に“交換ケーブル”を採用した際に『5』へステップアップして、今回はノズル交換という新しいハイライトが加わったことから『6』とした。頭の数字『8』は、5よりも上位モデルだからということだが特に深い意味はない」(エングストローム氏)。

新規に開発した4つのドライバーを搭載

ドライバーは3ウェイ4ドライバーで、ローエンドを担当するドライバーが2基と、ミッド、ハイのドライバーがそれぞれ1基という構成を採用している。これまでのフラグシップモデルである3ドライバー機のSE535から、新たにミッドドライバーが追加されたかたちとなる。感度は114dB、インピーダンスは9Ω(1kHz)、再生周波数帯域は15Hz〜20kHz。ノイズ減衰量は37dB(最大)。

サリバン氏は発表会の壇上にて、SE846のシステム構成を解説した。本体のシステムは電気系、機械系、アコースティック系の3つに大別され、3ウェイのネットワークを搭載している。

ショーン・サリバン氏

電気系では、低域については抵抗値を調整することで出力をコントロール。中域はキャパシターを調整しながら低域の入力信号をロールオフする。また高域でも入力信号のコントロールを行い、3つの要素をバランス良く調整することで、3ウェイ・4ドライバーの特性を最大限に活かす構造とした。

SE846のシステム構成

SE846の内部構造

機械系については「SE846のために、4基のドライバーはすべて新規に開発した」とサリバン氏は語る。低域用ドライバーはパワフルな低音再生のためにダイヤフラムの駆動域を大きく設計。中域用には高感度な特性を備えるドライバーを配置。また高域用ドライバーはコイルを軽量化してスピーディーなレスポンスを実現している。

アコースティック系の部分については「イヤホンの音を最終的に決定する大事な部分。カーペンターの仕事に例えるなら、電気系が“ペンキ”、機械系が“ハケ”、アコースティック系が職人自身の“腕前”にあたる」とサリバン氏は説明を加える。アコースティックの調整項目にはダンパーやフィルター、ハウジングの構造など、ドライバーから耳までの間に影響を与えうる全てのパーツが含まれ、それぞれに入念な作り込みが行われてきたという。

ピュアな低域再生を実現する「ローパスフィルター」

本体には薄いメタルのプレートを10枚溶接した、経路長4インチとなる、独自開発のローパスフィルターを装備。サリバン氏はSE846に搭載されているローパスフィルターの構造図を紹介。低域の音は10枚のステンレスプレートにレーザーカッティングで成形された長いローパスフィルターを通過して、90Hz付近から〜3dB(250Hz付近で〜10dB)のロールオフを実現。75Hz付近からの低域を、歪みや音色の変化無く自然にロールオフさせることで、「本物のサブウーファーの豊かな低域再生を可能にした」(サリバン氏)という。

ローパスフィルターの構造。10枚のメタルプレートをレーザーで溶接

なお、90Hz付近でロールオフを設定した経緯については「多くのプロトタイプを製作しながら、実際にローパスフィルターの長さやハウジングのサイズに影響される音も検証を重ねてきたが、90Hzでのサウンドが一番良かった。また一般的なサウンドシステムなどでも90Hzを採用する製品が多かったこともある」とサリバン氏は説明した。

ローパスフィルターの効果。赤がローパスフィルターを通した際の周波数特性。ロールオフすることでミッドレンジに悪影響を与えないよう工夫している


「ノズル」のパーツ交換で音をカスタマイズ可能

本機は、ノズル部品(ノズルインサート)を交換できることも特徴。ノズルを取り外し可能としたことで内部のクリーニングができるようになったほか、音質をカスタマイズした3種類の専用ノズルを交換して異なる音色が楽しめる。

ノズルインサートを交換し、音の傾向を変えることができる

3種類のノズルインサートの周波数特性の違い。1kHz〜8kHzの帯域の特性を変更できる

同梱される“ノズルインサート”と呼ばれる交換パーツは「ブライト(Bright)」、ニュートラルな「バランス(Balanced)」、より豊かな低域が楽しめる「ウォーム(Warm)」の3種類。ブライトは1kHz〜8kHzが+2.5dB、ウォームは同帯域が-2.5dBとなる。それぞれブライトがクリア、バランスがブルー、ウォームがブラックに色分けされており、本体パッケージに付属する“ノズルキー”という名称の工具を使って、ユーザー自身が簡単にパーツを取り替えられるようになっている。なお、出荷時には「バランス」のノズルインサートが装着されている。実際にノズルインサートを交換しながら音を聴き比べてみると、「バランス」の装着時に比べて「ブライト」を付けたサウンドは高域が煌びやかで伸びがあり、中高域の解像感が高まる印象。「ウォーム」に変えて聴いてみると、低域がより引き締まり、量感もさらに豊かなものになる。かといって過度に低域がだぶつくことはなく、低域を軸にサウンド全体のバランスがどっしりと腰を落ち着けるようなイメージだ。

ノズル部の構造。ノズルインサートを交換できる

交換用ノズルインサート。左からブライト/ウォーム/バランス


ノズルインサートの交換時に使用する工具・ノズルキー

左が交換ノズルインサートを収納するステンレスノズル。右がノズルとノズルインサートを固定するためのネジ式ステンレスカラー


ステンレスノズルを外した状態の本体

ステンレスノズルにノズルインサートを挿入


しっかりと奥まではめ込む

ステンレスノズルを本体に装着


続いてステンレスカラーを装着

ノズルキーでネジを回してしっかりと固定する


ノズルの交換完了

最後にイヤパッドを装着する


「ご説明したように、SE846は新規開発のドライバーや革新的なローパスフィルター、交換ノズルなど新しいフィーチャーを盛り込みながら、SHUREのノウハウを全て注ぎ込んだ結晶と呼べるハイエンド・イヤホン。これほどまでのテクノロジーを、こんなに小さなハウジングの中に収められていることにも注目して欲しい」とサリバン氏はSE846の高い完成度に胸を張った。


長さが異なる2本の同梱ケーブルはスマートフォンケース対応に

ケーブルは114cmと162cmの2種類を同梱し、イヤホン側はMMCXコネクターによって脱着可能。耐久性の高いケブラー素材を採用する。プレーヤー側のコネクタ部分は新たに段差が設けられ、スマートフォンやプレーヤーなどにケースを装着している場合でも、ケースと干渉せず接続することができる。

MMCX端子を採用

iPhoneケースをつけたままの状態でしっかりと端子がプラグインできる

イヤホン側のコネクターは本体のカラーリングに合わせてクリスタルクリアー系の色味とした。「ケーブル自体の柔軟性も高めている」(SHURE Japanスタッフ)という。


ケーブルは着脱交換対応

左側イヤホンのハウジング内部に見える赤色のパーツがドライバーキャリア
そのほかの同梱アクセサリーはフィルター付のフォーム・イヤパッド(S/M/L)、ソフト・フレックス・イヤパッド(S/M/L)、イエロー・フォーム・イヤパッド、トリプルフランジ・イヤパッド、プレミアムキャリングケース、6.3mmアダプター、レベルコントローラー、航空機内用アダプター、“ノズルキー”(ノズル取り外し用キー)、交換用ノズルインサート(ブライト/バランス/ウォームの3種類)、ケーブルクリップ、ポリッシュクロス。

付属アクセサリー


SHURE最高のイヤホン技術により誕生したSE846

新しいフラグシップイヤホンであるSE846が開発された経緯についてはエングストローム氏が説明を行った。


マット・エングストローム氏
はじめにSHUREのイヤホン開発の歴史が紹介された。同社では1995年に「PSM600」と「E1」によるプロ用のインイヤー・モニターシステムを開発・発表。1997年から販売をスタートし、「コストパフォーマンスの高いシステムとして多くのユーザーから支持を集め、本機がモニターイヤホンの市場を開拓してきた」とエングストローム氏は振り返った。続いて2000年に発表されたイヤーモニター「E5」は、ユニバーサルな形状ながら多くのユーザーに優れたフィット感を提供する製品としてヒット。その成功が現在のSHUREにおけるハイエンドシリーズの開発につながっているという。

SHUREのイヤホン開発の歴史を紹介

初代イヤーモニター「E1」


ヒットモデルとなった「E5」

SHUREイヤホン製品の歴代モデル

エングストローム氏は、同社が1997年から手がけてきた代表的なイヤホンの一覧を紹介。エングストローム氏自身も1998年にSHUREに入社し、イヤーモニター「E2」を担当して以降、基本的には全てのモデルの開発に関わってきた人物だ。「SHUREではとても優秀なエンジニアたちが一貫してイヤホン製品の開発に携わってきたことで、実験や検証を通じたノウハウの蓄積を資産とし、これを現在のモデルに連綿とつなげられている」と、ブランドの強みをエングストローム氏は説明する。「製品を一覧で見ていただければ、一貫したエンジニアリングのノウハウとスピリットが表れてることが明らかだろう」とした。なお、今回発表されたSE846の開発にも、SHURE本社のアコースティックエンジニアであるスコット・フリンカー氏が大きな役割を担っていることも紹介された。


イヤホン開発のフィロソフィーについて説明を続けたエングストローム氏は、「私たちは常にアコースティクスの価値観を最優先に置いてイヤホンを開発している。ミュージシャンが奏でた音を、最終的にイヤホンで聴く際、完全に再現することにプライオリティを置いている」とコメント。そのフィロソフィーはSHUREのマイクロフォンからイヤホンまで、全ての商品アイテムの開発において一貫しているという。

エングストローム氏は続いて、イヤホンの音決めのについて触れ、「音のヒアリング(聴感)は“指紋”のようなもので、聞く人によって少しずつ感じ方が変わるものだと捉えている。例えばある人にとってはパーフェクトな音に感じられても、別の人が聞くと違って感じられるかもしれない。そこで、私たちは“フラットな音”をリファレンスとしている。そこは製品の音を決める際のスターティングポイントであり、ゴールではない。フラットな音を起点として、これにチューニングを加えて最終的なサウンドに仕上げていくというプロセスが、大きなメリットをもたらすと考えている」と述べた。

SE846の開発に当たっては「マルチドライバーを搭載することの、本当の価値について改めて追求するところからスタートした」というエングストローム氏。マルチドライバーのイヤホンは、ただ多くのドライバーを積めば良いのではなく、個々のドライバーが与えられたハウジング内部のスペースで最大のパフォーマンスを発揮できることが大切であるという。

SE846の開発には数年間の期間を要した

「今回発表したSE846は、SHUREの最高の技術によって4つのドライバーによるベストパフォーマンスを実現した」というエングストローム氏。数年間の開発期間には、数百のプロトタイプを製作し、デザインスタディも繰り返してきたという。エングストローム氏は登壇の最後に、日本のSHURE製品のファンに向けて「こうして今日、日本のファンの皆様にSE846を発表できること大変光栄に思っている。ぜひハイクオリティなサウンドを多くの方々に味わってもらいたい」とメッセージを贈った。

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