岩井 喬が聴く「SE215 Special Edition」− SE215との比較も交えて徹底試聴!

取材・執筆/岩井 喬
2012年11月28日
SE215との比較も交えて徹底試聴

トランスルーセントブルーの爽やかなハウジングとなった「SE215 Special Edition(以下、SE215 SPE)」は、新色ダークグレーの短めのケーブルと音響抵抗スクリーンの変更によって低域特性の強化を図った、いわば「SE215」のバリエーション・モデルといった位置付けにあたる。約1万円とSE215からわずかに値上がりしたものの、手頃な価格ながら着脱式ケーブルを採用するなどの意欲的な姿勢を本機も備えている。

SE215 Special Edition

傾向的にはドライでモニター調のオリジナルモデルに対し、「SE215 SPE」はベース帯域のリッチさを際立たせロック&ポップスへの親和性を高めているといった印象だ。女性ボーカルや管弦楽器の高域系の音色はほぼ変化はないが、男性ボーカルや女性コーラスのベースパート当たりの帯域から下に向けて徐々に量感が増えているようである。低域増強モデルではボーカルの音抜けが損なわれるものも存在するが少なくとも「SE215 SPE」ではそうした中高域への音かぶりといった症状は見られない。

実際の試聴では「SE215」と比較しながら「SE215 SPE」のサウンドについてどのように違うのかも触れていこうと思う。試聴に用いたのはiBasso Audio社のポータブルオーディオプレーヤー「HDP-R10」(詳細)である。


SE215との比較も交えながら、「SE215 SPE」のサウンドを徹底チェック!

まずはクラシック&ジャズをチェック

まずは基本的な音源ということで、クラシック『ホルスト:惑星・木星/レヴァイン指揮・シカゴ交響楽団』を聴いてみる。管弦楽器の旋律は爽やかでハーモニー感はリッチに太さを出す傾向だ。打楽器のアタックは皮のハリとリリースの分厚い押し出し感を程良くミックスさせた感触で、ホール内のローエンドの響きを力強く融合させる。

続いてジャズ『オスカー・ピーターソン・トリオ/プリーズ・リクエスト』(“ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー”)では、オリジナルモデルではゆったりと響くくらいのウッドベースが、SE215 SPEでは太く朗々とした弦の振幅から深いリッチな胴鳴りをボワンボワンと響かせる。しかしダンピングは十分であり余韻が音場を濁すようなことはない。ピアノはウォームな低域弦の響きと軽やかな倍音が伸びる高域弦のハーモニクスが心地よい。ドラムも胴鳴り感は厚く豊かになっている。


ベースは?ドラムはどう聴こえる?ロックを試聴


SE215 SPEはケーブルが116cmに短くなり、扱いやすくなったことも特徴だ
ロックの『デイブ・メニケッティ/MENIKETTI』(“メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ”)ではレスポールの丸みあるディストーションがオリジナルモデルより太く表現され、リッチな倍音感をより強く感じることができた。リズム隊は太く力強いアタックで、リリースもブンブンと響くもののボーカルは輪郭感が分離良く明瞭度も十分。

ロックでも低域に特徴のあるソースということで、同一ジャンルだがベースラインが特徴的な『クイーン/THE GAME』(“地獄へ道づれ”)を聴いてみる。オリジナルモデルではやや腰高なベースで弦のアタックも良く掴めるが、「SE215 SPE」ではベースそのものがより耳元に近付いてきたようなパワー感で、表情豊かなプレイラインを楽しめる。ボーカルやコーラスもボトムの重心が落ちてきた。ベースプレイヤーの音を今一歩踏み込んで聴きたいというユーザーには魅力的な鳴りっぷりといえるだろう。

もうひとつ、伝統的なへヴィメタルスタイルを持つ『ライオット/Immortal Soul』(“ライオット”)のツーバスの響き方も確認してみよう。オリジナルモデルではツーバス含め、リズム隊そのものがアタックの粒立ちを中心に、余韻をほのかに膨らませているような鳴りだったのに対し、「SE215 SPE」ではツーバスはラウドな存在感ある太さで鳴り響く。ベースも伸び良くギターも厚みが出てツインギターのハーモニーが非常にリッチだ。しかし高域にかけて素直な音の際立ちを持っていることと、ドラムとベースのピークが比較的中域寄りのためリズムのキレは損なわれておらず、テンポの疾走感はしっかりと残っている。


女性ボーカルや打ち込みの表現は?


左がSE215 SPE、右がSE215のケーブル。SE215 SPEはケーブルのカラーもダークグレーに変更されている
さらにポピュラー系も女性ボーカルモノを中心に色々と聴いてみた。まずは儚げなボーカルと90年代的な打ち込みサウンドからなる『三浦理恵子/Confidence』だ。オリジナルモデルでは比較的ソリッドな傾向の高域と伸びやかなローエンドという鳴りであるが、「SE215 SPE」ではベースの一段下の帯域まで深く沈み、太く重いプレイラインが高域の粒立ち感をより浮き上がらせている。エレキのグリッサンドも太くコシがあり心地よい。

さらに同系統のリズム打ち込みモノでスピード感のある『橋本みゆき/Princess Primp!』を聴く。シンセの高域フレーズはキラキラとして、ボーカルやクリーンギターのすっきりとした旋律は残しつつ、声の下の帯域に厚みが出て安定感ある音伸びとなる。オリジナルモデルではキックやシンセベースはどしんと太く跳ねるような鳴りだったのがタイトなベースの引き締まりはそのままに、より筋肉質の力強い押し出しに変わりキレ良く全体をリードする傾向となった。

最後に『FictionJunction/stone cold』では粘りあるシンセベースがどのように変化するかであるが、アタックのピーク感がやや下にある印象で、常にベースのうねりが厚く鳴り響いている。しかしメロディラインの明瞭度は損なわれておらず、ボーカルやコーラスは厚みこそあれ、高域の伸びやかさ、滑らかさはそのままキープされる。ギターのボトムも太くリッチな厚みがあり、安定感あるサウンドをより強固にまとめ上げているかのようだ。

「SE215 Special Edition」はニュートラル基調でドライな傾向のオリジナルモデルよりもロックやポップスの核心を突いていかに楽しく聴かせるかというポイントにフォーカスを絞ったサウンド作りを行っているので、オリジナルモデルよりもやや割高感はあるものの、スマホやプレーヤー付属のイヤホンからレベルアップを考える際にはぜひお奨めしたいモデルである。


【執筆者プロフィール】
岩井 喬 Takashi Iwai
1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。

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