公開日 2009/12/25 14:38

2009年屈指のハイクオリティソフト、BD版「崖の上のポニョ」の実力を引き出す

話題のソフトを“Wooo"で観る

■Woooで見る「崖の上のポニョ」


筆者宅のレファレンスディスプレイとして活躍中の「P50-XP035」
本作のプルーフ盤を預かったのがさる10月だったが、それ以来、ほぼすべてのディスプレイ機器のテストに本作を使ってきた。その中で私の基準をいつの間にか形成したのが、テレビでは日立のプラズマ方式P50-XP035である。本連載でずっとこれを声を大にして言いたかったが、ソフトのBD発売(12月5日)後までじっと我慢していたわけである。

P50-XP035は、500GBのハードディスクを内蔵した、日立の録画テレビで最新のフルハイビジョンテレビである。カセット型HDD「iVDR-S」が挿入できる「iVポケット」まで含めて2種類の録画機能をはじめ、アクトビラへの接続、ダウンロードコンテンツが蓄積可能であることを筆頭に、本機の見るべき特長は多いのだが、最大のポイントは画質が良いことである。

P50-XP035は、新開発「フルHDダイナミック・ブラックパネル」を搭載している。セルの形状や電極構造、蛍光体まですべて刷新し黒輝度の低減とピーク輝度が向上した結果、コントラストは4万対1に達している。映像エンジンには「Picture Master Full HD」を搭載するが、これも躍進を遂げた。ヒストグラム解析を用いてシーン毎にコントラストの最適制御を行う「アドバンスドダイナミックコントラスト」、複数の指定色の色合いや色の濃さ、明るさを同時に調整する「3次元デジタルカラーマネージメント」、2種類の輪郭補正回路により鮮鋭感のある映像を実現する「アドバンスドダイナミックエンハンサ」などで構成され、「フルHDダイナミック・ブラックパネル」のポテンシャルを最大限引き出す。さらに1080/24p入力、36ビット x.v.Colorの入力にも対応している。

42V型以上の大画面に限られていることもあり、現在、薄型テレビの世界でプラズマ方式は、液晶方式に比較して選べる機種が少ないのだが、P50-XP035は、画質の優秀さ、機能の充実、総合的なバランスで最高の製品と断言していい。しっとりとなめらかな映像と艶があって落ち着いた色彩表現というプラズマ方式の利点を知るならば、現代の大画面の中で、何をおいても見る価値がある。

■特有のパステル調の背景を幻想的に描き出す「P50-XP035」

P50-XP035が『崖の上のポニョ』を見るために現在得られる最高のテレビである理由の一つに、ジブリ作品の背景美術をずっと手掛けている井上直久氏の色彩が非常に的確に表現されることがある。井上直久と聞いてピンと来なくても、『耳を澄ませば』以来背景にジブリ作品に欠かさず登場する、虹色のパステル調の背景を描いている方といえばお分かりだろう。

私は井上氏と一緒に氏の原画を拝見したことがあるが、単純なパステル調でなく中間色のレンジが非常に広く、柔らかな艶がありリッチで幻想的なのである。液晶方式の場合、バックライト制御が進歩していても、この柔らかい艶がうまく表現できず、乾いたパサついた発色になりやすい。P50-XP035は、宮崎監督の海のイメージ、井上直久の描く異世界に連れていく稀有なテレビなのである。

本機の特徴をさらに挙げるならば、P50-XR02に比較して解像感、精細感が進歩し、プラズマ方式らしい柔の表現に鮮鋭感が加わったことが上げられる。プラズマ方式の場合、セルが隔壁構造を持つため、画素面積に起因する理由から液晶方式に比較して精細感で譲るというのが常識だったが、P50-XP035はPDPの進化で鮮鋭感、精細感を味わえる。

具体的には、14分30秒、28分10秒前後の立体感は、他のテレビで見られないものだ。また56分46秒前後のコントラストも見事である。

大橋伸太郎 プロフィール
1956 年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて、美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。ホームシアターのオーソリティとして講演多数。2006年に評論家に転身。

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