記念モデル「AT-MC2022」との比較試聴も

オーディオテクニカ、ダイヤモンドカンチレバーMCカートリッジ「AT-MCD1」。約187万円

公開日 2026/06/04 17:00 編集部:太田良司
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

オーディオテクニカは、スタイラスチップ一体型ダイヤモンドカンチレバーを採用したMCカートリッジ「AT-MCD1」を6月12日(金)に発売する。価格はオープンだが、187万円前後(以降、価格表記はすべて税込)での実売が予想される。

万一の事故に備えた、カンチレバー取替の修理サービスも112万2000円前後で展開。また、性能検査サービスも2万2000円で実施する。

 「AT-MCD1」

同社によるスタイラスチップ一体型ダイヤモンドカンチレバーを採用したMCカートリッジとしては、2022年に発売した創業60周年記念モデル「AT-MC2022」があるが、こちらは当時の情報解禁と同時に完売。世界の愛好家から、再販を希望する声があり、限定モデルAT-MC2022を上回る製品として今回の「AT-MCD1」を企画・開発した背景があるという。

前モデルから引き続き、AT-MCD1もスタイラスチップまで一体となった0.22mm角ダイヤモンド製カンチレバーを搭載。境界面で生じる歪みを継ぎ目の無いワンピース構造によって抑制する設計は継承しながら、先端部の形状を35度から50度のカットにして軽量化に成功。剛性を保ちながら、高域の共振ピークを抑制して、よりしなやかな高域表現が可能となった。

先端を削る高度な軽量化テクニックは、ダイヤモンドの高い剛性があるからこそ実現できたという。ボロンなどの素材では強度の問題からこれほど微細に削ることは難しいとのこと。

使用されているダイヤモンドはCVD製法によって生成される“Lab-Grown-Diamond”(実験室生まれのダイヤモンド)を採用。天然物と同等の優れた均質性を誇り、理想的な特性を発揮するだけでなく、製造時の環境負荷を抑えられるメリットもある。

AT-MCD1の拡大模型。針を35度から50度のカットにして軽量化した

また、針には新開発のシバタ針を採用。従来モデルはR2.7 × r0.26milという形状だったが、R2.7×0.08milという非常に細い先端曲率半径になった。

シバタ針は一般的に、中低域の厚みやパンチ力を重視する傾向にあるが、同社新開発のシバタ針は豊かな厚みを維持しつつ、広大な情報量と立体的な広がりを目指した。レコードの細やかな音溝の動きへ忠実に追従できるようになり、これまで埋もれていた繊細な情報を克明にピックアップ・臨場感のある再生音をもたらすとしている。

そのほか、手が滑って落とした際の破損を防ぐため、ボディにはリブが設けられた。カンチレバーが折れる前にリブが接触するように配慮されている。

新開発のシバタ針を採用

ハウジングには、最先端の5軸切削加工機によって複雑な形状に削り出されたチタニウムを採用。肉厚を最小限に抑えることで剛性を高めつつ、カートリッジの軽量化を図っている。

ベース部にはアルミニウム、アンダーカバーには樹脂とゴムの合いの子のようなダンピング性能を持つエラストマーを配置。すべてをチタニウムにすると音が枯れすぎ、アルミだけにすると固有の音が乗ってしまうという。複数の異素材を組み合わせる設計思想により、特定の共振が強く出るのを防いでいる。

背面の発電部には、磁束密度を高めたハイクラスMCカートリッジ専用の磁気回路を搭載。コイルインピーダンスを変えずに高い出力電圧を誇り、豊かな実在感を再現する。コイルの素材には、信号の乱れを抑えてピュアな伝送を行うPCOCCを採用した。ターミナルピンには、同社従来品の約30倍となる分厚い金メッキを施して接触抵抗を低減する。

模型背面。ターミナルピンに約30倍となる分厚い金メッキを施した

レコード面とのクリアランスは、ゴムダンパーのコンプライアンスを考慮した0.1mm以下の精密設計。荷重がかかった際の破損パターンまでシビアに検証されており、安心して使用できるよう配慮している。

またトーンアームへの取り付け穴はネジ切り仕様に変更。これによって世界のHi-Fiオーディオ市場で多く採用されているインテグレーテッドアームへの装着に対応した。

製品には、天然無垢のチェリー材を使用したカートリッジ保管ケースが付属。梱包用として木材シェルが付くほか、手持ちのヘッドシェルを装着したままの収納も可能できる。対応するヘッドシェルは、「AT-LH11H」や「AT-LH13H」、「AT-LT10」などとなっている。パッケージもほぼすべてを紙素材で構成し、廃棄やリサイクル時の環境負荷を低減した。

カートリッジをつけたまま収納できる

実際に内覧会で試聴

メディア向けに開催された発表会では、テクニクスのターンテーブル「SL-1000R」にパラダイムのスピーカー「PERSONA 7F」の組み合わせで、新モデルAT-MCD1と記念モデルAP-MC2022の比較試聴会が実施された。

発表会の試聴構成

試聴では、荒井由美『ひこうき雲』や、米LONDONレーベルのロドリーゴ『アランフェス協奏曲』やファリャの『スペインの庭の夜』が収録されたLPなどで比較が行われた。

試聴にはオーディオ評論家が持ち込んだ、情家みえ『BONHEUR』、ジェームズ・ホーナー『ニューヨーク東8番街の奇跡』のLPも再生された

歌声は生々しく、定位が定まり解像感も高いのが印象的だったが、中音域や低音域の盛り上がりに関して、勢いがAT-MC2022のほうがあったように感じた。

この点を担当者に聞いてみたところ、「カートリッジを軽くした影響でなめらかな表現が得意になっている。力強い感じとかパワーは記念モデルのAT-MC2022のほうがある。あくまで記念モデルの上位としてではなく、AT-MCD1を新しいモデルとして迎えてほしい」と、記念モデルAT-MC2022の優位性も語られた。

試聴機材
・テクニクス:ターンテーブル「SL-1000R
・アキュフェーズ:プリアンプ「C-2450
・アキュフェーズ:パワーアンプ「A75
・アキュフェーズ:フォノイコライザー「C-47
・パラダイム:スピーカー「PERSONA 7F
・オーディオテクニカ:MCトランス「AT-SUT1000

試聴レコード
・荒井由美:『ひこうき雲
・ロドリーゴ:『アランフェス協奏曲』/ファリャ:『スペインの庭の夜
・鈴木勲:『BLOW UP
・情家みえ『BONHEUR
・ジェームズ・ホーナー:『ニューヨーク東8番街の奇跡

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク