オーディオテクニカ、11年ぶりフルモデルチェンジのMCカートリッジ「AT33xシリーズ」5モデル
オーディオテクニカは、デュアルムービングコイルを搭載したMCカートリッジ “AT33xシリーズ” 5モデルを、10月31日(金)より発売する。ラインナップおよび税込価格はそれぞれ以下のとおり。
・「AT33xMLB」:126,500円
・「AT33xMLD」:110,000円
・「AT33xEN」:93,500円
・「AT33xMONO/I」:88,000円
・「AT33xMONO/II」:55,000円

1977年発売のヘッドシェル一体型MCカートリッジ「AT34」に端を発する、MCカートリッジ “AT33シリーズ” の新ラインナップ。AT33シリーズはこれまで1モデルずつ個別に開発/発表されることが多かったが、この度2014年以来11年ぶりのフルモデルチェンジとして5つの新モデルを一挙発売する。
ラインナップの内訳は、針先形状とカンチレバーの素材が異なるステレオカートリッジ3モデルと、磁気回路のマグネット/ヨーク素材などが異なるモノラルカートリッジ2モデル。モノラルカートリッジについては、ステレオの磁気回路を流用するのではなく、モノラル再生に最適化した専用磁気回路を搭載している。

開発におけるひとつのテーマが、同じく同社のMCカートリッジである “AT-OC9Xシリーズ” との差別化。両シリーズはMCという方式はもちろん価格帯も近い反面、明確に区別する材料に乏しかったと同社は説明。そこで今回、AT33シリーズをフルモデルチェンジしたAT33xシリーズを開発するに当たり、両シリーズを明確に選び分けられるよう個性付けを意識したのだという。
具体的には、AT-OC9Xシリーズが「情報量の多さ」「空間的な広がり」「フラット傾向の帯域バランス」といった特徴を秘めた “素直で優等生的” なキャラクターだとすれば、AT33xシリーズは「密度の濃い中低域」「ややリラックスした響き」「肉声の暖かみ」を楽しめる、古めの録音作品ともマッチする雰囲気なのだとか。
素材、振動系、取り付けやすさを改良
AT33xシリーズ 5モデル共通の特徴として、ヘッドシェルやトーンアームに接するベース部において、従来の成形樹脂パーツに代わり新開発の亜鉛ダイキャストパーツを採用した。アルミニウムよりも重く衝撃に強い亜鉛のダイキャストを用いることで、音質的にも地に足のついた豊かな中低域再生を実現しているという。
一方、カートリッジ全体が重くなりすぎないよう、亜鉛ダイキャストベースには肉抜きなどの適度な軽量化も実施。質量を約10.5g以下に抑えている。さらに、カートリッジ全体では亜鉛ダイキャスト、アルミニウム、硬質樹脂の計3種類の素材を使用。これは特定の共振周波数に偏ることなく、バランスの良い響きを持たせる狙いがあるとしている。
また別の共通点として、振動系の支点となるサスペンションワイヤーにΦ0.08mmのピアノ線を採用し、加えて振動系を支えるダンパーも新設計の形状に。Φ0.07mmのステンレス線をサスペンションワイヤーに用いるAT-OC9Xに比べてコンプライアンス(振動系の変異のしやすさ)がやや低くなり、これにともなって音像の骨格がよりハッキリとし、中低域はより厚みを増しているという。
なお、コンプライアンスの低いカートリッジは実効質量の大きいトーンアーム、コンプライアンスの高いカートリッジは実効質量の小さいトーンアームと相性が良いとされ、この点もAT-OC9X/AT33xシリーズの選び分けのポイントになるとのことだ。
さらに全モデルのもう一つの共通点として、カートリッジの取り付け穴をねじ切り仕様に変更。従来の貫通穴タイプの場合、カートリッジ取り付け時にトーンアームとナットを指で抑えながらネジを締めねばならず、作業が難しくなるばかりかトーンアームから垂れるリードワイヤーを切ってしまうリスクすらあった。今回、取り付け穴をねじ切り仕様とすることで取り付けが容易になり、特にアーム先端に直接カートリッジを取り付ける「インテグレーテッド型トーンアーム」との親和性が増したそうだ。
ステレオ3モデルは針先/カンチレバーに差異。音源との相性もそれぞれ違う
ステレオカートリッジ3モデルについてはそれぞれ、最上位モデル「MLB」が無垢のマイクロリニア(ML)針と無垢ボロン(B)カンチレバーを採用。3モデル中もっとも現代的でハイスペックな印象の音を再生するといい、録音やレコード製造技術の円熟した1970年代後半以降のアナログ盤や、音数の多いクラシック音楽との相性が良いという。

中位モデル「MLD」は、無垢ML針にジュラルミン(D)カンチレバーを採用。解像度に優れるML針と、粘りのあるアルミ合金であるジュラルミン製カンチレバーを組み合わせた結果、楽器や肉声の温度感の表現に長けるカートリッジに仕上がった。少し録音が古めのロックやジャズに良く合うとしている。

エントリークラスの「EN」は、無垢楕円(EN)針とジュラルミンカンチレバーを搭載。MCカートリッジとして十分な基本性能は備えつつ、リラックスして音楽を楽しめる “懐の深い” 再生が醍醐味だとしている。

3モデルとも、カンチレバーは先端にかけて徐々に細くなるテーパード形状。コイルの巻線には単結晶状高純度無酸素銅のPCOCCを採用する。PCOCCはすでに製造を終了して久しい導体だが、同社ではコイル用として充分な在庫を保有しているということだ。
モノラル2モデルは磁気回路とサスペンションワイヤーに違い
モノラルカートリッジの「MONO/I」「MONO/II」は、上述したとおりモノラル専用設計の磁気回路を搭載。2chぶんの音声情報が刻まれたステレオ盤の音溝をトレースするため針先が上下左右に振れるステレオカートリッジに対し、モノラルカートリッジは針先が水平方向のみに振動する。これに合わせて磁気回路の形状を最適化し、電気的に独立した2対のコイルを備えることで、発電効率と音質を向上させている。
同社ではモノラル盤の再生にモノラル専用カートリッジを用いることで、音像定位がより明瞭に、特に低域再生が強固になると説明。加えて再生中のサーフェイスノイズ/スクラッチノイズが低減されるという利点もある。
2モデルの違いとしては、MONO/Iがステレオモデルと同じネオジウムマグネットとパーメンジュールヨークの磁気回路を採用。音の過渡特性が良好で、ハイスピードかつ解像度の高い音質が楽しめるとしている。

一方のMONO/IIは、サマリウムコバルトマグネットと純鉄ヨークの磁気回路を採用し、さらにカンチレバーのサスペンションワイヤーに太径の素材を使用した。この違いにより、MONO/Iよりも立ち上がりがゆっくりとした大らかな音質となっっているとのことで、50 - 60年代のジャズを再生する際や、リラックスして音楽に浸りたいシーンに適しているそうだ。

針先形状およびカンチレバーは共通で、無垢丸針とジュラルミンパイプカンチレバーを搭載する。
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