【インタビュー】エソテリックブランド、ネットワークで切り開くオーディオの新たな楽しみ
オーディオ銘機賞2026 受賞インタビュー
ティアック
国内オーディオマーケットに展開される数々の製品の中で、卓越した性能、革新的な内容を持ち、かつオーディオマインドに溢れる “真の銘機” を選定するアワード「オーディオ銘機賞2026」において、エソテリックブランドのネットワークプレーヤーGrandioso N1が金賞を、ネットワークトランスポートGrandioso N1Tがハイエンド大賞を受賞した。満を持しての投入となったハイエンドのネットワーク製品から広がる新たな可能性について、プレミアムオーディオ事業部長の加藤徹也氏が語る。
ティアック株式会社執行役員 プレミアムオーディオ事業部長
加藤徹也氏
Grandiosoのネットワークプレーヤー、ついに誕生のフラグシップ
ーー オーディオ銘機賞2026におきまして、ネットワーク関連を始めたくさんの製品が受賞を果たされました。誠におめでとうございます。
加藤 大変栄誉ある賞を頂戴し、感謝いたしております。誠にありがとうございます。Grandiosoのネットワークプレーヤーについては、何年も前からずっと、いつ出るのかとお客様に言われ続けていました。エソテリックでは2016年にN-05を皮切りにネットワーク製品を発売していますが、我々としてはオーディオ事業に寄与する割合が高いディスクプレーヤーとバランスを取りながら徐々に展開していく計画でした。それから10年を経て今年、いよいよフラグシップとしてGrandiosoのネットワークモデルを登場させ、このたび高くご評価いただいたことでご期待にお応えできた思いがします。
10年前は、ネットワークをとりまく環境が今とは全く違いました。ネットワークオーディオでロスレスの音源を再生するには、ファイルをNASに入れて再生するか、CDのまま再生するかの手段しかありませんでしたが、ここにきて日本でも高品位ストリーミングサービスのQobuzが始まり、ハイレゾの高音質音源を定額で聴き放題の新しい価値が享受できるようになりました。今聴きたいものがその場で聴ける利便性も素晴らしいですが、アーティストの新たな演奏や、未知のアーティストを知るなどの発見も提供してくれます。昨今はネットワーク再生の効果的なアクセサリー製品もたくさん出てきましたし、いろいろな要素が追い風になっていますね。
ーー 金賞を受賞したネットワークプレーヤーGrandioso N1と、ハイエンド大賞を受賞したネットワークトランスポートGrandioso N1Tについて、技術的トピックスを教えていただけますか。
加藤 ネットワークエンジンは第4世代となる「ESOTERIC Network Engine G4」を搭載しています。それまでネットワークオーディオでの伝送は、一般家庭で使うようなLANケーブルを想定していましたが、今回はSFPによる光ネットワーク接続というかなりマニアックな方式を採用しました。ディスクリートDACについても、今回第2世代として進化させ、従来モデルと比較して音場表現や再生クオリティの面で大きな向上を実現しています。
ネットワーク製品について、私としてはディスクプレーヤーの感覚とは異なる世界観や価値観を実現したいと思っていました。これまではオーディオファンの皆様に向けて、我々が解釈するオーディオの音を追求してきましたが、もっと素直にコンテンツ表現を重視する形で。Qobuzにもライブのコンテンツが数多くありますので、多くの音楽ファンに、2チャンネルながらイマーシブのようなライブ感覚を体感していただけると思っています。
ーー 今回ネットオーディオ大賞を受賞されたTEACブランドのネットワークトランスポートNT-507Tは、Grandioso N1Tと技術的な関連性はあるのでしょうか。
加藤 これらのネットワークエンジンは、「ESOTERIC Network Engine G4」「TEAC Network Engine G4」と名付けられていますが、同じ考え方で作られています。エソテリックとティアックで、バックヤードでは技術要素を共通で開発しているのです。ただ、よりカジュアルな使い方をご提案するティアックブランドの場合はWi-Fi接続の機能を追加し、エソテリックの場合は大型の電源回路を搭載するなどオーディオ機器としてのクオリティに違いをもたせています。バックヤードに共通要素はありますが、それぞれのブランドがそれぞれのお客様の求めに応えて、最高のものを作っているということです。
ストリーミングサービスで加速する、ネットワークオーディオの楽しみ
ーー これら受賞製品について、お客様や販売店様のご反応はいかがですか。
加藤 オーディオの試聴会での音源は、これまでディスクが主流で、オーディオファンの方々にとってもお馴染みの楽曲を再生する場面が多かったと思います。けれどもストリーミングによって、お客様が聴きたい曲をその場で検索して再生できるようになり、お客様には機器の表現力をより一層実感していただけるかと思います。またストリーミングによって、これまで敬遠されていた販売店の方々も本腰を入れてネットワークオーディオを展開されるようになってきました。我々の製品もおおいに歓迎してくださっています。
そして、我々自身がさまざまな発見をしています。例えばネットワークに、オーディオ用のスイッチイングハブを挟むだけでも驚くほど音が変わります。ある程度機器のクオリティが確立された上で、周辺機器やアクセサリーなどを変えていくと明確な違いが出て、ネットワークオーディオは楽しめる要素がたくさんあり、開発の余地もまだまだあると再確認しています。
一方で、お客様が聴く環境によっても聴こえ方が左右されるとも言えます。販売店様にとっては、ある程度の水準のネットワーク機器を販売されるとともに、付随するアクセサリーや環境を整えるアイテムも訴求できるチャンスが広がるのではないでしょうか。
ーー クリプシュのスピーカーJubileeが特別賞を受賞されました。こちらはどのような展開をお考えですか。
加藤 クリプシュについて我々はディストリビューターの立場ですが、ヘリテージシリーズを中心に、リファレンスプレミアシリーズ、リファレンスシリーズを展開しております。ブランドにはたくさんの商品がありますが、我々が得意とする分野のモデルを選択し、日本でのブランドイメージをさらに高めていく方針です。メイドインUSAの非常にパフォーマンスが高いスピーカー群ですから、しっかりと訴求していきたいと思います。
趣味の世界を楽しむアイテムを、より深く追求していく
ーー 昨今のオーディオ市場の動向はいかがでしょうか。
加藤 1年前からはあまり変わらず、世界の中で日本が経済的に取り残されている印象は継続し、材料費や輸送費、人件費も高騰しています。そしてエソテリックのお客様の中には株価の動きに影響を受けられる場合も少なくなく、昨今の情勢では趣味の商品は買い控えられる傾向になっていますね。海外は日本ほど急激な変化はないですが、やはり物価は上がり、世界情勢も不透明で、買い控えの動きになる場合もあるようです。
その結果オーディオ製品の販売数が減少してしまうとなると、価格に見合った価値をしっかりとご提供できなければ、我々にとってますます困難な状況になると思っています。安ければいいと思われるようなものではなく、吟味して買ってよかったと言っていただけるものをご提供しなくては。そして特に日本では、そういったオーディオの価値の訴求をしっかりとしていただけるご販売店様のお力が、ますます不可欠になっています。
ーー 2026年以降については、どのような方向性をお考えでしょうか。
加藤 エソテリックでネットワークのトップモデルが出せましたので、その技術的要素を下の価格帯の製品に波及させる取り組みがあります。そしてディスクリートDACが新世代になり、今度はそれをディスクプレーヤーに活かしていくことも考えています。マーケットで高価格帯と低価格帯の2極化がどんどん進んでいる状況は、今後も大きな変化はないと思いますので、エソテリックとしては今まで通りディスクとネットワークとアナログのプレーヤー、そしてアンプをそれぞれ継続的に進化させ、最高のオーディオ体験をしていただける魅力的な商品を作っていき、既存のエソテリックのファンの方に買い替えていただける価値訴求を行っていく活動が中心となりますね。
ティアックに関しては、20万円から30万円ぐらいの価格帯でReference500というシリーズを展開していますが、ただ利便性を追求したものではなく、エソテリックと同様のベクトルにあるこだわりのセパレートコンポです。かつデスクトップに置けるサイズで、ヘッドホンアンプの間口もあり、クロックがあり、フルアナログのプリとパワーアンプがあり、今回さらにDACが入っていないセパレートのネットワークシステムも加わりました。
このように製品がかなりマニアックに進化しているので、中級の価格といえどもよりニッチな方向で、オーディオマニアの方に届く訴求が必要です。試聴会も超マニアックに、こだわる方の期待にお応えする方向で展開していますので、魅力のある中級、中上級機種をご提案できると自負しています。
オーディオは本当に楽しい趣味ですから、あらためてその素晴らしさを皆さんに味わっていただきたいのです。我々はぜひ、そのためのお手伝いして参りたいと思います。
ーー これからのご活動も楽しみですね。ありがとうございました。
