【インタビュー】JBLが「BAR 1300MK2」など新製品一挙6モデルでサウンドバー市場を席捲。「体験による勝利を確信した1年」
VGP2026受賞インタビュー ハーマンインターナショナル
テレビの超大型化も追い風に注目度がさらに高まるサウンドバーにおいて、圧倒的な存在感を示すJBL。2025年にはVGP2026「テレビシアター大賞」を獲得した「BAR 1300MK2」はじめ新製品6モデルを一挙に投入するとともに、その価値啓発にもっとも大切と位置付ける “体験” をキーワードにした取り組みを精力的に展開した。
強さの秘密、そして、リーディングブランドとして次なるステージをどう想い描くのか。ハーマンインターナショナル 濱田直樹氏に話を聞く。

ハーマンインターナショナル株式会社
ライフスタイル・コンシューマーオーディオ部門
マーケティング部
シニア・マネージャー
濱田直樹氏
プロフィール/オーディオメーカーで商品企画・マーケティングに従事、2019年4月よりハーマンインターナショナル株式会社へ入社し、ホームオーディオ製品のプロダクトマーケティングを担当、2021年 プロダクトマーケティング部門長を経て、2024年よりマーケティング部門統括マネージャーに就任。趣味は映画鑑賞とボルダリング。
綿密に描かれた導入ストーリー。なにより注力したのは「体験」
―― JBL「BAR 1300MK2」がVGP2026「テレビシアター大賞」を受賞されました。おめでとうございます。家電量販店でもJBLのサウンドバーを目にする機会が大変多い印象を受けます。市場を牽引するブランドの目から、今のサウンドバー市場をどのように見ていらっしゃいますか。
濱田 コロナ禍での巣ごもり需要が一巡した後は、若干右肩下がりで低迷していたサウンドバー市場ですが、2025年からプラスに転じています。いろいろな要因が考えられますが、特に注目したいのは、映画の興行成績が非常に好調なこと、そして、動画のサブスクサービスが普及、定着したことです。
今、日本の映画市場を牽引しているのは日本のコンテンツで、IMAXやドルビーアトモスで上映される作品が数多く見受けられます。一度観た人が「もっと大きなスクリーンで」「もっと良い音で」と再び足を運ぶケースも少なくないようです。一過性の消費ではなく、作品としてきちんと楽しむ文化が醸成されつつあり、そうした満足感を家で観る場合にも高められるアイテムとして、サウンドバーに対する注目度も高まっています。
そのようななかJBLでは、他社でもあまり例を見ないと思われますが、2025年にサウンドバーの新製品6モデルを一挙に発売しました。どれも主役を張れる実力を備えたモデルばかりで、そのなかには大変高い評価をいただいた「BAR 1000」を凌駕する新フラグシップ「BAR 1300MK2」という大きなチャレンジもあり、まさに “攻めの1年” となりました。
―― 「BAR 1300MK2」は「BAR 1000」同様に、2025年10月の一般発売に先立ち6月からクラウドファンディングを実施されました。「BAR 1000」の支援金額を25%も上回る大きな期待を集めるなか、市場導入に際しては用意周到な取り組みを展開されました。
濱田 なにより注力したのは「体験」です。「OTOTEN2025」(2025年6月21日・22日開催)では、「JBLプレミアムホームシアタールーム」を設け、1回6名限定・完全着席・完全入れ替え制で約10分間、「BAR 1300MK2」による圧巻のシネマ体験をお届けしました。非常に長い行列ができて、合計で約470名に体感いただきました。
7月26日には、国内最大級の映画・ドラマ・アニメのレビューアプリ「Filmarks(フィルマークス)」のユーザー10名を、一般の人は普段は立ち入ることができないJBLオーディオルームを「プレミアムホームシアター」仕様にして招待し、ブルーレイで映画作品を丸々1本鑑賞する「究極のおうちシアター」特別試写会を実施しました。
8月30日には住宅展示場「ハウジングプラザ浦和展示場」にあるダイワハウスの防音室「音の自由区」において、楽器演奏や映画鑑賞も気兼ねなく楽しめる防音室内のリビングルームで「BAR 1300MK2」の実力を体感できる特別体験会を実施しました。こちらは全5回・各回2組限定で、これからの住まいを検討されている方に、リビングルームに大きなテレビだけでなく、サウンドバーがあるとこんなに楽しくなるということを体験いただきました。
販売店さんの売り場での体験はもちろん大切ですが、その機会を増やす前段階の人海戦術と位置付けています。丁寧に時間をかけ、忘れられない体験をお届けすることにより、「JBLのBAR 1300MK2って凄いぞ」と発信してくれる人を増やすことが狙いとなります。
―― 販売店に対してのアプローチもいつもと違っていたのですか。
濱田 販売店の皆様にも売り場ではなく、きちんとセッティングした部屋を用意して体験いただきました。ご自宅に持ち帰って使っていただいたケースもあります。自宅と売り場ではやはり大きく環境が異なりますから、自宅で実際に使用してみた経験に基づくお客様への説明は、大変説得力があると思います。
メディア各社の皆様、評論家の方々、それから映画好きな著名人の方にも体験いただきました。これら体験会では常に85型のテレビを組み合わせています。実は、大ヒットした「BAR 1000」では65型のテレビと組み合わせていたのですが、65型のテレビの映像では、「BAR 1300MK2」の音に負けてしまうんですね。
実際に体験して味わったリアルな感動を発信していただく、メディアの方に熱量を込めて記事にしていただく、ご販売店でお客様に対してきちんと魅力を伝えていただく。そのためには事前に一番いい環境で体験していただき、ちゃんと感動していただくことが不可欠になると考えています。
私自身が「BAR 1300MK2」が好きだし、映画が好きだし、映画を観るなら1人でも多くの人にこのモデルを使ってほしい。そんなシンプルな思いがあります。ひとつひとつのイベントは本当に大変でしたが、どれもとても楽しくて、体験してくれた人が感動してくれたことが何より原動力となりました。体験による勝利を確信した1年です。
Bluetoothスピーカーの提案はオーディオへと誘う第一歩
―― JBLのサウンドバーでは、「BAR 1300MK2」「BAR 1000MK2」「BAR 800MK2」の3モデルに採用する着脱式ワイヤレスピーカーがひとつの特徴になっています。
濱田 さきほどは音の素晴らしさについての話でしたが、一方、着脱式スピーカーの一番のポイントは使わない時にはリビングがすっきりすること。生活の中心となるリビングには、美しく整頓された心地よさが求められているからです。
従来のワイヤレスリアスピーカーは、ワイヤレスを謳っていながらも、実は電源ケーブルが必要でまったく解決策になっていませんでした。その点、JBLの着脱式ワイヤレススピーカーは必要な時だけ取り外せばいい。電源ケーブルはもちろん必要ありません。
しかも、設置も片づけもわずか数秒で済むことから、自ずと使用機会が増えていきます。映画に限らず、例えば「スポーツ番組で体験したら迫力が物凄い」「スポーツの番組にこんな音が入っていたなんて気づかなかった」といった声もよくお聞きします。お客様それぞれにいろいろな楽しみ方を見つけていただいています。
―― 「BAR 1300MK2」ではさらに、リアスピーカーが独立したBluetoothスピーカーとしても使用できるようになりました。ここにはどのような狙いがありますか。
濱田 イヤホン・ヘッドホンでエンタメを楽しむスタイルが急速に浸透するなか、ご家庭では、空気を震わせるスピーカーで聴いてもらう機会をもっと増やしたい。それを可能とする柔軟性・拡張性を備えています。160Wのアンプを搭載した単品としても非常にクオリティの高いもので、気軽に取り外して別の部屋で音楽を楽しむこともできます。
―― オーディオファンは年々減少しており、特に若い世代の掘り起こしが長年の課題として指摘されています。
濱田 若い世代へのアプローチという文脈で言うと、サウンドバーは物凄く高いポテンシャルを秘めています。先ほどの映画の盛り上がりを牽引しているのはZ世代です。動画のサブスクサービスとともに、映画の情報を提供するアプリが普及したことで、投稿されたレビューを参考にして、観たい映画を次々に “掘る” ことができるようになりました。若い人たちにとって映画館での鑑賞が価値の高い体験として普及し、映画を趣味とするトレンドが見受けられます。
レビューを参考にして、映画館の大きな画面で観なおしてみたり、IMAXのいい音で観なおしてみたりする動きが若い人の間で活発になっており、BARシリーズのなかでも「BAR 300MK2」は特にそうした若い人から人気を集めています。
また、BARシリーズは全機種にWi-Fiを内蔵しています。映画を皮切りに、音楽もイヤホン・ヘッドホンだけでなく、自宅ではサウンドバーで楽しもうという提案に今、力を入れています。音楽も映画もサブスクを使い倒せる、若い人が求める “コスパ・タイパ” にもマッチした提案となります。若い人が映画を楽しむことは、オーディオをアピールする上でも非常に明るい材料にもなり、手応えを感じています。
―― 今、家電量販店に行くとスマートプロジェクターの売り場が急速に広がり、若い人を中心に需要が高まっていますが、共通した背景が考えられそうですね。
濱田 サウンドバーの前にまずは大画面ですから、テレビを持たない方が増えるなか、プロジェクターとサウンドバーの組み合わせは見逃せません。若い人が売り場に足を運んでいただける取り組みに力を入れ、体験する機会をもっと増やしていきたいですね。
ホームエンタメには課題もあるが、未来がある
―― 日本は住宅の狭さや製品クオリティへの強いこだわりから特殊で難しい市場だと言われますが、JBLのサウンドバーでは日本市場向けに工夫されている点はありますか。
濱田 「BAR 1300MK2」はJBLサウンドバーでは初めて「IMAX Enhanced」認証を取得していますが、実は日本市場向けモデル限定となります。日本の映画ファンは世界でもかなり高い頻度でIMAXの劇場に足を運んでいます。そこで、ご家庭でも出来得る限り近い体験を実現できるIMAX用チューニングを要望したところ、普段日本からの要求はあまり通らないのですが、「BAR 1000」が大ヒットしたこともあって叶えてもらうことができました。
サウンドバーは “ソリューションオーディオ”、設置の問題を解決することが一義的に重要であると考えています。最高峰の音を求めればきりがないですが、設置できなければ意味がありません。これは日本のモデルに限定したことではありませんが、最上級の音質よりも、テレビの前に美しく置けることを常に強く意識しており、「BAR 300MK2」ではテレビ画面に被らない高さ約5cmを実現しています。
―― 設置や価格といった導入する上での大きな制約のなか、「BAR 300MK2」やVGP2026でコスパ大賞を受賞した「SB580 ALL-IN-ONE」といった選択肢も用意されています。
濱田 6モデルのなかで最後に投入したのが「SB580 ALL-IN-ONE」になります。モデル名に「SB」を冠し、BARシリーズとは異なる位置づけです。BARシリーズでは壁反射を利用しますが、狭い空間でどうしても壁反射がうまく機能しない環境もあります。また、比較的狭めの住宅で、バーチャルサラウンドを利用したサブウーファー内蔵モデルの方がよい体験を提供できるケースもあります。これも日本の住宅環境を考えたひとつのソリューションの提案となります。
Wi-Fiは非搭載、機能も割り切っていますが、3万円を切る手頃な価格でファーストステップとして幅広く人気を集めています。
―― エンタメを楽しむリビングで不動の地位を築きつつあるサウンドバーですが、トップブランドのJBLとして、今後、そこにどのような世界を描かれていくのでしょう。
濱田 家中で音楽、映画を楽しめるホームエンターテイメントにはまだまだ課題があり、そして未来があります。日本はサブスクの音楽が定着するのがすごく遅かったため、ハイレゾ音楽をパソコンで聴くことがカルチャーとなり、一時期スピーカーが家の中から姿を消してしまい、オーディオ衰退にも拍車をかけました。
しかし、サウンドバーがその場所を取り戻し、さらに、リビングだけではなく家中の部屋へ広げていくひとつのトリガーになると考えているのが、独立してBluetoothスピーカーにもなる「BAR 1300MK2」のリアスピーカーです。将来的には、Wi-Fiに対応するサウンドバーにもっといろいろなものが繋がり、家中の音の環境を発展させられるのではないかとイメージしています。これが近い将来やるべきことのひとつ。
また、音の楽しみ方が変わっていくなか、違う次元からのもうひとつの音を楽しむ軸を考えています。それは、PA機器やスピーカーのパーティーボックスなど、オーディオとミュージックの垣根がボーダレス化していることを捉えた提案です。
今までの受け身だった聴く音楽に対して、ギターやマイクを入力して、能動的に音楽を作曲したり、楽器を演奏したりすることで、オーディオの世界はもっと広がっていくのではないかと考えています。
サウンドバーで新しい世界が切り開かれたように、まだ気づかれていない世界を提案することは、我々メーカーに課せられた本来の大事な役割のひとつ。売り場もそうした提案があればもっと楽しくなるし、活気も生まれてくるはずです。そうした未来を見せるために、積極的にチャレンジするブランドでありたいと思います。

―― 最後にひとつ、デノン、マランツなどを擁するSound Unitedグループを昨年10月に買収されました。ブランドの方向性など気にされている方も少なくありません。
濱田 それぞれに非常に影響力の大きいブランドですから、例えば、棲み分けを進めたことにより、市場そのものが衰退してしまうといった可能性も否定できません。ですから、お互いのことは考えることなく、それぞれが思い描くことを行っていく完全な独立性を維持した運営が、当初から指針として示されています。
例えばサウンドバーではデノンのモデルが非常に好調ですが、お互いに負けるものかと切磋琢磨することで市場をもっと盛り上げ、お客様へより良い選択肢をお届けすることができます。昨年は我々が一挙に6モデルを出しましたので、今年はぜひデノンさんから「絶対に負けないぞ」という商品が出されてくることを切に願っています(笑)
―― ホームエンタメの一層の盛り上がりへ、サウンドバーのさらなる活躍が期待されますね。
濱田 「BAR 1300MK2」がVGP2026「テレビシアター大賞」を受賞したことは、私のこれまでのサウンドバーへの取り組みに対するひとつの集大成で、大変名誉に感じています。5年間にわたるサウンドバーの普及、そしてプレミアムなサウンドバーという存在を確立できてことを認めていただいた証だと思います。
この成果に満足することなく、映画をホームシアターで楽しまれるご家庭をもっともっと増やしていきたい。特に若い世代の人にも楽しんでいただけるよう、ギアを緩めることなく、“体験” をできる場所や機会を増やしていきますので、どうぞご期待ください。
