オーディオテクニカ「AT33xシリーズ」レビュー! ファン待望の新MCカートリッジ3機種を比較試聴

オーディオテクニカから、MCカートリッジ「AT33xシリーズ」が登場。定番とも言える人気を集める同社のカートリッジだが、久しぶりに登場した、ファン待望の最新モデルの実力はいかに? ステレオモデル「AT33xMLB」「AT33xMLD」「AT33xEN」の3機種を、評論家の石田善之氏がレビューする。
人気カートリッジ「AT33」に待望の新モデル誕生!
当シリーズの母体となった初号機は1981年に「AT33E」として登場している。その当時はアナログ絶頂期で、アンプもトランジスタやFETの性能向上に伴ってMMからMCへの対応が高まり、カートリッジの世界も変化が生じていた。
オーディオテクニカはVM(MM)で世界を風靡したが、MCに対しても独自のデュアルムービングコイル型を開発し、1977年にはシェル一体型の「AT34」が登場し、その翌年には一般的なシェルにそのまま対応できる単体の「AT32」が発売されている。
正方形に近い広い面積でヘッドシェルとの密着性を高めたこのスタイルを築き上げている。そしてこのスタイルの完成度を高めた形で「AT33E」、まさにこのシリーズの起点となったモデルがスタートしているのである。
ますます人気も高まり、製品数も多くなるMCカートリッジの世界だが、カンチレバーに対してダイヤモンドの導入なども含め、近年では100万円を超えるカートリッジも見受けられる。
その中にあってこの「AT33xシリーズ」は性能的にも妥協がなく、十分な能力でありながらMCの良さ、魅力を現実のものとしたいユーザーに向けた製品とみることができよう。

オーディオテクニカには既に同様なコンセプトで「AT-OC9Xシリーズ」が存在する。比較的近い価格帯に2つのシリーズを持つということは、それぞれにそれなりの個性を持たせる必然性もあろう。
メーカーは、音質面からは「情報量が多く空間的な広がりの表現に長け、帯域バランス的にもフラットで素直で優等生的な音質」が得られるAT-OC9Xシリーズに対し、AT33xシリーズは基本的な性能が優れていることは前提とし「中低域を密度濃く表現し、少々リラックスした雰囲気で響き、肉声に温かみを持たせて鳴らす」という方向で音質開発を進めた、と説明している。
エンジニアに尋ねてみると具体的には振動系を支えるダンパーや振動系の支点となるサスペンション・ワイアをAT-OC9Xシリーズではステンレスだったのをピアノ線に変更するなどしてコンプライアンスをやや低めの数値に設定しているとのことであった。
本シリーズの音質に対しても、大きく向上させたと思えるのはベース、つまり振動系を支えヘッドシェルと密着する部分に亜鉛ダイキャストを導入し、これまでの樹脂成形とは異なり、より強固にヨークやカバーなどこの亜鉛ダイキャストとアルミニウム、硬質樹脂の3つの素材を組み合わせ、それぞれの共振を抑え、音質に影響を及ぼさない構造が取られている。
また逆V型に配置されたPCOCCの発電コイルは、前作までは10Ωだったが、今回は12Ωと巻線を多くし、わずかながら出力電圧のアップにもつながっている。
ヘッドシェルの取り付けネジもこのところオーディオテクニカの製品では、一体型のアームやシェルに対して上側からビスを貫通させ、ナットを使わず固定ができる。本シリーズでも同様である。
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