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【特別企画】プリメインアンプの実力をCD/アナログ/ヘッドホン再生で多角的に検証

ラックスマン「L-509Z」はワンボディでセパレート並みの回路構成を実現。普遍的なサウンドと絶対的なクオリティは必聴!

公開日 2023/05/08 06:30 生形三郎
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「L-509Z」はプリメインアンプとして“アガリ”の一台



ワンボディのプリメインアンプで、セパレートアンプに匹敵する充実した高音質を手に入れたい。それも、これで「アガリ」とも言えるほどの普遍的なサウンドと絶対的なクオリティが欲しい。そんな願いを叶えてくれるプリメインをお探しの方に是非ともチェックしていただきたいのが、ラックスマン「L-509Z」である。

LUXMAN プリメインアンプ「L-509Z」(990,000円/税込) photo by 田代法生

2002年に「ワンボディセパレート」をキャッチコピーに掲げ登場した「L-509fSE」からスタートし、着実な進化を遂げ誕生したL-509Zの魅力を、今回はCD再生やアナログ再生、そしてヘッドホン再生と、多角的にその実力を検証したのでここにレポートしたい。

ラックスマンが掲げる「ワンボディセパレート」のプリメインアンプは、2002年に発表されたL-509fSEからスタートした。ワンボディセパレートとは、「セパレートアンプと同様に、ディスクリート構成のプリアンプとパワーアンプをひとつの筐体に入れ込む。すなわち音質クオリティはセパレート、機能性はプリメイン」というのが基本的なコンセプトで、1筐体のプリメインアンプの中にセパレート並みの回路構成を実現するべく生み出されたもの。

その後、2006年に「L-509u」、2017年に「L-509X」、そして2022年12月に発売された、今回ご紹介する「L-509Z」と、20年にわたってその性能を磨き上げ進化を遂げてきた。

L-509Zの背面端子。LINE1、2のみ豪奢なカッパーアロイ製RCA端子を搭載。また、アナログ入力はMM/MC双方に対応(フロントで切り替え)。スピーカー端子も2系統用意しており、独立でオンオフが可能。バイワイヤリングとしても利用できる

「LIFES」で劇的に進化、セパレートアンプに匹敵する実力を追求



今回の「Z」化において何と言っても注目したいのが、新開発の増幅帰還回路を搭載したことだろう。先述した歴代の3機種は、同社の従来型増幅帰還回路「ODNF」を採用してきており、搭載するそのバージョンをVer2.0(L-509fSE)、Ver2.2(L-509u)、Ver4(L-509X)と改良進化させてきたが、このL-509Zでは、ODNFが大幅な刷新を遂げた次世代の新増幅帰還エンジンである「LIFES」(Luxman Integrated Feedback Engine System)が採用されている。

独自の増幅機関エンジン「LIFES」。L-509Zで3台目の搭載となる

LIFESは2021年に発売された同社フラグシップ・パワーアンプ「M-10X」にて初搭載されたものだが、その後、プリメインアンプ「L-507Z」に搭載され、今回このL-509Zにも搭載された格好となる。

すでにお聴きになった方はご存知と思うが、このLIFESを搭載するラックスマンアンプのサウンドは、劇的な進化を遂げたといってもよいほどである。そのLIFESも累計3台目の投入、しかも、プリ部もディスクリート構成され、プリ - パワーと一貫して増幅が叶えられたとあって、今回のL-509Zも実に出色の出来となっている。

増幅構成としては、前モデルから「3段ダーリントン4パラレル・プッシュプル構成」を踏襲し、240W×2(4Ω)の出力を実現。電源部は、同社アンプで重用されるEI型のトランスを大容量600VAで採用し、コンデンサーも10,000μF×8本と充実した容量を確保。回路部は、アンプ回路等の要となるオーディオ基板にトップグレードモデルのみに採用するピールコートPCBを使用して、レジストによる誘電効果を排除、高音質を追求している。

さらに、ボリューム回路として新採用された「LECUA-EX」も大きな注目ポイントだ。これは、同社の電子制御アッテネーター「LECUA」に重量感あるロータリーメカを組み合わせた新開発のボリュームで、先に発表された新型フラグシップ・プリアンプ「C-10X」に採用のものとメカ部分はすべて同一となる(異なる部分は、組み合わせる抵抗やその順序とのことだ)。

ボリュームの操作精度、そして音質もさらに磨きあげた「LECUA EX」

LECUAの定義は「アッテネータを電子制御する」ということであったが、LECUA-EXの定義は「電子制御のアッテネータと周辺の機構まで含めたもの」となり、定義の範囲を操作性まで広げたことになる。

LECUA-EXでは、ボリューム位置による物理的な偏差がほとんど起きないロータリーエンコーダーを採用するとともに、ボリューム軸のガタを上下左右全周の範囲で減らすために前フラグシップ・プリアンプ「C-900u」で開発した回転機構を採用している。この辺りは、単なるボリューム操作精度の向上だけでなく、音質にまで大きな影響を及ぼしているのだという。

「LIFESによって音質対策をさらに攻めることが可能に」



なお、このL-509Zは、LIFESを採用する第2弾プリメインアンプとなるが、開発を担当した、同社取締役兼開発部部長の長妻雅一氏によると、「プリメインアンプの静特性はプリアンプの特性が支配的であり、LIFESによって歪やS/Nが改善され、音質対策もさらに攻めることが可能になった」という。

「L-509Z」の内部構造

「従来(LIFES以前)では、音の立ち上がりを早めると歪みのために(音の)詰まりが目立ってしまうこともあったが、ソフトな表現かつ立ち上がりが甘くならない、その両立が可能となった」といい、まさにこれは、M-10XやL-507Zで感じられる先述の劇的な進化を感じる出音に直結していると筆者は推察する。さらには、「LIFESの特性改善だけでなく、パワーアンプ出力がプリアンプに混入する対策にも注力した」といい、こちらもLIFES以降に得られた知見が最大限発揮されているのだろう。

プリメインアンプは、プリ部とパワー部が直結することによる音質的メリットがある一方で、振動などを含む互いの干渉による様々なデメリットとも隣合わせである。長妻氏によると、これらについての対策がLIFESの実現によってさらに追求可能になったといい、「星の数ほどある表現の幅を拡げやすくなることが分かり、自身がずっと達成できなかった表現が初めて達成できた」というほど。やはりLIFES完成によるラックスサウンドの進化が如何に大きなものであったかがよく分かるコメントだ。

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