【インタビュー】TAD、初のプリメインアンプ誕生が示す新たなハイエンドの価値観
オーディオ銘機賞2026 受賞インタビュー
テクニカルオーディオデバイセズラボラトリーズ
国内オーディオマーケットに展開される数々の製品の中で、卓越した性能、革新的な内容を持ち、かつオーディオマインドに溢れる “真の銘機” を選定するアワード「オーディオ銘機賞2026」において、テクニカルオーディオデバイセズラボラトリーズのプリメインアンプ「TAD-A1000」が特別大賞を受賞した。同社で初となるプリメインアンプの展開が示す新たな可能性について、代表取締役社長の樽谷慎二氏が語る。
株式会社テクニカルオーディオデバイセズラボラトリーズ代表取締役社長 樽谷慎二氏
新カテゴリーのプリメインアンプが広げるTADの可能性
ーー オーディオ銘機賞2026において、TADブランド初のプリメインアンプTAD-A1000が特別大賞を受賞されました。受賞に際してのお気持ちと、製品の背景についてお聞かせください。
樽谷 大変栄誉ある賞を頂戴しまして、非常に光栄に思います。ハイエンドオーディオの思想では従来から、アンプならばプリとパワーに、CDプレーヤーならばトランスポートとDACに、セパレートされ精密さが追求されるコンポーネントの価値が高く受け入れられてきました。それで我々も当初は、ハイエンドオーディオとしてのプリメインアンプにはあまりポジティブな印象をもっていなかったのです。
しかし5〜6年ほど前から、海外の代理店からのインテグレーテッドをご要望される声が強くなってきたのですね。TADでは、まず既存のラインナップを充実させるとともに製品のモデルチェンジも行っており、新たなカテゴリーの開発には辿り着けずにいました。しかし、海外の代理店から良いスピーカーがあってもインテグレーテッドがないからTADのアンプは訴求しにくいとの指摘も有り、危機感を感じて満を持してインテグレーテッドの開発を進めて、TAD-A1000の完成に至りました。
昨今のようにストリーミングでオーディオ再生が完結する時代になると、幾つもの機器は必要でなくなりますし、海外でも昨今は、ハイエンドオーディオ市場にプリメインアンプの土壌が出来上がりつつあります。TADが今後認知度を高め、成長し事業を継続するためには、ラインナップの拡充が不可欠です。こうして結線が短縮され、プリアンプとパワーアンプを統合したワンボディアンプが生まれ、高くご評価いただいているスピーカーとともに最高の音をご提供するシステムとして提案できるようになり、新たな可能性が広がりました。
ーー TAD-A1000の展開について、お客様のご反応はいかがでしたでしょうか。
樽谷 国内では、東京インターナショナルオーディオショウやオーディオセッションin 大阪に出展いたしまして、大変ご好評をいただきました。海外では代理店主導で台湾のオーディオショウに参加し、リファレンスシリーズの組み合わせとともに、TAD-A1000とTAD-ME1TXというエボリューションシリーズのシステムが出品されました。エボリューションのデモは初日30分程度でしたが、次の日は1時間になり、その次の日は2時間になり、最終日はオープニング前の朝8時からセッティングをTAD-A1000とTAD-ME1TXに変えて、朝10時のショー開始からデモを行いまして、手応えを強く実感しました。
アメリカでも新たな代理店と契約ができましたが、彼らは真っ先にTAD-A1000を見せてくれと言います。やはりどこの国でも、プリメインアンプの市場が動いているのだと感じます。ストリーミングの浸透も後押しとなっていますが、特に国内ではライフステージが変化する中で、コンパクトなオーディオのニーズも顕著になりつつあります。ハイエンドの位置付けでのプリメインアンプは、新しい価値観をもつ存在だと認識しています。
時代ごとに磨き上げてきた技術力とこだわりの集大成
ーー 開発の過程でのトピックスをお聞かせいただけないでしょうか。
樽谷 TAD-A1000はDクラスアンプですが、こだわりの部品を採用し、アナログライクな音に仕上げています。セパレートでしか存在していなかったアンプを、ワンボディに納めるのは非常に大変でした。妥協のない音を求めて大きなトランスを入れた構造にして満足のいく音となりましたが、今後はサイズの部分も突き詰めていければと思っています。
どんな新製品でもそうですが、つくるに際してはこれまでのTAD製品で構築されたお客様の期待を超えなくてはいけません。今回初めてプリメインアンプを出すにあたっても、その思いが強くありました。TADの製品は、時代ごとに明確な個性があります。音の好みはお客様それぞれにありますが、我々は絶えず進化し、その時々の一番いいものを提案していきます。そして次の世代に向けての技術を常に磨いているのです。
昨今はオリジナルパーツを入手するのがとても大変ですが、お客様にご満足いただける製品に仕上げるため、協力工場さんに無理を言って供給をお願いしています。ハイエンドオーディオとして、お客様に買ってよかった、所有してよかったと思っていただけるものをこれからもつくりあげていきます。
ーー プロモーション活動についてはいかがでしょうか。2年前のインタビューでは、海外を回っておられるとお聞きしましたが。
樽谷 香港のオーディオショーには昨年から、インドネシアのショーには今年初めて参加しましたが、グローバルでのTADの認知度はまだまだだと感じます。どこの地域であっても、現地に行く重要性を痛感して、毎年ショーに参加していくとお客様が増えていくのが肌で感じられますし、現地に行けば我々がするべきことが見えてきます。直接コミュニケーションを取ってニーズを吸収することもできますし、学ぶこともたくさんあります。
海外ブランドとのコラボも実現しました。日本にはまだ入っていない「Innuos」というミュージックサーバーやストリーマーを手掛けるメーカーがあり、彼らはマレーシア、フィリピン、パリのショーに参加していましたが、パリでTADとコラボし、サウンドのデモに対してアメイジングと言っていただけました。彼らの良さを最大限に引き出せるものとして、TADが選ばれたのはとても光栄です。海外の販路はさらに広げていきたいですね。そしてネットワークオーディオにも魅力を感じますが、まだそこまで手が回っていません。
世界市場で広げていく、メイドインジャパンのブランド
ーー 2020年に社長に就任されて5年が経過しました。あらためて振り返っていかがでしょうか。
樽谷 香港のショーに出る前にショーの主催者に挨拶に行った時、現地の主催者から、TADを広める活動が全然できていないと指摘されたことがありました。非常に反省し、それから精力的にやって参りましたが、その成果としてオーディオショーに出ても盛況ですし、その後に商品も売れていくんですね。しかし、まだ十分ではありません。今重視しているのは新興市場で、若者が人口に占める割合が非常に高いアジアを中心に広げたいですね。そしてアメリカは、代理店を新たにして再構築していきます。
TADの商品力によって、認知度が少しずつ広がってきました。けれどもブランドや製品のバックボーンについて知っていただき、TADをさらに身近に感じていただきたいと思っています。私が自ら各地を訪れて、しっかりと説明していきます。2025年からはYouTubeチャンネルもスタートさせ、動画でのプロモーションも行っています。さらにブラッシュアップして魅力を発信したいですね。
商品づくりとして手がけたいものもたくさんあります。TADのプロ用スピーカーユニットは音楽制作スタジオ用のプロフェッショナル向けをはじめ、我々以外のメーカー様の製品にも使われているのですが、最近問い合わせも増えてきていて、ここもTADならではの製品を安定的に供給できるようにして再構築したいと思っています。また、パイオニアの往年のスピーカーであるエクスクルーシブを、今復刻したら面白いのではないかと。そういったいろいろなアイデアをかたちにするべく走り続けます。
スピーカーとエレクトロニクスの両輪で感動を届けられる国内メーカーとして、国内ハイエンドブランド各社と一緒になってメイドインジャパンを世界に広げ、日本を元気にするべく、TADはこれからも頑張って参ります。
ーー 今後もご活躍に期待しております。ありがとうございました。
