「SA-14S1SE」と「PM-14S1SE」

マランツ、音質マネージャーが“自分専用”チューニングした限定モデル「14S1 Special Edition」

2016/06/01 編集部:小澤貴信
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マランツは、SACDプレーヤー「SA-14S1」とプリメインアンプ「PM-14S1」をベースに、サウンドマネージャーが特別音質チューニングを施した“Special Edition"モデル「SA-14S1SE」「PM-14S1SE」を7月下旬より各100台限定で発売する。

・「SA-14S1SE」USB-DAC搭載SACDプレーヤー ¥290,000(税抜)

SA-14S1SE


・「PM-14S1SE」プリメインアンプ ¥290,000(税抜)

PM-14S1SE


「SA-14S1」(関連ニュース)と「PM-14S1」(関連ニュース)は、2013年10月に“14シリーズ”として登場した。この2モデルをベースに、音質追求にフォーカスしたチューニングや物量投入を実施したのが、この「Special Edition」となる。価格は通常モデルよりそれぞれ5万円アップしている。

なお両モデルは、欧州では2015年5月に開催された独ミュンヘン「HIGH END」で発表され(関連ニュース)、同年夏より欧州で発売が開始されていた。欧州での好評を受け、日本にも導入されるかたちだ。なお、欧州ではカラーはシルバーゴールドとブラックの2色が展開されているが、日本国内についてはシルバーゴールドのみの展開となる。以降にその詳細を説明していく。

サウンドマネージャーがコストを度外視して作った「自分専用モデル」

発表会では、ディーアンドエムホールディングスのシニアサウンドマネージャーである澤田龍一氏がプレゼンテーションを行った。澤田氏は2016年2月いっぱいでマランツのサウンドマネージャーを尾形好宣氏へと引き継いだが、本機は前述の通り2015年に開発されており、澤田氏が音質チューニングを担当した。

音質チューニングを担当した澤田龍一氏

ベースモデル「SA-14S1」と「PM-14S1」に対して、スペックや仕様、および回路上の変更点はない。その一方で「音質に関わるところにだけ、コストをかけています」と澤田氏。「もし、コストを度外視して自分専用のモデルを作るとしたら“こうする”だろうというアイデアを、実現させたのがSpecial Editionなのです」。

SA-14S1SEのSpecial Editionロゴ

PM-14S1SEのSpecial Editionロゴ

Special Editionで施された具体的な音質チューニングを紹介する前に、ベースモデルの概要を述べておく。

SA-14S1SEのベースモデルとなった「SA-14S1」は、旗艦モデル「SA-11S3」に次ぐSACDプレーヤー。独自メカエンジン「SACDM-2」を搭載し、TI製の電流出力型DAC「DSD1792A」を採用する。192kHz/24bit PCMや5.6MHz DSD対応のUSB-B入力を備え、PCからのノイズ流入を排除する「コンプリート・アイソレーション・システム」によってノイズ対策も徹底する。詳細についてはこちらの記事で紹介している。

PM-14S1SEのベースモデル「PM-14S1」は、旗艦モデル「PM-11S3」に次ぐプリメインアンプ。独自のディスクリートアンプ回路「HDAM-SA2」「HDAM-SA3」を用いた電流帰還型プリアンプ、V/Iサーボ方式の電流帰還型回路によるパワーアンプを採用する。電源トランスには、1.5mm厚のアルミケースとケース内に配したコアリングによる二重シールド構造の大型トロイダルトランスを搭載する。詳細についてはこちらの記事を参照してほしい。

両機で5mm厚アルミ製トップパネルやアルミ削り出しフットを採用

SA-14S1SEとPM-14S1SEで共通して施されたのが、トップパネルの変更だ。通常モデルでは1.2mm厚の鉄板を用いているが、本機ではいずれも5mm厚のアルミ板を用いている。

SA-14S1SEとPM-14S1SE

澤田氏によれば、厚さが1.2mmから5mmへとアップしたことによる強度の向上もさることながら、磁性体である鉄板から、非磁性体であるアルミへと素材が変更されたことの効果も大きいという。「筐体を磁性体で覆うと、サウンドフィールドの高さ方向が抑圧される傾向になりますが、非磁性体のアルミを用いることでより広い空間表現が可能になるのです」。

トップパネルに5mm厚アルミ板を採用

この5mm厚アルミトップパネルは、旗艦アンプ「PM-11S3」でも用いられている。また、非磁性体のトップパネルを用いることで、開発中にトップパネルを外して再生するときのような、開放的なサウンドが実現できるとも説明された。

さらに両モデルにおいて、脚部のインシュレーターが、通常モデルのアルミダイキャストからアルミブロック削り出しへと変更された。インシュレーターの強度は変わらないが純度が上がるため、よりきれいな振動減衰特性が実現できるとのこと。結果、より澄んだ音が可能になるという。

インシュレーターはアルミブロック削り出しに

両モデルのフロントパネルには、「Special Edition」のロゴもあしらわれている。なお、今回はそれぞれ限定100台の販売だが、シリアルナンバーの付与は行わないとのことだ。

SAはメカエンジンに追加の振動対策。PMはブロックコンデンサーの容量を大幅強化

次に、各モデルで個別に実施された特別チューニングについて紹介する。SACDプレーヤー「SA-14S1SE」では、通常モデルと同様に独自のメカエンジン「SACDM-2」が採用されているが、ディスクからのデータ読み取り精度を向上させるために追加の振動対策が実施されている。

メカエンジンに振動対策が追加

このメカエンジンに追加された振動対策については、「やたらとゴツくしようというのではなく、振動を素直にしようという方向で対策を施しています」(澤田氏)とのことだ。

プリメインアンプ「PM-14S1SE」では、音質の要となるパワーアンプ用のブロックコンデンサーを変更。通常モデルでは15000μFという容量のニチコン製ブロックコンデンサーを2基搭載するが、本機では同じくニチコン製ながら容量をアップ。20000μFのブロックコンデンサーを2基搭載した。これにより内部抵抗が低くなり、よりハイスピードかつリニアなスピーカードライブが可能になったとのこと。この点について澤田氏は、「この部品のコストは通常モデルの倍以上です」と紹介していた。

ブロックコンデンサーは大幅に大容量化

ショートプラグを追加してS/Nをさらに向上

さらにパワートランジスターには、銅板によるカバーを追加。従来モデルではネジ止めしているパワートランジスターを、本機では純銅製のカバーで押さえ込むことで、振動対策とシールドの両方の効果を得ている。これにより、音の雑味がさらに抑制されてたという。

また、SA-14S1SEの同軸デジタル入力端子、およびPM-14S1SEのフォノ入力端子については、未使用時のキャップとなるショートプラグを追加。これによりノイズ流入が抑えられ、聴感上のS/Nが向上するとのことだ。

マランツに受け継がれる「Special Edition」の系譜

澤田氏はマランツにおける「Special Edition」の系譜についても紹介してくれた。マランツはかなり早い時期から、ベースモデルに手をいれた「Special Edition(SE)」や「Limited Edition(LE)」を展開してきた。その最初となったのは1986年に欧州で2000台限定にて発売された「CD-45LE」で、大好評で瞬く間に完売したとのこと。それ以来、マランツは様々な「SE」「LE」モデルを展開してきた。

HIGH END 2015に出展されていた「CD-45LE」

日本における「SE」モデルは、1990年発売の「CD-99SE」「PM-88SE」「SD-66SE」が最初で、以降様々な「SE」モデルが展開されたが、近年では「SE」と名の付くモデルは発表されていなかった。

「しかし、SA-15/PM-15の事実上の「SE」モデルがSA-13/PM-13であり、その意味ではSEの思想は継承されてきたのです」(澤田氏)。

マランツ試聴室に設置されたSA-14S1SEとPM-14S1SE。B&W「802 D3」と組み合わせての試聴もできた


主な仕様

SA-14S1SEの主な仕様は以下の通り。オーディオ特性(SACD)は、再生周波数範囲が2Hz〜100kHz、再生周波数特性が2Hz〜50kHz(-3dB)、S/Nが109dB(可聴帯域)、ダイナミックレンジが109dB(可聴帯域)、高調波歪率:0.0009%(1kHz、可聴帯域)。消費電力は37W(待機電力:0.3W)、外形寸法は440W×127H×419Dmm、質量は15.3kg。

PM-14S1SEの主な仕様は以下の通り。定格出力は90W+90W(8Ω、20Hz〜20kHz)、140W+140W(4Ω、20Hz〜20kHz)、全高調波歪率は0.05%(8 Ω、20 Hz〜20kHz)、出力帯域幅は5〜40kHz(8 Ω、0.05%)、周波数特性は10 Hz〜100 kHz(±3dB、CD、1W、8Ω)、ダンピングファクターは100(8Ω、20Hz〜20kHz)。消費電力は220W(待機電力:0.2W)、外形寸法は440W×127H×457Dmm、質量は19.1kg。


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