アナログ入力からヘッドホンまで徹底分析

価格やサイズに見合わぬ高品位サウンド − マランツ「HD-AMP1」に岩井喬が迫る

岩井 喬

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2015年12月11日
マランツのUSB-DAC内蔵プリメインアンプ「HD-AMP1」の連続レポート第2回目は、岩井 喬氏が同社初のスイッチングアンプ(クラスDアンプ)である本機の先進性を分析しつつ、各入力ソースの音質を集中試聴。“究極のデスクトップアンプ”と呼べる本機のポテンシャルを分析する。 >>>連続レポート第一回はこちら

Marantz「HD-AMP1」¥140,000(税抜)

スイッチングアンプを初採用したマイルストーン的モデルが登場

マランツの新機軸として2014年10月に登場した“デスクトップ・プレミアムコンパクト”USB-DAC/ヘッドホンアンプ「HD-DAC1」。そのコンセプトを発展させたプリメインアンプがこの12月に発売となった「HD-AMP1」だ。90年代に展開していた「ミュージックリンク」シリーズの流れを継承し、ハイレゾ時代のプレミアムコンパクト・コンポーネントを提案してゆくという。HD-AMP1はマランツとしては初めてのESS製DACチップを搭載したほか、スイッチングアンプ方式の構成もHi-Fiコンポーネントとしては初採用というマイルストーン的な存在のモデルである。

14万円のプリメインアンプという点で、同社のPMシリーズの「PM8005」と「PM-14S1」に挟まれる価格帯となる。PMシリーズはアナログアンプとしての設計を貫いており、例えばラインナップのUSB-DAC内蔵モデル「PM7005」も、数ある入力の一つにUSB入力が加わったというスタンスだ。

HD-AMP1の背面端子部

一方でHD-AMP1はデスクトップという限られた環境で最大限のパフォーマンスを引き出すために、省スペース設計が可能なスイッチングアンプ・デバイスを投入。現状最高スペックといえる11.2MHz DSDと384kHz/32bit PCM対応のUSB入力を中心とした、デジタルに親和性の高いシステムを構築するという思想を持つ。

したがって定格出力をPM8005と(8Ω負荷:70W×2)と比較すると、HD-AMP1はちょうどその半分(8Ω負荷:35W×2)だが、デスクトップ環境として考えれば十分すぎるほどの数値なのだ。

スイッチングアンプ・デバイスはHypex「UcD」を採用

スイッチングアンプ・デバイスには、フィリップス・グループ時代につながりのあった半導体部門の面々が在籍するHypexによる「UcD(Universal class D)」が採用された。このUcDのベースとなる技術は、フィリップスのスイッチングアンプ・モジュール「SODA(Self Oscillating Class D Amplifier)」である。マランツはかつて、B&Wのアクティブ・サブウーファー(「ASW675」「ASW850」「ASW800」など)の1kWアンプ部を担当したのだが、その折りにはSODAを用いて設計していた。それもあって、その特長や音質など素性の良く知るデバイスであったことも今回の採用の一因であったという。

Hypexスイッチングアンプモジュール「UcD」

UcDはパワーアンプの前段までがアナログ構成となっており、最終段のパワーデバイスのみがスイッチングアンプというデバイスだ。よってマランツのようにアナログ技術にこだわりのあるブランドからすると、フルデジタルアンプと違い、手を入れることのできる領域が広いこともメリットに繋がっている。

フィードバックに関しても、一般的なスイッチングアンプが出力段からかけるのに対し、UcDはさらに後段に配置した出力フィルター通過後の地点からフィードバックをかける「オーバーオール・ネガティブフィードバック」を用いている。これにより高いダンピングファクターと低インピーダンス化を実現するとともに、スピーカーのインピーダンス変動による周波数特性の乱れを抑えることができるという。

アナログ回路はPM-11S3と同等の構成を実現

当初はHD-DAC1と同じくらいのボディサイズとし、「M-CR611」をグレードアップさせる方向で開発が進められていたのだという。しかしUcDの採用もあり、“マランツらしさ”を追求する方向へ舵を切り、プリからパワー前段までマランツ独自の高速ディスクリート回路「HDAM」を投入。理想のサウンドを得るために筺体サイズも大きくなった。

HD-AMP1のプリアンプ部

HD-DAC1は新コンセプトの第一号機ということもあり、デスクトップで邪魔にならない大きさを第一優先とし、大きな筺体が必要となるバランス駆動も排除した潔いつくりであった。HD-AMP1は同じシリーズでありつつも、その逆アプローチともいえるプロセスを踏んでいる点が対照的で興味深い。結果として小型化できるスイッチングアンプ部の効果もあり、PM-11S3と同等の回路構成を実現することができたという。だからこそ、アナログ段の作り込みに開発陣は自信を持っており、RCAアナログ入力も2系統用意されている。デスクトップ上でUSB入力がメインとなるのは理解しつつも、アナログへの深いこだわりを貫き通す、ブランドとしての想いの強さをこの点からも感じ取ることができるのではないか。

ESS製DAC「ES9010K2M」にオリジナルフィルターを実装

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