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公開日 2026/07/16 06:35
14社からなるリニューアブルプラスチックを製造環境を整備

“環境に優しい高品質”を目指す。ソニーのイヤモニ「IER-M500」/4Kテレビ「BRAVIA 9II」にリニューアブル素材を採用

出水 哲

ソニーは、バイオマス原料を用いた「リニューアブルプラスチック」の同社製品での採用に関する説明会を開催し、環境に配慮した製品開発に関するさらなる取り組みを明らかにした。



リニューアブルプラスチックのペレットと、その素材を用いた「WF-1000XM6」と「IER-M500」


リニューアブルプラスチックとは、従来の石油由来の材料ではなく、再生可能なバイオマス資源を使って作られたプラスチックを指す。


通常のプラスチックは、原油を精製して作られるナフサを熱処理して粒状のペレットを製造、それをさらに加熱・成型することで様々な形の製品が作られている。


これに対しリニューアブルプラスチックでは、バイオマス(廃食用油など)由来のナフサを使ってペレットを製造している。


製造コストは従来よりも高くなるが、プラスチックの品質は石油由来のバージンプラスチックと遜色なく、かつ製造時のCO2(二酸化炭素)の排出量は抑えられるとのことだ。



BRAVIA 9IIに採用された、リニューアブルプラスチックのペレット。左が65V型の背面パネル用で、右が光学部品用


環境負荷をゼロにする、新たな取り組み


ソニーでは、これまでも「地球に負荷を与えずに感動を生み出す挑戦」に取り組んできた。そこでは、事業活動と製品のライフサイクル全体を通じた目標を設定、環境負荷ゼロを実現する「Road to Zero」を推進している。


その一環として、使用済みプラスチックを再処理して原料に戻し、新しい製品に再利用するマテリアルリサイクルも採用しており、ソニー・ミュージックソリューションズから出た廃ディスクの粉砕材を一部の材料として使った、独自開発の難燃性再生ポリカーボネート樹脂SORPLAS(ソープラス)をBRAVIAのリアカバーなどに使ってきた。


ただし、ヘッドホンやテレビのパーツ、特に光学部品などではマテリアルリサイクル素材を使うのは難しいという側面もあったそうだ。そういったパーツについては、リニューアブルプラスチックの方が適しているそうで、ソニーでは適材適所での使い分けを考えたという。


しかし、オーディオ・ビジュアル製品で使うプラスチックは種類も目的も多岐にわたる。そのためサプライチェーンが複雑で、原料から製品までの流れを可視化して、一元管理するのは難しかった。つまり、その素材が本当にリニューアブルプラスチックなのかを証明する術もなかったのだろう。


そこで今年2月に、ソニーと三菱商事を始めとする14社からなる「Creating NEW from reNEWable materials」プロジェクトを発足させ、複数の種類のリニューアブルプラスチックを製造できる環境を整えている。



「Creating NEW from reNEWable materials」プロジェクトは業種の異なる14社が参加した、バイオマス原料を用いたリニューアブルプラスチックのサプライチェーンとのこと


自社製品3モデルに、いち早く採用


リニューアブルプラスチックの製造は、マスバランス方式を採用している。これは原料から製品への流通・加工工程で石油由来とバイオ由来の原料をある比率で混合して製造を行い、その比率に応じた完成品をリニューアブルプラスチックと認定する手法とのことだ。



リニューアブルプラスチックの製造は、マスバランスと呼ばれる方式を採用。石油由来とバイオマス由来の原材料の比率に応じて、完成品の何パーセントをリニューアブルプラスチックに分類するかを決めている


これらの施策によって、原料から完成品まで可視化されたリニューアブルプラスチックが、安定して手に入るようになっている。


このプロジェクト自体は3年ほど前から動き始めたというが、賛同者の間で目標理念を共有していくことに一番苦労したそうだ。


確かに14社で、しかもビジネススタイル、企業風土が異なる組織間でひとつの目標を共有するのは難しいだろう。今回はコミュニケーションをしっかり取ることで、その難問を解決していった。そのベースができたことで、テクニカルな問題解決も順調に進められたのだろう。



「WF-1000XM6」は、充電ケースに使用


さて、現在ソニーではそのリニューアブルプラスチックについて、完全ワイヤレスイヤホンの「WF-1000XM6」と、先日発表されたインイヤモニター「IER-M500」、そして4K液晶テレビ「BRAVIA 9II」(115V型は除く)の3モデルに採用している。



現在ソニー製品でリニューアブルプラスチックを使っているのは、「WF-1000XM6」「BRAVIA 9II」「IER-M500」の3モデル


完全ワイヤレスイヤホン等では以前からマテリアルリサイクル素材も使われていたが、リニューアブルプラスチックを採用した製品としてはWF-1000XM6が初とのことで、充電ケースの一部(全体の25%)に投入された。


実はリニューアブルプラスチック導入の検討が始まった段階で、WF-1000XM6にどういった材料を使うかといった選択が進んでいた。そこでは材料としての耐久試験(数ヶ月をかけて行うことも多い)も必要で、特に音質に関わる部品については細かい調整が必要になることから、全面的にリニューアブルプラスチックを導入するのは難しかったそうだ。


そんな中、充電ケース用に想定していた材料が入手できなくなり、リニューアブルプラスチックの採用が決まったという。もちろんそこには先に書いた通り、サプライチェーンのメンバーの賛同を得られたことが大きかったと担当者氏が説明してくれた。



WF-1000XM6では、充電ケースにリニューアブルプラスチックを採用。耐久性なども従来素材と遜色ないとのこと


「IER-M500」では、スケルトンカラーも実現


続いて新製品のIER-M500では、イヤホン本体にリニューアブルプラスチックを採用している。


この製品はブラック、クリアー、レッド&ブルーという3色を揃えているが、いずれも半透明のスケルトン仕上げになっている。ステージで使われるイヤモニではスケルトンデザインが人気ということもあっての採用だが、マテリアルリサイクル素材では無色の材料を集めるのが難しく、スケルトン仕上げは困難だったそうだ。


これに対しリニューアブルプラスチックは、製造手法自体はバージンプラスチックと同じなので、様々な色の半透明素材も作れることになり、IER-M500での採用が実現した。さらに本体以外のパーツ(半透明の部分)にもリニューアブルプラスチックを採用しているとかで、使用率は全体の35%に及んでいる。



IER-M500では、イヤホン本体と音導管部分の透明なパーツにリニューアブルプラスチックが使われている


高品質が求められる工学部品も製造可能


最後のBRAVIA 9IIでは、内部部品の一部にも リニューアブルプラスチックを搭載している点が新しい。


ブラビアでは以前から全ラインナップでマテリアルリサイクル素材の使用(背面カバーなど)、包装材のプラスチック削減、製造時のCO2削減、低消費電力といった様々な面で環境対応を果たしているが、今回はさらに多くの部分にリニューアブルプラスチックを投入することで、環境対応を進めたわけだ。


具体的には背面カバー(65V型のみ)と内部シャーシ、光学部品に採用したとのことで、画質に関わる光学部品にもリニューアブルプラスチックが使われていることにも注目したい。


光学部品については、どのパーツかは公表されていないが、パネル内で使われていることから光の透過率やムラ、色への影響があってはいけないことは想像に難くない。


今回、RGB MiniLEDバックライトを搭載したフラグシップモデルにリニューアブルプラスチックが使われたということは、それだけ高い品質管理ができるということで、これは今回のプロジェクトの成果といえるだろう。


なおBRAVIA 9IIに搭載された光学部品は、ソニーの求める仕様・品質に対応できるように作られたとかで、この品質が可能ということであれば、今後さらに応用範囲が広がっていくことだろう(将来的にコスト面も改善される可能性がある模様)。



BRAVIA 9IIでは、映像に大きく影響する光学部品であるパネルにリニューアブルプラスチックが使われた




BRAVIA 9IIの65V型モデルは、背面パネルにもリニューアブルプラスチックを採用する


“環境に優しい高品質” を実現する重要なプロジェクト


なお、将来的にブラビア製品にリニューアブルプラスチックを採用し続ける予定はあるのか、またその際には品質管理はどうするのかについても聞いてみた。それについては、ブラビアというブランドへの信頼を裏切らないように、品質を担保しつつ、環境対応への取り組みを継続していくとの話だった。


もうひとつ、今回のリニューアブルプラスチックについてはソニー独占ということではなく、他に使いたいメーカーがあれば供給される可能性はあるそうだ。


製品としてオーディオ・ビジュアル機器以外にも応用できるとのことで、将来的には “環境に優しい高品質” が当たり前になっていくのかもしれない。その意味でも、今回の「Creating NEW from reNEWable materials」プロジェクトは大きな意味を持っている。

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