Ediscreation全機種レビュー!生形三郎氏が自宅へのリファレンス導入を決めた!
生形三郎ネットワーク再生の重要性がますます高まるなか、いま注目を集めているのがエディスクリエーションの「NET SILENT」だ。LAN環境に潜むノイズを徹底排除し、音楽信号の純度を追求するその思想は、多くのオーディオファイルから支持を集めている。
本企画では、この話題のNET SILENTを軸に、同社が展開するネットワークハブや、光絶縁ツール、そしてRoon用オーディオPCまでラインアップを一挙紹介。さらに、エディスクリエーションの愛好者でもあるオーディオ評論家・生形三郎氏が、今回の取材をきっかけにさらなるモデルの導入を決意した。その理由や背景にも注目してほしい。
音楽の情感や演奏者の熱量まで自然に立ち上がらせる力がある
「名は体を表す」という諺がある。オーディオの世界もまた同じだ。開発者の人となりや音楽観は、驚くほど率直に製品の音へ表れるものだと感じる。単なる音色の好みだけではなく、音楽のどこに価値を見出し、何を聴き取ろうとしているのかという解釈の深さまでもが、音作りには宿るのである。
エディスクリエーションを率いるエディソン・ウォン氏と話したとき、その思いはいっそう強くなった。音楽への純粋な高揚、オープンな笑顔、生き生きとした眼差し、そして「オーディオで人を喜ばせたい」という情熱。それらがそのまま製品のサウンドに結実しているブランドだと感じたからだ。言葉を交わすほどに、氏の人柄と音の間に確かな一致を感じずにはいられなかった。
エディスクリエーションの製品は、ネットワーク再生からみずみずしさと温かみ、有機的な明朗さを引き出す。単に滑らかで聴きやすいというだけではなく、音楽の情感や演奏者の熱量までも自然に立ち上がらせる力がある。筆者もSILENT SWITCHを初めて聴いた瞬間から魅了され、今では自宅のリファレンスシステムに欠かせない存在となっている。ネットワーク再生が、これほどアナログ的な温度感と質感を持ち得るのかという驚きは、いまも鮮明に記憶している。
そんな同ブランドから満を持して登場したのが「NET SILENT」だ。近年、ネットオーディオの世界ではルーターを含む上流機器にまで関心が及んでいる。家庭内ネットワークをオーディオ専用に切り分け、スマートフォンや家電など他機器からの干渉を遮断することで、より低ノイズな再生環境を目指す流れが広がっているのである。
NET SILENT “JAPAN EXCLUSIVE MODEL” (展示特約店モデル) 616,000円(税込)
【PROFILE】ストリーミング再生に特化して開発されたオーディオグレード・ルーター。カスタム設計のハードウェアとファームウェア、OCXOクロック、超低ノイズのリニア電源、独自のグランド絶縁スイッチなどを搭載し、ネットワーク由来のノイズや不要な干渉を抑制する。STANDARD MODELとEXCLUSIVE MODELの2つをラインアップしており、EXCLUSIVE MODELは、現在考えられる最高のパーツを用いる事で究極のパフォーマンスを目出した最高グレードのオーディオ専用ルーターとなっている。
NET SILENTは無線LANルーターの下流に接続し、ネットワークプレーヤーやミュージックサーバー、光絶縁メディアコンバーターなどと組み合わせて、純粋なオーディオ専用ネットワークを構築する機器だ。最大の特徴は、外部からのアクセスを完全に遮断する点にある。上流ルーターにつながるスマートフォンやタブレットからもアクセス不能になるため、操作用アクセスポイントを別途下流側へ設置する必要がある。一見すると制約のようだが、この徹底した遮断こそが低ノイズ環境の実現へ直結している。
試聴では、Roon Server専用オーディオPC「HAYDN 2 JP MODEL」をアキュフェーズDP-770へUSB接続し、エディスクリエーションのネットワーク・アクセサリー機器を段階的に追加しながら効果を検証した。単なるS/N感や解像度の向上だけでなく、音楽表現そのものがどう変化するのかという観点を重視しながら聴き進めた。
ノイズやモヤつきが消え鮮烈な音楽空間へと没入
まずはHAYDNのみ、ネットワーク対策なしの状態から試聴を開始。ソースはRoon経由によるQobuzのロスレスストリーミングだ。いわばネットワーク・アクセサリーは無しの丸腰の状態だが、それでも音楽へ強く引き込まれる。淡白になりがちなネットワーク再生とは対極にある、精細でありながらウォームで立体的な音場が広がる。ネットワーク環境由来のノイズ感やわずかなモヤつきは残るものの、音楽そのものの心地よさと温かみが豊かに溢れており、思わず聴き込んでしまう。
【Profile】Windows 11 Proを搭載したRoon専用設計のPC。高品位DACと組み合わせることで、ハイグレードなオーディオPC環境を構築できる。ディスクリート電源を採用するほか、巧みな内部設計によってファンレス化も実現している。
本質的な音楽再生としての充実感は、この段階ですでに十分に感じ取れたし、個人的にも大変好ましく感じた。ヴォーカルの体温感や、楽器同士の響きが空間を形作っていく感覚には、PCオーディオ的な無機質さが希薄で、むしろ良質なアナログ再生を想起させる魅力がある。ネットワーク対策なしでここまでの音楽性を引き出せること自体、HAYDN 2 JP MODELの地力の高さを物語っていると実感した。
ここへ今回の主役であるNETSILENT “JAPAN STANDARD MODEL”を加えると、効果は驚くほど大きかった。単に背景ノイズが減るというレベルではなく、音楽の流れそのものが滑らかになり、演奏の抑揚や呼吸がより自然に融和してつながっていく印象を受ける。情報量が増えているにもかかわらず、決して分析的にはならず、むしろ音楽へ素直に没頭できる方向へ作用しているのが快い。
先ほどまでのノイズ感やモヤつきが消え、透明度が大幅に向上する。奥行き表現の拡大も見事だが、何より印象的だったのはスピーカー前方、つまりリスナー側へ音場が広がったことだ。空間情報が積極的に前へ展開し、音楽空間の中へ身を置くような没入感へ変貌する。自然なサラウンド音源を聴いているかのような感覚であり、この効果は実に鮮烈だった。
さらにFIBER BOX 3 “JAPAN STANDARD MODEL”を追加すると、再生のリアリティは一段と増す。音場は単に広がるのではなく、前後左右へ自然に空間が形成され、その中へ各楽器が確かな存在感を伴って定位するようになる。空間情報はさらに濃密になり、静寂とのコントラストが鮮やかに浮かび上がる。歌声や楽器の色彩感、みずみずしさが強く引き出され、一言で言えば「生々しい」。演奏者の息遣いや空気感までもが手に取るように伝わってくる。光変換アクセサリーでは勢いや音色感に副作用が出る場合もあるが、それを感じさせないあたりにエディソン氏のセンスが光る。
FIBER BOX 3 “JAPAN EXCLUSIVE MODEL” 616,000円(税込)
【Profile】通常のLANケーブルによる入出力のみでオプティカル・アイソレーション(光絶縁)を実現する革新的モデル。SILENT SWITCH OCXO 2と組み合わせることでクロック同期が可能となる。
明瞭度を増す上位モデル音楽の楽しさを引き出す
続いてNET SILENTを“JAPAN EXCLUSIVE MODEL”へアップグレードすると、音楽表現の明瞭度がさらに高まった。音のひとつひとつ、余韻の細部まで見渡せる感覚で、高精度クロック導入時にも似た変化だ。
ピーター・ガブリエル『i/o』では、スネアドラムの余韻の移ろいや、シンセサイザーが時間をかけて広がるレイヤーが鮮明に耳へ届く。余韻方向の繊細な変化を描き出す力が際立っており、聴くほどに解像力の高さへ引き込まれていく。音像はやや引き締まるが、それは曖昧さが排除された結果であり、むしろ輪郭がより鮮明になった印象だ。
最後にプレーヤーをHAYDN 2 JP MODELからフラッグシップPC「BACH JP MODEL」へ変更した。ここまでの変化を積み重ねたうえでの換装だけに、効果は非常に明快だ。やはりエディスクリエーションの音がする。立体感とレイヤーの重なりが大きく拡大されながら、決して尖らず耳馴染みが良い。シンバルのアタックもヴォーカルの発音も心地よく、定位は明瞭なのに硬質にならない。低音は豊かな厚みを伴い、音楽が生きて立ち上がるような有機的立体感が実に魅力的だ。プレーヤーを換装することで、それまで積み上げてきたネットワーク対策の効果がさらに花開く印象を受けた。
【Profile】エディソン・ウォン氏の音楽への情熱と長年の技術力を融合して生まれたミュージックサーバー。徹底した機械的振動やノイズ対策、膨大な試聴により、音楽の感情表現まで描き出すことを目指した。
製品名にもまた、エディソン氏の音楽的素養が表れている。クラシック音楽の様式や楽式の基礎を築いたウィーン古典派の大家ハイドンと、バロック期を総決算した「(西洋)音楽の父」大バッハの名を冠する感性。古典派のなかでもモーツァルトやベートーヴェンではなく、まず「ハイドン」をプレーヤー名に選び、さらにフラッグシップにバッハを選ぶところに、氏の音楽的教養を感じずにはいられない。
今回あらためて感じたのは、エディスクリエーションの哲学が全製品へ一貫して宿っているということだ。アクセサリー単体の効果を誇張するのではなく、システム全体を通じて音楽再生の質感や空気感を整え、「音楽を聴く楽しさ」へ着地させようとしている。その方向性が非常に明確なのである。ネットワーク再生へアナログ的な有機性と温かみを取り戻す。しかもそれが、不自然な色付けではなく自然な効用として表れる点こそ、このブランドの真髄だろう。ともすれば無機質になりがちなネットワークオーディオの世界で、プレーヤーからアクセサリーまでこれほど音楽的豊かさを実現しているブランドは稀有な存在だ。
この音は、まさに「名は体を表す」そのものだ。単なる機器の完成度だけでなく、そこに流れる思想や音楽観までも自然に伝わってくる。エディソン・ウォン氏の人となり、音への感性、そして音楽そのものへの深い敬意と興奮が、そのままサウンドとして表れている。今回の試聴を通じ、筆者はそのことを改めて確信した。
なお今回の試聴を経て、筆者はRoon再生の新たなレファレンス機器としてHAYDN 2 JP MODELを自宅に導入することを決意した。評論活動の軸として、そしてさらなる音楽への没入のために、HAYDNを迎え入れる日がいまから楽しみでならない。
EDISCREATIONのその他のラインナップ
SILENT SWITCH OCXO 2 “JAPAN EXCLUSIVE MODEL” 616,000円(税込)
【Profile】ストリーマー、ミュージックサーバー、NAS、DACなどを用いたデジタル音楽の品質を向上させるために設計された従来モデルから、新技術Synchronize Clock Bus Technology を搭載し進化を遂げた。
【Profile】独自の低ノイズ・リニア電源技術を投入した外部電源。12V/2系統合計10A出力に対応し、DACやNAS、ネットワーク機器などのACアダプターを置き換えることで、機器本来の性能を引き出す。
(提供:株式会社タクトシュトック)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.201』からの転載です
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