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公開日 2026/05/25 06:30
立ち上がり/立ち下がりの鋭さは天晴れという他ない

同軸+大口径ユニット搭載! ジェネレック最新鋭3ウェイモニター「8380A」を小原由夫氏が聴く

小原由夫

その忠実なサウンドで、世界中のスタジオや放送局、クリエイター、そしてオーディオファンから支持されているフィンランドのスピーカーブランド、ジェネレック。ポイント・ソース理論を突き詰めたフラグシップモニター「8381A」に続く“The Main Ones”シリーズとして、「8380A」が登場した。



Genelec アクティブスピーカーシステム「8380A」
オープン価格(実売想定価格1,650,000円前後/1台・税込)
オープン価格(実売想定価格3,300,000円前後/ペア・税込)


独自開発の同軸ミッドレンジ/トゥイーター「MDC」と、38cmウーファーを組み合わせた3ウェイ構成を採用。ドライバーユニットのほかにも、フロントバッフルに搭載されたバスレフポートや大型ウェーブガイド、自己生成ノイズ=0dBを謳うアンプモジュール「RAM-L2」など、特筆すべきポイントが盛りだくさんの本機の魅力に、8381Aを導入した小原由夫氏が迫る。

スタジオモニターを代表するブランドの最新機


現代スタジオモニターの代表的ブランド、ジェネレック。今年1月、私は自宅スピーカーを同社のフラッグシップ機「8381A」に入れ替えたばかりだが、またひとつ魅力的なモデルが登場した。 最新鋭の同軸ドライバーと38cmの大口径ウーファーを搭載する「8380A」という型番が与えられた3ウェイ機である。


ジェネレックが過去にリリースした同型機は、 90年代始めの「1038A」、2010年代半ばの「1238A」があり、本機はそれらとすんなり置き換えられるサイズとなっている。


しかし、ドライバー・ ユニットやエンクロージャーの基本設計はもちろん、設置した場所に対してスピーカーを最適化する強力なキャリブレーション機能を有する「GLM(ジェネレック・ ラウドスピーカー・マネージャー)」も完全対応を果たしているなど、 中身には随所にジェネレックの最新テクノロジーが搭載されている。







8380Aは1992年に発売された「1038A」(左)、2014年に発売された「1238A」(右)と同じサイズとなるが、なお、これらの後継機ではなく、フラッグシップモニター8381Aに続く”The Main Ones”シリーズの新モデルとして位置付けられる




カラーはブラックの他、ホワイトをラインアップする


見た目には2ウェイに見えるかもしれないが、本機は中高域ドライバーに同軸構造を採用しており、13cmコーン型ミッドレンジと 25mmドーム型トゥイーターを組み合わせた同軸ドライバーである(高域がコンプレッションドライバー形式の8381Aの同軸ドライバーとは異なる設計)。



フラッグシップモニター「8381A」で開発された同軸ミッドレンジ/トゥイーター「MDC(Minimum Diffraction Coaxial)」を踏襲し、8380Aのために新規に設計して搭載。また、その周りにフロントバッフルの半分ほどの面積を確保した大きなウェーブガイド「DCW(Direcrivity Control Waveguide)」を採用し、広い指向特性を実現。極めて広いリスニングエリアでニュートラルなサウンドを再生するという


ウーファーはコルゲーション振動板/ギャザードエッジによる38cm口径だ。 中高域ドライバーには、広いリスニングエリアを確保したウェーブガイドが搭載されており、驚くべきはその指向特性の高さ。最短で1.3mと規定されたリスニン グ位置がそれを物語っている。製品資料を見ると、水平/垂直方向の周波数指向特性もほとんど乱れがなく、良好だ。このサイズでここまで近接して使えるというのも画期的かもしれない。



ウーファーは15インチ(38cm)。コルゲーションの採用など、極めて高い剛性を誇り、最低音域までがっちりとグリップする性能を備えている


低域のリニアリティを大きく向上させた三角形のバスレフダクト


デザイン上で特徴的なのは、前面バッフル中央左右に設けられた2つのバスレフポートだ。一般的な丸型でなくこの形状としたのは、風切りノイズの低減や放出されるエネルギーのリニアリティなどを考慮した結果で、高調波歪みの低減も果たした。


さらに中高域ユニット「MDC(ミニマム・ディフラクション・コアキシャル)ドライバー」に備わった大型指向性ウェーブガイドの働きによって、 この開口部は中高域の放射特性に対して不可視化されるという。 スタジオモニターの場合は壁埋め込みも考慮せねばならず、背面ポートは使いづらい。そのため前面に設けられるケースが多いわけだ。また、バッフルボードと一体成型になっているのは、メンテナンス性からと思われる。



ジェネレックのスタジオモニターで初めて三角形のバスレフダクトをフロントに搭載している点にも注目。この新設計のポートデザインにより、高いリニアリティを維持しながら大出力時でも歪まない、強靭な低域再生を可能とする


驚異的な静寂を実現する専用アンプモジュール「RAM-L2」


 アクティブ型の8380Aの専用アンプは、各ドライバー個別に設けられている。ウーファーとミッドレンジは共にクラスD方式で、 前者が500W、後者が250Wだ。トゥイーター用は200Wだが、こちらは試聴結果等からABクラス方式が採用された。


モジュール化された同アンプは、 スピーカー本体の背面に組み込まれており、デタッチャブル設計のため取り外しが可能で、ラックマウント式での設置にも対応している。


電源は100〜240V、 50/60Hz に対応したユニバーサル電圧仕様で、ファンレス設計だ。取り外せると言ってもアンプは専用となるため、その場合はスピコンケーブルで接続する。




新たに設計されたファンレスのアンプ・モジュール「RAM-L2」をスピーカー背面に搭載。ウーファー用に500W、ミッドレンジ用に250WのクラスDアンプを、トゥイーター用には200WのクラスABアンプを搭載しながら、自己生成ノイズは0dBで、非常に静粛性の高い動作を実現しているという 



入力端子は3pin XLR(アナログ)を1系統、AES/EBS(デジタル)を1系統、出力端子はAES/EBUを備えている。アンプは取り外してラックなどに設置することも可能



3Dホログラムのような 広々とした音場が展開


試聴は東京・赤坂のGenelecエクスペリエンス・センター Tokyoにて行った。


本機は超低雑音特性(0dB・SPL)を誇らしく公表しているが、 確かにボリュームをマックスにしてもスピーカーからヒスノイズらしきものは一切聴こえない。驚くべき超低自己生成ノイズ性能だ。


再生音の第一印象は、3つのドライバーユニットの見事なつながりの良さだ。全帯域に渡ってシームレスなつながりに感じる。ヴォーカルの克明な音像定位も素晴らしいが、楽器の質感もたいへん良好で、アコースティック楽器の響きの自然さ、エレクトリック楽器の立ち上がり/立ち下がりの鋭さは天晴れという他ない。


クリスチャン・マクブライドのビッグバンド演奏の新譜から、ホセ・ジェイムスが歌う『モーニン』 を聴いたが、ホセならではの粋な色気の声がリアルに浮かび上がった。


ビッグバンドの楽器配置のレイヤー再現も見通し良くたいへん実体的で、左チャンネル寄りに定位するトロンボーンやトランペットのソロの明瞭なトーンにもいたくシビれた次第。


アイルランドの歌姫ビョークの 最新ライヴ『CORNUCOPIA』では、精密にコントロールされた8380Aの優れた位相特性の成果であろう、ライヴならではの臨場感と立体感が素晴らしかった。


鳥の囀りや虫の声といったエフェクトが、8380A×2本の再生にも関わらず、あたかも3D的なホログラムを観賞しているような広々とした音場感に感じられたのである。


また38cmウーファーの巧みな制御もあって、重低音がクイックなレスポンスにて軽々と繰り出される様もたいへん印象的であった。


映画『雪風』のオリジナルサウンドトラックでは、怒涛のような重低音に押し潰されそうな感覚を味わった。それでも8380Aは 楽器の実体感をまったく崩すことなく、重厚なオーケストラサウンドを難なく繰り広げた。


冒頭記したように、8380Aは日本の住宅事情にも馴染みやすいサイズであるし、38cmウーファーというマニア心をくすぐる仕様もあって、話題を集めそうな予感がする。


しかもアンプ込みのアクティブ型でこの価格なのだから、組み合わせるパワーアンプの選択に悩まされることもない。


私が導入した8381Aは、サ イズもかなり大きくなってしまうため設置へのハードルは高い部分はあると思うが、オーディオを愛好する人にとって、本スピーカーは現実的な視野に入るジェネレックとなろう。ぜひ多くのオーディオファイルにこの音を聴いてほしいところだ。



試聴はジェネレック・ジャパンの「エクスペリエンス・センター Tokyo」のステレオ・ルーム(約12畳)で行った


Genelecエクスペリエンス・センターTokyoで各種スピーカーを試聴可能


今回ご紹介した8380Aや、小原氏が導入した8381AをはじめとしたGenelecのスピーカーは、東京・赤坂にあるGenelecエクスペリエンス・センターTokyoで試聴可能。予約をすれば整えられた環境でじっくりとそのポテンシャルを体感することができる。ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。(編集部)




※本記事は『季刊・オーディオアクセサリー 201号』からの転載です。

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