小原由夫氏がジェネレック「8381A」を導入した理由。「圧倒的なリアリティ、なんという鮮烈さ!」
アクティブスピーカーの雄、GENELEC(ジェネレック)の技術の集大成といえるフラグシップモデル「8381A」が2024年秋に登場した。
8381Aを試聴したオーディオ評論家の小原由夫氏は、静寂から立ち上がる瞬発力の凄まじさに魅せられ、自宅への導入を決意。数多くのスピーカーを愛用してきた小原氏がなぜ8381Aを選んだのか。その理由をご紹介しよう。
ジェネレック8381Aが日を追うごとに私の心を侵食
この仕事に就いて、2026年で35年になる。その間愛用してきたスピーカーを古い順に列記すると、KEF 105/3S、エレクトロボイスTS9040D-LX、PMC MB1、TAD Reference Oneの4機種。
その中で最も長く使ったのがTADで、現在の住まいを建てた翌々年の2008年3月に導入したから、都合17年間使ってきたことになる。
だが、年始早々、TADとお別れした。別段、音が気に入らなくなったわけではない。むしろここしばらくは、惚れ惚れするような美声を披露してくれていた。
しかし、期せずして出会ったジェネレック8381Aが、日を追うごとに私の心をジワジワ侵食してきたのだった。やがてそれは、TADへの情愛を断ち切るほど強靭になっていった。
静謐な中の超絶S/Nとトラジェントが半端ない
出会ったのは一昨年の2024年秋、「オーディオアクセサリー」誌の試聴レビューの仕事で、東京・池尻大橋のスタジオ、prime sound studio formに出向いた際だ。
ミキシングコンソールの奥にそれはそびえ立つように鎮座していた。傍には片チャンネル当たり2台の外付けパワーアンプが合計4台積まれていた。スピーカーもアンプも真っ黒の無骨な仕上げ、飾りっ気は皆無だ。
対応してくれたジェネレックジャパンのスタッフにお願いし、異ジャンルの聴き慣れた数曲のプレイリストを作っておもむろに試聴を始めた。
ところがものの5分と経たずに私は金縛りにあったように固まってしまったのだった。
なんという鮮烈さ! なんという立ち上がりの速さ、なんという突進力の凄まじさ!
5ウェイ9スピーカーという複雑な構成からは想像できないまとまりのよさは、ピンポイントの音像定位とそのフォルムの生々しさとなって眼前に屹立、しかも生き生きとしたその表情が手に取るように分かる。
凄まじいまでのリアリティと、圧倒的にヴィヴィッドな鮮度。パンッと勢いよくそれは現れ、スッと一瞬のうちに消えていく。静謐な中の超絶S/Nとトランジェントが半端ない。
その時は大いに感動したけれど、しかしその後に尾を引いて思いが募るとは正直まったく想像しなかった。日を追うにつれ、それは目の上のタンコブとなってきたのだ。
前述したように、私は別段TADに代わるスピーカーを探していたわけではない。事実、飽きてはおらず、むしろ今日までべったり惚れ込んで愛でてきた。
しかし私も今年で62歳。今もし事を起こさなかったら、もしかしたら筆を折るまでTADを使い続けるかもしれない。それでもいいのだけれど、チャレンジするなら心身共にまだ動ける今のうちかも。そう考えたら頭の中でいろんなことを計算し始めていた。
ジェネレックを迎え入れるということは、パワーアンプも不要ということ。TAD同様17年連れ添ったソウリューション「711」もお役ご免となる。
いやはや、これは一大事ではあるけれど、『思い立ったが吉日』が私のモットー。TADやソウリューションの算段は後回し。気付けば導入に向けた相談を赤坂のジェネレックジャパンと取り始めていたのだった。
あつらえたかのようにアンプもピッタリ納まった
発注から拙宅に届くまでのプロセスや、TAD&ソウリューションの顛末はここでは中略ということで、はるばる北欧フィンランドから約4ヵ月の船旅を経て横浜港に到着したのが、26年1月2日。
そこから入管手続きやらジェネレックジャパンの検品やらを無事に終え、大きな木箱を積んだ2トントラックが拙宅に横付けされたのが1月23日。
8381Aの本体は、中高域ドライバーが収まった上部キャビネットと低域ドライバーが収まった下部キャビネットの2ピースで構成され、それぞれを駆動する専用のDクラスパワーアンプ片chあたり2台で1セットとなる。
それぞれはシリアルNoで管理され、出荷段階でキャリブレーションを実施してマッチドペアで梱包されるため、バラバラには組み合わせられない。
上部キャビネットの中央に収まるのは中高域用の同軸ドライバー(高域用はコンプレッション・ドライバー)で、127mmドーム型ミッドレンジがウェーブガイドの対角線上に4つ配されている。
この構成「QMS(Quad Midrange System)」によって同軸ドライバーと同じポイントソースでの中低域再生を実現している。その下の381mmウーファーは密閉構造で駆動される。
上部キャビネットの上半分は音響的にひとつの同軸ユニットになっている。中央にポイントソース理論を突き詰め、新たに自社工場で開発・設計した同軸ミッドレンジ/トゥイーター「MDC(Minimum Diffraction Coaxial)」1基を搭載。このMDCユニットを囲むように、4基のミッドレンジドライバーから成る「QMS(Quad Midrange System)」が配置されている。
下部キャビネットは、側面に381mmウーファーを背中合わせに搭載し、双方の反動を吸収し合う仕組みのバスレフ型。
上部ウーファーと同口径ながらストレートコーンでなく、こちらはコルゲーションタイプ(同心円状のリブがある)で、振動板自体の強度が高められているのがキーポイント。
上部ウーファーよりも低い帯域を受け持つことから、大音量時でも振動板がたわんだりしないように正確なピストニックモーションを狙った仕様となっているわけだ。
フロントL/C/Rのパワーアンプ合計6台を収めるため、以前は試聴位置後ろにあったJ1のオーディオラックを前方に移動、設置した。まるでこのためにあつらえたかのようにピッタリ納まっていて、絵面がきれい。ちなみにこれら6台の電源供給は200V。
今回アクティブスピーカーを入れたことでパワーアンプは不要となったが、ソウリューションのプリアンプ725は引き続き使い続ける。私にとってこれに代わるプリアンプは現在見当らない。
高域がほどけてきて耳当たりが良くなった
導入からほぼ2週間を経てこの原稿を書いているが、8381Aは日増しに馴染んできた。
スタジオモニターという性格から、民生用ほどにはエージングを必要としないのか(その性格上、導入直後からしっかりモニタリングできないといけない)、低音は凄まじい音圧を驚くほどクリアでハイスピードに繰り出す。ほどけてきたのは主に高域で、少しずつ耳当たりがよくなってきた。
自宅で仕事の日は、夕方の1時間強を音出しに当てているが、その底なしのポテンシャルが少しずつあからさまになってきており、まさに興奮覚めやらない日々だ。
(提供:ジェネレックジャパン)
※本記事は『季刊・オーディオアクセサリー 200号』からの転載です。

