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公開日 2025/05/26 06:30
いまニーズが高まっているHDMI搭載モデルを徹底比較

”マランツのアンプで始める” お薦めリビングオーディオ

土方久明

伝統的なデザインを受け継ぎながら、現代的な解釈により生み出された新世代マランツのラインナップ。その中でもとりわけ、HDMIを搭載した“リビングオーディオ”としても活躍する製品が充実している。今回は、そのHDMI搭載でネットワーク機能も備える4モデルを比較検証した。ぜひリビングに良い音をもたらしてほしい。




マランツのHDMI搭載ネットワークプリメインアンプのラインナップ。左上から時計回りに「STEREO 70s」「MODEL M1」「MODEL 40n」「MODEL 60n」。



ピュアオーディオファンにも“HDMI搭載モデル”のニーズが高まっている


2020年代に入り、ピュアオーディオ環境に加え、リビングスペースへのオーディオ機器の設置が一般化しつつある。こうした傾向の中で注目されているインターフェースが「HDMI」である。


ゲーム機のPlayStation 5や、Fire TV Stickなどのストリーミングデバイス、さらには家庭用テレビの多くに搭載されているARC(Audio Return Channel)対応HDMI端子は、映像と音声を一体化して扱える利便性を提供する。


従来であれば、この文脈でまず想起されるのはAVアンプであったが、現在は少し事情が異なる。2chステレオ再生に特化しつつHDMI端子を装備したステレオアンプの需要が高まり、市場でも明確な存在感を示している。そして、この分野の需要拡大を牽引しているのが、老舗ブランド「マランツ」だ。現在のマランツはHDMI端子を装備したモデルも多くラインナップすることで、2chユーザーにとっても選択肢が大きく広がっている状況なのだ。



では実際に、HDMI端子を搭載したステレオアンプの購入を検討する際、どのモデルを選ぶべきなのだろうか。単に価格帯だけで判断するのは実にもったいない。それぞれのモデルには、設計思想や機能的な特徴、音質の差異が存在しており、それを見極めることが重要だ。そこで今回は、HDMI端子を搭載する4機種を取り上げ、それぞれの機能性と音質傾向を比較・検証する。


まず、これら4モデルに共通しているのは、2chのステレオ再生の音質に手抜きがないこと。またネットワークオーディオ・プラットフォーム「HEOS」を搭載し、ハイレゾ音源のファイル再生から、Amazon MusicやQobuz、Spotifyなどのストリーミングサービスの再生、統合音楽ソリューション「Roon」の「Roon Ready」としての機能も有している。Bluetooth接続にも対応しており、スマートフォンとの親和性も高い。


そのうえで各モデルには、明確な機能差が存在する。例えば、HDMI端子の搭載数やARC対応の有無、筐体サイズ、アンプのクラス、出力パワー、そして何よりも、オーディオ回路の内容などが選択のポイントとなる。


本稿では、音質検証のソースとして2ch再生にはAmazon Music Unlimitedを用い、映像コンテンツはARC対応HDMI端子を備えたHisenseのテレビ「HJ55A8010K」を経由し、Netflixの映画作品および音楽ライヴ映像を視聴した。


音楽コンテンツに加えて映像コンテンツもピュアサウンド


「STEREO 70s」は、マランツが展開するHDMI端子搭載ステレオアンプの中で、手頃な価格帯に位置するモデルである。



ネットワークレシーバー「STEREO 70s」(143,000円・税込)


最大の特徴は、HDMI入力を6系統(うち3系統は8K対応)装備している点にある。これは上位モデルも含め、今回の比較対象の中で唯一の仕様であり、複数のHDMI対応ソース機器をアンプ側に直接接続できる点で大きなアドバンテージを持つ。



アンプ部はフルディスクリートで構成され、、マランツ独自の高速電流伝送モジュールも採用。定格出力は8Ω時に75W+75Wと十分な駆動力を確保している。



6入力/1出力のHDMI端子を装備。そのほか入力端子にRCA3系統、PHONO(MM)、LAN、光デジタル、同軸デジタル、USB Type-Aをそれぞれ1系統、出力端子は2.2chプリアウトを搭載する。





プリアンプはHDAM-SA2、パワーアンプはフルディスクリートを搭載。パワーアンプ回路に電源を供給するブロックコンデンサーには、専用のカスタムコンデンサーを採用する。


音質面においては、鮮度感の高いフレッシュな音で、ヴォーカルや楽器に適度な色彩と輪郭が付加される。アコースティック系の繊細な質感や、ハイエンドモデルが得意とする広大なダイナミクスには一歩譲るものの、明瞭なディテール描写と適度な低域の厚みは、映像コンテンツとの相性が非常に良好だ。Netflixで再生した『新幹線大爆破』では、爆発音や列車の走行音に圧倒的な臨場感が感じられる。



 


次に試聴した「MODEL M1」は、マランツが提案する新機軸のコンパクトなアンプであり、最大の特徴は、幅217mmというサイズ感にある。


ストリーミングプリメインアンプ「MODEL M1」(154,000円・税込)

eARC対応のHDMI入力を1系統搭載し、アンプ部には、4基のクラスDアンプ・モジュールをBTL構成(ブリッジ接続)で使い、100W+100W(8Ω)という高出力を確保。






入力端子にはHDMI(eARC/RCA)端子のほか、USB Type-A、RCA、光デジタルをそれぞれ1系統装備。出力端子にサブウーファーアウトも用意する。


22cm四方の筐体サイズに、4チャンネル分のクラスDアンプを内蔵。内部でBTL接続することで120W(4Ω)を実現している。生産は自社工場の「白河オーディオワークス」。

 

音質については、有機的な音調が印象的である。アデルのヴォーカルは繊細なニュアンスとともに瑞々しい質感をまとい、伴奏の楽器音も自然な空間表現で広がりを見せる。また、Netflixで視聴した『新幹線大爆破』では、脱線シーンの重量感や緊張感がリアルに描き出され、視覚と聴覚の一体感を強く感じることができた。


 


「MODEL 60n」は、マランツのラインアップの中でも、機能・構成ともにもっともスタンダードな立ち位置にあるフルサイズシャーシのステレオアンプである。



ネットワークプリメインアンプ「MODEL 60n」(242,000円・税込)


ARC対応のHDMI入力を1系統備え、電源部には大容量トロイダルトランスを採用し、プリアンプには可変ゲイン型、パワーアンプ部にはフルディスクリート構成の電流帰還型アンプを搭載するなど、上位機種の設計思想が惜しみなく投入されている。


 



リアパネルには、入力端子にRCA3系統、PHONO(MM)、HDMI(ARC)、LAN、光デジタル、同軸デジタル、USB Type-Aをそれぞれ1系統、出力端子は2.1chプリアウトを1系統装備する。


 



HDAM+HDAM-SA2 搭載可変ゲイン型プリアンプ、フルディスクリート電流帰還型パラレルプッシュプル・パワーアンプを採用。大容量のトロイダルトランスも搭載する。


音質は、まさに“緻密で力強い”の一語に尽きる。アデルのヴォーカルはシャープな定位感と豊かな質感を同時に備え、ハンス・ジマーのサウンドスケープでは、広大な音場における楽器配置の再現性が極めて高い。



 


そして、価格帯がさらに一段上がる「MODEL 40n」では、音質・構造両面において、ハイエンド機に匹敵する物量投入と音響設計がなされている。



ネットワークプリメインアンプ「MODEL 40n」(385,000円・税込)


同社のHDMI搭載モデル中、実質的に最上位に位置づけられる本機は、ARC対応のHDMI入力を1系統備えるとともに、アンプ部は完全なアナログ構成。電源部には大型トロイダルトランスを採用し、プリアンプおよびパワーアンプ回路にはフルディスクリート設計が施されている。



リアパネルには、入力端子にRCAが3系統、PHONO(MM)、HDMI(ARC)、LAN、光デジタル、同軸デジタル、パワーアンプダイレクト、USB Type-Aをそれぞれ1系統、出力端子はREC、サブウーファープリアウトをそれぞれ1系統装備する。



HDAM+HDAM-SA2 搭載可変ゲイン型プリアンプ、フルディスクリート電流帰還型パラレルプッシュプル・パワーアンプを採用するほか、クラス最大級のトロイダルトランスを搭載する。


試聴において特筆すべきは、ヴォーカルの質感の精緻さだ。さらに駆動力のバランスが高次元で成立している。藤井風のライブ映像では、ヴォーカルの生々しさが際立ち、ステージの空気感そのものが伝わってくるかのようだった。Netflixというロッシー音声が主流の配信でここまでの音が出せるのかと感心した次第だ。



 


まとめとしたい。「Stereo 70s」は、価格帯を大きく超えた充実した装備と明瞭な音質で、コストパフォーマンスが高い。音色的には映画やゲーム用途との親和性が高く、エンタメ中心のリビングユースに適した選択肢だ。


「MODEL M1」は、限られたスペースでも高品位な音を楽しみたいというニーズに応えるモデルであり、コンパクトさと音質を両立した唯一無二の存在。


「MODEL 60n」は、音質・機能・価格のバランスに優れた“優等生”的なポジションにあり、初めての本格アンプ購入を検討するユーザーにとって最も安心感のある選択肢となるだろう。


そして「MODEL 40n」は、映画やライブ映像といった映像ソースだけでなく、純粋なステレオ音楽再生において極めて高い表現力を発揮するモデルである。



本記事は『季刊・Audio Accessory vol.197』からの転載です

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