PR 公開日 2025/12/28 07:00

ダイナミックオーディオ5555の川又利明さんが語る、B&W「801 D4」“アビーロードエディション”の特別な音

ローズカラーのショルダーとヴィンテージ・ウォルナットの仕上げ
筑井真奈
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イギリスの名門音楽スタジオとのコラボが実現

英国名門スピーカーブランドにして、スタジオモニターとしても世界的に信頼を得るBowers&Wilikins。この夏、同社のトップラインである「801 D4」と、イギリスの名門音楽スタジオ「アビーロードスタジオ」とのスペシャルコラボレーションモデル「801 Abbey Road Limited Edition」が発表され、世界中で大いに話題を呼んだ。

Bowers&Wilkinsとイギリス・アビーロードスタジオとのコラボモデル「801 Abbey Road Limited Edition」(10,120,000円・ペア/税込)

全世界140組限定、日本国内も15セットのみという貴重なスピーカー。今年7月の上海、8月の香港のオーディオショウでもこのアビーロードエディションは大いに話題を集めており、世界的な熱狂を感じさせてくれた。

8月に開催された香港オーディオショウでも「801 Abbey Road Limited Edition」は大々的にフィーチャーされていた

その音質に惚れ込んだのが、秋葉原のオーディオ専門店・ダイナミックオーディオ5555 ハイエンド・オーディオ・ラボラトリーIの店長・川又利明さんである。

ダイナミックオーディオ5555の7Fフロアを担当する川又利明さん

アビーロードエディションは、11月1日と2日に開催された「マラソン試聴会」にても披露され、その“特別な”サウンドには多くの来場者が耳を奪われた。B&WのスピーカーはPHILE WEBの試聴でも普段からリファレンスとして活用されており、筆者にとってもいわば「聴き慣れた」スピーカーである。だが、川又さんの語りと共に奏でられるその音は、これまで聴いたどのB&Wの音とも違う新鮮さに溢れていた。

ダイナミックオーディオが主催する「マラソン試聴会」にも「801 Abbey Road Limited Edition」が登場していた

B&Wのトップディーラーとして市場を牽引

B&Wの「アビーロードエディション」は何が特別なのか。「オリジナルノーチラス」の国内展開の立役者としても知られる川又さんに、この「アビーロードエディション」の魅力、そしてB&Wとの深い関わりについて語ってもらった。

川又さんフロアに設定された「801 Abbey Road Limited Edition」

「私がB&Wとのご縁を得ることになったのは1993年、いまから30年以上も前のことです。当時ステレオサウンド誌の表紙を飾っていた(オリジナル)ノーチラスの写真をみて衝撃を受けたことが最初の出会いでした」と川又さんは振り返る。独特の渦巻き形状、背後に細く長く伸びたノーチラスチューブ、4chのマルチアンプを必要とする構成など、常識を覆す製品の登場に、川又さんは新しい時代のスピーカーの可能性を感じた。

その当時はまだ国内で購入することはできなかったが、1995年にB&Wは自社でチャンネルデバイダーの提供を開始、ノーチラスの正式展開をスタートした。その後の大躍進は語るに及ばず。B&Wは新たな時代のハイエンドスピーカーとしての地位を確かなものとしていった。

そして川又さんもまた、B&W製品のトップディーラーのひとりとして日本市場を牽引してきた。

さて、最新の「アビーロードエディション」である。いうまでもないが、その背景にはアビーロードスタジオにてB&Wのスピーカーがスタジオモニターとして長く活用されてきた、という歴史を踏まえて誕生したものである。

改めて現在のB&Wのフラグシップラインを振り返ると、2021年に「801 D4」が登場し、800シリーズが全面刷新。2023年には「801 D4 Signature」が登場。ショルダープレートの素材とトゥイーターのメッシュグリルが再検討され、カルフォルニア・バール・グロス(茶色)とミッドナイト・ブルーの(青色)の2色を展開。通常バージョンとは異なり、丹念に塗り重ねられたグロス仕上げとなっている。

現在展開中のB&W「801 D4」のラインナップ

そしてこの夏に発表された「アビーロードエディション」。こちらは「801 D4 Signature」をベースとして仕上げられており、上品なローズカラーのショルダーパッドがまずは目を惹く。

筐体の仕上げはこちらはグロスではなく、木目の質感を活かしたビンテージ・ウォールナットと名付けられている。ペア約1000万円と、800シリーズとして初めて1,000万円の大台を突破した。

ローズピンクのショルダーパッドとヴィンテージ・ウォルナットの仕上げが特徴

標準の801 D4との違いは、ショルダーパッドの素材とトゥイーターのグリルメッシュの角度。つまり「801 D4 Signature」にて投入された技術はそのまま採用されているが、キャビネットの仕上げがグロスではなく突板仕上げになっている、というのが大きな違いになる。

アビーロードエディションと通常モデルの「801 D4 Signature」を徹底比較

「輸入元の解説によると、ユニットやクロスオーバーネットワークは共通で、電気的な特性は同じ。それでいて、D4 Signatureよりペアで約150万円も高い。ですから、私としてはその違いをお客様にきちんと説明できなければ、自信を持って売ることはできないんです」。そのため川又さんは、D4 Signatureとアビーロードエディションをこのダイナミックオーディオ5555の7Fフロアに揃え、さまざまに比較研究を行った。

そして、「アビーロードエディションの方がD4 Signatureよりも音が良い」と結論づけるに至った。

川又さんは苦笑いする。「セールスのことを考えれば、こう断言してしまうのは、あまり賢いことではないかもしれません。アビーロードエディションは日本でも15台限定で、ほとんど予約で埋まってしまい、残りはほんのわずかです。D4 Signatureはレギュラーモデルとして今後も展開しますし、すでに私から買っていただいたお客様も多くいらっしゃいます。アビーロードの音がD4 Signatureよりも良い、と語ることは、営業マンとしてどうなのだろう、と思わないではありません。ですが、私にはそう語りたいだけの理由があるのです」

音の違いの理由として、川又さんは“仕上げ”の重要性を強調する。801 D4 Signatureは先述の通り幾層にも塗り重ねられたグロス仕上げ、一方のアビーロードエディションは木目の質感を生かした突板仕上げ。だが川又さんは、単に「突板仕上げだから良い」と言いたいわけではない。

「すこし私の思い出話をさせてください。オリジナルノーチラスが世界的に成功したのち、2001年にSignature 800というモデルが登場しました。当時の価格で360万円。いまから考えると決して高くはありませんが、当時としてはハイエンドの価格帯のスピーカーです。同時に、Nautilus 800というこちらは300万円のモデルも発売されました。Signatureはハイグロス仕上げ、Nautilus 800は突板仕上げ。ユニットやクロスオーバーも共通。この時は秋葉原にダイナミックオーディオ5555がオープンしていましたから、この場所でこれらの比較試聴も行いました」

そしてその時は、ハイグロス仕上げの「Signature 800のほうが音が良い」と川又さんは結論付けた。

それでは川又さんの考える「音の良さ」はどこにあるのだろうか? 川又さんは、「地図の等高線をイメージしてください」と言葉を繋ぐ。

「前方にある左右2台のスピーカーに、等高線が描かれた地図を重ね合わせたところをイメージしてください。例えば富士山のようになだらかな山ならば等高線の間隔は広く、音像もゆったりとした存在感をもって響きが拡散します。一方、アルプスの稜線のような急峻な山ならば等高線の間隔は狭くなり、楽音の核に対して密集していくイメージです。Signature 800のほうが等高線が狭く、ピシリと締まった音像が実現します。一方のNautilus 800のほうが緩やかでふわりとした響きを重視した印象でした」。そして川又さんはこの時、等高線の急峻に迫るSignature 800に軍配をあげた。

そんな過去の経験から、今回のアビーロードエディション(突板仕上げ)のほうがふわりとした印象になるのではないか…と考えていたそうだ。だが、実際に比較するとアビーロードのほうがより急峻な姿勢を見せる。意外な結果に川又さん自身も非常に驚いたという。

「理由は、わかりません。B&Wのエンジニアに言わせれば、電気的な特性は変わらない、すなわち音も変わらない、と言うことでしょう。ですが、この環境で聴き比べて、やはり違いがある、と言わざるを得ません」と川又さんは言葉を強める。

専門店からの深い信頼がB&Wの音作りを支える

フロアに設置された「アビーロードエディション」を聴かせてもらう。送り出しはエソテリックのGrandiosoシリーズ。川又さんがいつも試聴に使っているWarren Bernhardt「Hands On」、精緻で輪郭感のはっきりしたサウンドである。楽器の位置関係も明瞭で、楽曲の意図、あるいはエンジニアの狙いというものまで明晰に見えてくる。なるほど急峻な等高線というのも納得だ。

川又さんが普段比較試聴に活用しているWarren Bernhardtの「Hands On」(2025年12月時点で配信サービスでは試聴できない)

D4 Signatureとの比較は叶わなかったが、隣に用意されていたHiro Acousticsのスピーカーとも聴き比べてみた。より超越的で神々しささえ感じるHiro Acousticに対し、B&Wはどこかやはり人間臭い。スタジオモニターとして、大地を踏み締めるような力強さを感じさせてくれる。

川又さんが長年推薦している国産ブランド・Hiro Acousticsのスピーカーとも比較

B&Wについての熱い語りを聞きながら、川又さんを駆動する「専門店としてのプロフェッショナリズム」について思いを馳せた。

オーディオで音が変わる理由については、いまだ謎が多い。かつては「デジタルで音が変わるはずない」「クロックで音が変わるはずない」「LANケーブルで」「ルーターで」…さまざまな「あり得ない」が言われ続けてきた。

だが、「変わるものは変わる」、そして「良いものは良い」と、確かな環境と確信の元に川又さんは検証を続けてきた。そしていまでは、デジタルやネットワークにおける「音が変わる要素」についても多くのことが明らかになってきた。

dCSの「Varese」とCHプレシジョンの10シリーズの比較試聴など、スーパーハイエンドシステムにも厳しい視線を向けて検証を行う

スピーカーについても同じである。「何が音に影響するのか?」、残念ながら現代の物理学で全てが明らかになっているわけではない。「707 Prestige Edition」と「707 S3」との実質的な違いは仕上げとターミナルの素材にあるが、それらが決定的な音質差として表れることを体験された方も少なくないだろう。

さまざまなスピーカーを聴き比べ、時には開発陣やエンジニアが気づいていないことも指摘し、「良い音」の探求をさらに高みへと導いていく。それがオーディオ専門店の役割でもある。その指摘が、長いスパンでみたときのメーカーの製品開発に活かされたことも少なくないだろう。

通常こういった限定モデルは、予約販売だけで終了してしまう。オーディオショップに展示導入されることは極めて稀なことだ。だが、それを単なる色違いと位置付けず、「良い音のヒントはないか」と見極め続ける。その姿勢の根底に流れるオーディオへの深いリスペクトを、川又さんのサウンドからは感じられた。

「801 Abbey Road Limited Edition」は、川又さんのフロアに“しばらく”設置されているそうだ。スタジオ関係者からの信頼に加えて、オーディオ専門店というプロフェッショナルからの深い信頼が、進化し続けるB&Wの音を支えているのだと、改めて理解できた。

(提供:ディーアンドエムホールディングス)

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