公開日 2025/04/25 07:00

デノンはディスクを諦めない。CD/レコード派こそ最上位「3000NEシリーズ」を手にしてほしい理由

PMA-3000NE、DCD-3000NE、DP-3000NEを一斉試聴

アナログ録音の“近年のデジタルでは到達しえない領域”をストレートに再現

続いて、DP-3000NEによるアナログレコードの試聴である。カートリッジは同じデノン製のロングセラーMCカートリッジ「DL-103R」を用いた。まず聴くのはSHM仕様SACDと同じ録音のカルロス・クライバー指揮/ウィーン・フィル『ベートーベン:交響曲第7番』(ユニバーサル:00289 486 3844)である。

デノンの伝統的なスタティックバランスS字型トーンアームを採用。2011年の震災で資料の大半が失われていたものの、OBエンジニアへのヒアリングなどを経て、新たに設計図を書き起こしたという。

 

本盤はグラモフォン創立125周年記念の復刻プロジェクトの一つ、“オリジナル・ソース・シリーズ” 第1弾として発売されたタイトルだ。本楽曲の録音は1975年11月から1976年1月の間で行われたが、1970年よりグラモフォンでは4chサラウンド向けの録音を開始しており、本楽曲における収録当時のもっとも世代が古いアナログ・マスターテープは4chのマルチトラック仕様であった。

SHM仕様SACDのみならず、当時発売されたLPや後年販売されるCD、リマスターCDに至るまで、この4chマスターをステレオ2chにミックスダウンしたものをずっと用いていたのだが、この復刻LPでは大元の4chマスターまで遡り、このプロジェクト用に開発したミキサーを経て、直接カッティングマシンに信号を入力する、ピュアアナログ環境で製作されたものとなる。

アナログ/デジタル環境の差だけでなく、マスターテープの世代の違いもあるため、SHM仕様SACDとの純粋な比較は難しいが、DP-3000NEでこの盤はどのように再生されるのか。

音が出た瞬間、その鮮度、音場の透明度の高さに驚く。SHM仕様SACDでも音場のS/Nの良さを感じたが、このLPは別のテイクではないかと思えるほど、音の純度、ステージの緊迫した空気感まで包み隠すことなくストレートに聴こえてくる。

近年のデジタルテクノロジーでは到達しえない領域がそこにはあり、何度も使い古され、角の取れたマイルドな音質傾向のミックスダウンマスターとの違いも実感。改めてアナログテープの持つ凄味、それをレコードとして手軽に味わえる喜びを強く感じた次第だ。

管弦楽器の潤い良い旋律は精緻なハーモニーを聴かせるが、どこか緊張が漂うやや硬めのタッチである。個々のパートを粒立ち良く明瞭に描いており、キレ良くコントロールされたオーケストラのリアルな響きを味わうことができた。音場の空気感、鮮やかな空間性はアナログテープから直接カッティングされたレコードならではのものであり、DP-3000NEはその情報をロスなく引き出してくれる印象である。

次に聴くのはオスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』(アナログ・プロダクションズ:AVRJ8606-45/45回転盤)の「ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー」だ。本盤はオリジナルマスターからジョージ・マリノがリマスターした2011年発売の45回転盤2枚組だが、この後にリマスターされたと思われる96kHz/24bitハイレゾ/配信版の「ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー」は、イントロ部分にテープの劣化による音揺れが確認できる。そのため、このLPは最良の形でリマスターされたものの一つといえるだろう。

冒頭のピアノやトライアングルの透明感も高く、ウッドベースの弦の厚み、胴鳴りのコントロール良い弾力と音伸びを絶妙なバランスで両立。ピアノそのものの響きも軽やかさと倍音の豊かさが感じられ、重心の低さも相まって存在感の高い音像となっている。

涼やかなアタックは抑揚良く、躍動感に溢れるものだ。適度な太さを持つドラムセットの安定感、粒立ちの細やかなスネアブラシや澄み切ったシンバルの響きも心地よい。ウッドベースの力強さ、リッチで艶やかな音運びも滑らかである。

カートリッジはデノンのMC型「DL-103R」を使用。

 

続く『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』(F.I.X.RECORDS:FIJA-007/008)より「届かない恋」「夢であるように」を聴いたが、こちらもSACDとは違う、LP用のマスタリングをアナログマスターから施したうえ、カッティングされたものだ。

リズム隊の密度良く太さのあるエネルギッシュな描写で、ホーンセクションやシンバルの響きは厚みとキレを両立した低重心な表現となる。ピアノのアタックも重厚感があり、余韻の涼やかさ、爽やかな倍音の響きも上質なものだ。ボーカルはボトムの密度、重心の低さがSACDよりも増し、口元の艶や潤いもより流麗で生々しい息遣いを感じられる。安定感の高い、濃密なサウンドだ。

最後にTOTO『I’LL BE OVER YOU』(CBS:650043-6/12インチ・シングル/英国盤)を聴く。やや硬質だが輪郭のキレの良さ、口元の鮮度感、クールさが際立つボーカルのきめ細やかさに圧倒される。シンセサイザーの透明度とキレの良さ、澄み渡るリヴァーブの階調性の高さも申し分ない。

ベースはゆったりとして厚みがあり、高域との質感のバランスが整う。恐ろしく正確なハイハットのリズムも硬くなりすぎず、柔らかなトーンで表現。ギターソロは粘りのある音色で、ピッキングのニュアンスも奥行きよく描いている。


3000NEシリーズの3モデルともサウンドマスター山内慎一氏がチューニングを手掛けており、サウンドフィロソフィーである『Vivid&Spacious』に基づき、ディスクに記録された音楽の持つ情報量、空間性を正確に引き出しつつ、彩り良く、熱量のこもったサウンドとして引き出してくれている。現行フラグシップとしての圧倒的な表現力の高さ、余裕のある描写性は価格を超えた水準のものだ。

これから音楽再生はストリーミングが主流となっていくと思うが、そうした配信、データ化されていない貴重な音源がこれまでに残された数々のディスクとして存在しており、その中にはハイレゾ音源を超える音質の良いものも多い。ストリーミングでは突如好きな楽曲が聴けなくなる事態も起こりうる。できることならストリーミングとディスク再生、それぞれを両立した環境を構築しておきたい。

3000NEシリーズはディスク再生を諦めたくない、優れた音源を手元に残しておきたいリスナーにこそ手にしてほしいHi-Fiコンポーネントだ。


(協力:ディーアンドエムホールディングス)

 

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