公開日 2014/10/22 12:11

ハイレゾ・ウォークマン 新旧ガチンコ対決!新「Aシリーズ」は「F880」を超えたか?

<山本敦のAV進化論 第28回>開発者訪問&試聴レビュー

基板に関わる高音質化のポイントは2つある。一つは基板内部の銅薄膜の層を、従来からおよそ倍の厚みにすることで安定した電源供給を実現している点。ポータブルヘッドホンアンプ「PHA-2」に活かされた技術手法をベースに、これまでのウォークマンで手を付けてこなかった領域にメスを入れた。「全8層で構成される基板のトータルの厚みを変えずに、銅薄膜だけを厚く設計することが特に難しかった」と上村氏は振り返る。

左がSシリーズ、右がAシリーズの基板

もう一つのポイントが、部材を固定するハンダの素材。「ESシリーズ」のハイエンドオーディオの一部製品で使われている、ソニーのオーディオ機器設計者“かないまる”こと金井隆氏の監修による、純度99.99%以上の超高純度“すず”ハンダがウォークマンに初めて使われた。「これまでは、落下など外部からの衝撃も想定されるポータブルオーディオ機器に使用するには、強度面での不安があるとされていたため、手を付けてこなかった領域です。実際、ZX1やF880にも使っていません。ハンダの環境・強度試験を慎重に行いながら、本体内部にアルミダイキャストフレームを使って剛性が高められることができるようになったため、採用に踏み切りました」(上村氏)。

右のAシリーズの基板に使われているハンダの方がより輝きの純度が高いことが写真からお分かりいただけるだろうか

左がSシリーズ、右がAシリーズの筐体内に使われているフレーム。A10はアルミダイキャストフレームにより強度を高められたことから、引いては超高純度すずを使ったハンダが採用可能になった

内蔵バッテリーにもより太く低抵抗なケーブルを使い、S-Master HXの電源はセラミックコンデンサーからPOSCAPに変えて内部の電力供給を強化した。「ケーブルあまり太くしても音のバランスが崩れてしまうので、何度も試聴を繰り返してバランスを図りながら太さを決めました」と上村氏。バッテリー自体も大容量化を図り、ハイレゾ再生で約30時間の連続駆動を実現。F880の約17時間と比べて倍近くに伸びている。バッテリーの長時間性能についてはユーザーからの要望が特に強かったという。

右側がAシリーズの内蔵バッテリー。より太く低抵抗なケーブルを使って音質アップを図った

ざっくりと音質傾向について紹介すると、Aシリーズは非常にニュートラルでバランスが良く、特に中高域の明瞭度が高いハイレゾ対応プレーヤーだ。オーケストラの立体的な表現力や、J-POP作品の凝ったアレンジの細かい音もよく拾うので、視野がとても広く取れる。低域は量感たっぷりのサウンドをイメージしていたのだが意外にもそうではなく、中高域とバランスが取れたクリアな低域が特徴だ。F880とハイレゾ再生の音を聴き比べてみると、とても「オトナなサウンド」に変化を遂げている。本稿の後半では、F880シリーズとの比較や、ポタアン新モデル「PHA-3」と組み合わせた音質チェックも報告したい。


■Aシリーズにマストな機能「DSEE HX」を搭載

ハイレゾはWAV/FLAC/AIFF/ALAC形式の最大192kHz/24bitまでのPCM系ファイルの再生をサポートする。DSDファイルの再生は行えず、ZX1やF880が対応しているDSD 2.8MHzのPCM変換再生にも対応していない。

次ページ圧縮音源等もハイレゾ相当にする「DSEE HX」の効果

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