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<山本敦のAV進化論 第28回>開発者訪問&試聴レビュー

ハイレゾ・ウォークマン 新旧ガチンコ対決!新「Aシリーズ」は「F880」を超えたか?

2014/10/22 山本 敦
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・TOTO「35周年アニヴァーサリー・ツアー〜ライブ・イン・ポーランド2013〜」/「Stop Loving You」(48kHz/24bit・FLAC)

AシリーズとF880シリーズの音質を聴き比べてみた

Aシリーズはライブ会場の環境音がふわっとリアルに広がる中、バンドメンバーの楽器の音色がキレよく突き抜けていく。キーボードやエレキの高域はシャープでありながら、余計な付帯音が少なくしなやかさを兼ね備えている。ドラムスやベースのリズムはとても軽やかだ。もう少し厚みがあれば演奏全体がどっしりとしてくるようにも思うが、ボリュームはきちんとあって、タイトで無駄がないと形容するのが適切かもしれない。

曲終盤にサイモン・フィリップスが展開する、超絶技巧によるハンパない音数のドラムソロも楽器の音色がそれぞれよく見える。バスドラはしっかりとハコ鳴りしていて、シンバルの高域の余韻も美しく空間に散華していく。キレイにすっきりとしているぶん、全体的に低域の迫力がもう少し欲しいところだ。エレキギターとの掛け合いは音にスピード感が溢れていてスリリング。

同じ曲をF880で聴くと、中低域がより太く、エレキやベース、シンセサイザーのミッドレンジがより充実してくる。音の分厚さが増す分だけ、空間の透明度はAシリーズよりも下がる印象。横のレンジ感もAより若干狭めだ。Aを聴いた後では、ドラムスは低域の解像感やアタックのスピード感がもう少し欲しくなってくるが、低域の量感はF880の方がどっしりとしているように感じられる所もある。歌もののロック/ポップス系の楽曲では、F880の明るく煌びやかなハイトーンが目立ってくる。本機の持ち味としてユーザーの好みにハマればこちらも魅力的だ。

・「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、フランク:交響的変奏曲 アレクシス・ワイセンベルク/ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリンフィル」から、『第1楽章:モデラート』(96kHz/24bit・WAV)

Aシリーズではピアノの脚力が鋭く、音の滑らかさが好印象。雄大な旋律を奏でるオーケストラの中、すっとピアノの鮮やかな音色がメロディを歌い上げる。オーケストラの演奏は立体感に溢れていて、厚みも十分にある。金管楽器の高域がクリアでとてもナチュラルな音色。木管楽器のソロも非常に繊細で緊張感がある。S/Nが良く、情報量がたっぷりと引き出されるので、演奏者のテクニックに肉迫するような感覚が楽しい。

プレーヤーをF880に変えると、ダイナミックレンジがAに比べてやや狭く感じられてしまう。低域が力んでいるような印象で、Aよりもスピード感が落ちる。中高域のディティールの表現力についてもAに軍配があがるように思う。

・Daft Punk Random Access Memories/Doin' It Right (feat. Panda Bear) (88.2kHz/24bit FLAC)

Aシリーズでは低域は緻密さと彫りの深さに耳を奪われる。量感は控えめだが、その分無駄な膨張感が無く、小さめだが力強いアタック感だ。ボコーダーやシンセサイザー、ボーカルと重なり合うパートでも分解能が良く、各パートの旋律が明瞭に聞こえてくる。

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