【創立50周年記念モデルレビュー(2) 】ウッドハウジングヘッドホンの新旗艦モデル・オーディオテクニカ「ATH-W3000ANV」を聴く

「ATH-W3000ANV」は、オーディオテクニカ創立50周年を記念した限定生産モデル。同社のお家芸ともいえるウッドハウジング密閉型ヘッドホンの11世代目にあたるモデルで、越前漆仕上げを施した高級感溢れる北海道産アサダ桜心材が目を惹く。

磁気回路にはパーメンジュールを用いた専用設計Φ53mmドライバーユニットを搭載。スーパーハイクラスOFC-7Nボビン巻きボイスコイルや、不要な微細振動を抑制する軽量・高剛性マグネシウムフレームのほか、両出し方式による左右独立アース線（4芯）構造のケーブルなど、各部に高音質化のための取り組みを行っている。

装着面では独自の3D方式ウイングサポートをはじめ、スペイン産ラムスキン・イヤーパッドを用いており、比較的重量のあるモデルであるが、長時間の装着でも快適で疲れにくい。Φ6.3mmの標準プラグは木製スリーブ仕様となっているが、創立50周年を記念するロゴがあしらわれ、限定生産品である漆塗りモデルの中でもさらに希少であることを表している。

仕様の上ではブラックチェリー材をハウジングに用いた「ATH-W1000X」をベースにした上位モデルという印象であるが、サウンドにおいては豊潤で瑞々しいハーモニーに満ちた響きを得られるものとなっている。

弦楽器などの中高域は特に艶やかで、上品な音色だ。クラシックの音場は奥行きがあり、管弦楽器のハーモニーはリッチに重なって、ローエンドも太く伸びやか。弦のタッチはハリ艶良い粒立ち豊かなトーンで、ティンパニの皮のアタックも鮮やかに描き出す。その胴鳴りはリッチに轟き、煌きに満ちたホールトーンに深い厚みを加えている。

ハイレゾ音源になるとS/Nが増し、細やかな抑揚も一層鮮明に浮き立ってくる。音像の質感は滑らかさが向上するが、特に木管系のリリースはふくよかさが豊かに感じられるようになった。

ジャズにおいては、太めの音像となるピアノの丁寧なアタック感、すっきりとした印象を受けるクリアな余韻感が心地よい耳あたりとなり、ウッドベースの弾力良い穏やかな胴鳴りの響きとスネアブラシの落ち着いた粒立ちがバランスよくまとまる。ホーンサウンドもしっとりとした余韻の音伸びを持っており、暖色系のアンビエント感が豊かな音楽性表現に寄与しているかのようだ。

ポピュラーのボーカルはボトムの厚みがあり、肉付きの良いリリースは優しげで落ち着きあるトーン。口元はハリ艶も良く、潤い感のある描写としてくれる。打ち込み系のリズムはほど良い弾力を残しながら、締まり良いグルーブ感を演出。ロックにおいては腰高でスマートなキザミを見せるディストーションギターが倍音効果によって一層厚みが増している。アナログライクなリズム隊の押し出しも適度に引き締まり、豊かな響きだけでなくスピード感も充分得られる。


【試聴ソース】

●クラシック
・レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団『ホルスト＜惑星＞』（ユニバーサル・グラモフォン：00289　477　5010）
●ジャズ
・オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』（ユニバーサル：UCCU-9407）
・『Pure2〜Ultimate Cool Japan Jazz〜』（F.I.X.：KIGA10）
●ポップス
・『Pure〜AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS』（F.I.X.：KIGA2）
・May’n　『If you…』（フライングドッグ：VTZL-24）
●ロック
・デイヴ・メニケッティ『MENIKETTI』（DREAM CATCHER：CRIDE35）
●ハイレゾ音源
・北村憲昭・指揮/スロバキア・フィル管弦楽団『ベートーベン：交響曲第6番』（NKB：NKB-401）ディスク2、176.4kHz/24bitファイル