KEF、“バーの形をしたHi-Fiシステム” を目指したブランド初のサウンドバー「XIO」

KEFは、ブランド初の5.1.2chサウンドバー「XIO（ジオ）」を発表。7月8日より予約受付、17日より順次発売する。価格はオープンだが、市場では税込330,000円前後での実売が想定される。カラーはシルバーグレー／スレートブラックの2色。

ブランド独自の同軸ドライバーユニット「Uni-Qドライバー」をサウンドバーの形状に合わせ再設計した上で搭載するなど、オーディオブランドとして長年培ってきた独自の高音質技術を惜しみなく投入。大型テレビの需要が増加傾向にある市場背景を受け、とくに55型以上の大型テレビに適したモデルとしてラインナップする。

ブランド初となるサウンドバーの開発は、ミッションとして掲げている「ハイフィデリティの民生化」の一貫となる挑戦という。本製品について同社担当者は、「オーディオブランドとして、柱はあくまでパッシブタイプのスピーカーシステムの開発ですが、シンプルなシステムが構築できるワイヤレススピーカーの展開にも2022年頃から数年をかけて取り組んできました。XIOは体験と提案性の幅を広げる新たな選択肢。サウンドバーの形状をしたHi-Fiシステムと説明するのがふさわしいKEFのテクノロジーを結集させたモデルです」と説明している。

サウンドシステムは5.1.2ch構成で、12基のドライバーユニットならびにクラスDアンプを搭載。フロント（LR）／センター／上向きスピーカー（LR）として6基の小型版Uni-Qドライバー「Uni-Q MX」、サラウンド（LR）として2基のフルレンジスピーカー、また低域用に4基の「P185ドライバー」を採用している。

Uni-QはKEFのハイエンドラインを含むほとんどすべてのスピーカーシステムに採用されているテクノロジーで、トゥイーターをベース／ミッドレンジコーンの音響中心部に配置することで、単一の点音源として機能させることができる。XIOに搭載されたUni-Q MXにおいても、音を広く均一に放射／拡散し、部屋のどこにいても正確で繊細なサウンドを体験できるとしている。

Uni-Q MXはおもに中高域の再生を担当。ドライバー口径は6×50mm（2インチ）。デカップラーを正確なクロスオーバーとして設計することで、トゥイータードームとウーファーコーンを分離。この設計によって、低域では振動板が自由に動いて音を放射、高域ではドームを分離し、音の精度を高めている。

低域用のP185ドライバーは、50×180mmと高アスペクト比のレーストラックデザインによって、薄型デザインと低音再生のパフォーマンスを両立。4基のドライバーを2基ずつ、フォースキャンセリング構成でそれぞれ背中合わせに配置することで、機械的振動を大幅に減少し、共振が少なく不要な歪みのないレスポンスを確保した。

さらにサブウーファー「KC62」や「KC92」で採用された独自の「P-Flex技術」も投入しており、日本の折り紙をヒントにしたプリーツ状エッジによって振動板の分割振動を減少。低音の伸びを強化するほか、歪みの低減を実現する。この構成によって、コンパクトなサイズながら約100mm（4インチ）ベースドライバーと同等のパフォーマンスを確保したとしている。

加えてP185ドライバーには、特許申請中の新技術「Velocity Control Technology（VECO）」も採用。VECOは歪みなどの余計な低音の発生を防いだり、コーンの動きの圧縮を最小限に抑制したりする検知／制御システム。ドライバーの内部に搭載したモーションセンサーとフィードバック機構によって、コーンの瞬時の速度を検出、アンプ内部の専用電子回路が検知した速度と理想速度を比較し、その差を最小限に抑制することで、より歪みの少ない正確な低音再生とパワーコンプレッションのほぼない出力を実現する。

アンプはトゥイーター／ミッドレンジに8基、ウーファーに4基のクラスDアンプを装備。最大出力は820Wとなる。

DSPアルゴリズムとして、独自の「Music Integrity Engine（MIE）」をベースに、映画や空間オーディオの再生を前提としたXIO専用のアルゴリズムを新開発。マルチチャンネル処理、バーチャライゼーション（仮想音場生成）、適応型設置機能などに特化した「Music Integrity Engine for CINEMA」を投入している。

Dolby Atmos／DTS:X／360 Reality Audioといった立体音響フォーマットに対応しているほか、モノラルおよびステレオによるコンテンツに対しては、高度なアップミキシング技術によって音場をインテリジェントに拡大、空間オーディオ化して再生を行う。後述のサウンドモードをDirectに切り替えた場合は、5.1chや2chのコンテンツをそのままの音声で出力するが、使用するスピーカーユニット数は増減しない。

とくに映像コンテンツの視聴へ向けて、ブランドで初めてコンテンツ別にEQプリセットを用意。アプリ「KEF Connect App」にてDefault／Music／Movie／Night／Dialogue／Directの6つのサウンドモードを選択できる。

たとえば「Default」は、KEFが独自に設計した映画も音楽も幅広く楽しめるバランスに優れたモード、「Movie」はダイナミックレンジを大きく広げて低域と高域を目立たせ、アクションシーンの迫力をアップさせるモード、「Dialogue」は背景ノイズを減少させつつ音声周波数を強化して人の声とセリフを際立たせるモード。このように、映像作品の再生に特化したプリセットにも力を入れている。

設置をサポートする機能として、部屋の環境に合わせてサウンドを最適化するキャリブレーション機能「Intelligent Placement Technology（IPT）」を装備。内蔵マイクを用いて壁や家具などサウンドバーの周囲にある物体を検知、設置環境の音響特性を解析し、その結果を元にMIEアルゴリズムがEQを調整することで、最適な音響出力を実現する。

設置方法は壁掛けのウォールモード、棚置きのシェルフモードに両対応。内蔵センサーによってどちらの状態で設置されているのかを検知し、設置のモードに応じて、ドライバーユニットに対してチャンネル割り当てを実行する。IPTとの組み合わせによって、どちらの設置モードであっても同等の音響パフォーマンスを発揮できるとしている。ちなみに東京・青山のブランドショップKEF Music Galleryでは、本製品をウォールモードで展示を予定しているとのことだ。

初期設定はKEF Connect Appから行い、画面表示に従ってセットアップを進めていけば自然とキャリブレーションまで実施可能。セットアップで特徴的な点として、サウンドバー本体が地面からどのくらいの高さにあるのかを入力する項目があり、これは設置位置が低いほど音がこもりがちになる現象を防ぎ、音の抜け感をケアするためだそうだ。

本体には入力端子としてHDMI 2.1（eARC）、光デジタル（TOSLINK）を備えるほか、RCAサブウーファー出力端子、USB Type-Cサービス端子、LAN端子なども装備する。

ワイヤレス機能として、Bluetooth 5.3ならびにWi-Fi（2.4GHz／5GHz／6GHz）をサポート。KEF Connect／AirPlay／Google Castなどのミラーリング機能のほか、Spotify／Tidal／Apple Music／Amazon Music／Qobuzなどのストリーミングサービスをサポートする。384kHz/24bitまでのハイレゾ音源再生にも対応する。

筐体は天面にアルミニウム製トッププレート、サイドに撥水性ファブリックを採用し、ミニマルで洗練された美しさと、剛性および耐久性を兼備するとしている。外形寸法は1210W×70H×165Dmm、質量は10.5kg。

本体には電源ケーブル（2m）、HDMIケーブル（2m）、リモコン、壁掛け用テンプレート、壁掛け用キット（プレート×2枚、ネジ2種×各4本）が付属する。消費電力（待機時）は400W（0.5W）。

別売レシーバーによりサブウーファーのワイヤレス接続も可能

XIOのシステムを拡張する別売アクセサリーとして、「KW2 RXレシーバー」（税込25,300円前後）も7月17日に発売。本レシーバーを同ブランドのサブウーファー「KC62」「KC92」「KF92」「KUBE」などに接続することで、XIOとのワイヤレス接続を実現する。

伝送は2.4GHz帯で行われ、48kHz/24bitまでの伝送に対応。見通し距離で最大15mの範囲内であれば、KW2 RXレシーバーを装着した複数のサブウーファーをXIOと接続することも可能だという。

レシーバーへの給電と信号伝送は1つの端子で完結させているため、レシーバーをサブウーファーに取り付けるだけでセットアップが完了。機器の追加や連携、キャリブレーションの再実行などはKEF Connect Appで操作できる。レシーバーには3.5mm AUX／光デジタル兼用端子が備わっており、同梱のケーブルを使用すれば他社製のサブウーファーに接続して使うことも可能。

同社では「とくに映画作品では、サブウーファーを拡張することで迫力が増すだけでなくサラウンドの量感がアップして、さらに没入感を高められます」と説明している。

本体にはオプティカルケーブル（1m）、USB Type-C電源ケーブル（1m）、3.5mm AUX - RCAケーブル（1m） 、専用ネジ×2本（KC92／KC62／Kube MIE／KF92用）、専用ネジ×1本（Kube 8b／10b／12b用）が同梱される。

このほか、今後XIOのファームウェア・アップデートにより、ワイヤレススピーカー“LSシリーズ” “LSXシリーズ”をリアスピーカーとして接続し、サラウンド環境を構築できるようにする機能の追加も検討中とのことだ。