公開日 2026/01/06 06:30

【インタビュー】アキュフェーズ、20年連続の金賞受賞。ハイファイオーディオ市場に活力をもたらす

AEX2026受賞:アキュフェーズ 鈴木雅臣氏
徳田ゆかり
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オーディオ銘機賞2026受賞インタビュー
アキュフェーズ

国内オーディオマーケットに展開される数々の製品の中で、卓越した性能、革新的な内容を持ち、かつオーディオマインドに溢れる “真の銘機” を選定するアワード「オーディオ銘機賞2026」において、アキュフェーズのプリアンプ「C-3900S」が金賞を受賞した。

魅力的な製品群を次々に投入し、その商品力を国内外にアピールする同社の歩みとこれからの取り組みについて、代表取締役社長の鈴木雅臣氏が語る。

アキュフェーズ株式会社
代表取締役社長 鈴木雅臣氏

 

ハイファイオーディオの醍醐味を広げるプリアンプ
新フラグシップモデルC-3900S

―― オーディオ銘機賞2026において、プリアンプC-3900Sが金賞受賞となりました。20年連続で金賞の受賞を果たされたこととなりましたが、鈴木社長ご自身の思いをお聞かせください。

オーディオ銘機賞2026 金賞受賞のプリアンプ C-3900

鈴木 栄誉ある賞をいただき、深い感謝とともに身の引き締まる思いです。まことに有難うございます。オーディオ銘機賞では、オーディオ機器としての性能の高さはもとより、長期にわたって安心して使えるモデルとしてのご評価を頂戴し、非常に誇らしく思っております。栄誉ある金賞を20年間連続で受賞できましたこと、審査員でおられる評論家の方々とご販売店の方々のご支持に心より感謝いたします。そして今回の受賞に甘んじることなく、さらに魅力のある製品、信頼性の高い製品をお客様に提供してまいります。

―― 受賞モデルC-3900Sは、プリアンプの新たなフラグシップモデルとして大きな存在感を放っています。開発において重視されたコンセプト、また前モデルC-3900からの進化点やその意図をお聞かせください。

鈴木 現在のフラグシップモデルとなるプリアンプは、2010年に発売した創立40周年記念モデルC-3800から始まり、C-3850、C-3900とフルモデルチェンジを重ねて、今回のC-3900Sが4世代目となります。フラグシップ・プリアンプとしての開発テーマは、究極の低雑音特性の実現。雑音をなくしていくことでダイナミック・レンジが微小方向に拡大し、それまで聴こえていなかったものが聴こえ、それが演奏のニュアンスの深さや音場の見え方に繋がると考えています。

そのために、弊社オリジナルの音量調整技術AAVAをバランス化して2つの回路を並列駆動させるデュアルバランスドAAVAや、雑音とひずみを打ち消すオリジナル技術であるANCCといった技術を投入しました。AAVAを構成する入力バッファアンプ、I/V変換アンプ、出力バッファアンプの3つを再設計し、さらなる低雑音化を図っています。この結果、前モデルのC-3900と比べて、ボリュームつまみの指標位置が11時程度までの実使用領域で、雑音を10%下げることができました。

機能面の進化としては、まずラウドネス・コンペンセーターです。これは本来小音量時の低域不足を補うための機能ですが、同時に低域の量感も増加するので、スピーカーの低域不足を補うことができます。そこで今回は、コンペンセーターの効き方を3段階から5段階へ増やしてより細かく設定できるようにしました。

そしてバランスボリュームの進化。バランスボリュームは、オーディオ装置を設置している部屋や、フォノ・カートリッジなどの左右の音量差を補正できるすぐれた機能です。弊社のプリアンプはAAVAでバランス機能を実現して音質劣化はほぼありませんので、調整の最小ステップを従来機の0.5dBから0.2dBへ下げ、より精密に調整できるようにしました。これらAAVAや増幅回路は左右合計で16基板としていますが、ガラス布フッ素樹脂基板を採用しており、世界でも類を見ない高速伝搬特性と低誘電率、低損失特性をもたらしました。

C-3900Sは2025年10月に発売して以来、おかげさまで好調に売れ続け、年内の生産分は完売しました。現在は2月生産分の注文を受けているところですが、ご注文をいただいているお客様、販売店様には大変ご迷惑をおかけしています。大量に作ることができない製品で、なにとぞご理解とご容赦をいただけますと幸いです。

ーー 昨年はプリメインアンプのE-800Sが金賞を受賞され、プリメインアンプの優位性の1つとしてスペースファクターの要素をあげておられました。セパレートアンプについてはその存在をどのように捉えておられますか。

鈴木 プリメインアンプには、プリアンプとパワーアンプを1つの筐体に入れる上での制限がありますが、セパレートアンプはそれがありません。そしてプリアンプとパワーアンプ、それぞれの組み合わせの妙を楽しむことができます。真空管、トランジスタ、スイッチングアンプなど種類もさまざまにありますから、たくさんの選択肢の中からお客様のお好みに合わせて選んでいただける醍醐味も、魅力の1つだと思います。プリとパワーをつなぐためのケーブルが存在するのもまた、音を左右し、オーディオ的な楽しみを味わえる要素ですね。

 

独自の技術によって進化がもたらされた話題の新製品群

―― フォノイコライザーアンプ「C-57」、SA-CD/CDプレーヤー「DP-570S」、プリメインアンプ「E-3000」が銀賞を受賞しています。それぞれの訴求ポイントをお聞かせください。

SA-CD/CD プレーヤー DP-570S
プリメインアンプ E-3000

鈴木 C-57は、2020年に発売したC-47の後継機で、操作つまみが左右に配置されたシンメトリー・デザインを新たに採用しました。近年の低インピーダンスMCカートリッジに対応するため、MC負荷インピーダンスに60Ωを追加し、回路面ではMCヘッドアンプが大きく変わりまして、雑音とひずみを打ち消すANCCを投入して、雑音を10%下げました。

DP-570Sは、2020年に発売したDP-570の後継機で、DA変換回路を大きく進化させています。DACチップのESS社製ES9028PROをチャンネル当たり4回路並列動作させることは従来機種と同じですが、そこにANCCを組み合わせ、電源を強化することで上級機のDP-770に迫る雑音特性とひずみ特性を実現しました。USBインターフェースも刷新し、DSD22.5MHzに対応しました。

E-3000は、2019年発売のE-380と2020年発売のE-280を統合した後継機です。出力電力は100W/8Ωと2機種の中間の出力ですが、パワーアンプ最終段のトランジスタの並列数は、E-380の2並列から3並列へ増やし、スピーカー駆動力を向上させています。プリアンプ部もAAVAにANCCを組み合わせて、実使用ボリューム領域でE-380と比べて雑音を20%下げています。

―― 御社が長く取り組まれているFMチューナーでは、新モデル「T-1300」が銅賞受賞となりました。

FMステレオ・チューナー T-1300

鈴木 長年のFMチューナーへの取り組みについてご評価をいただき、非常に嬉しく思っております。アキュフェーズの創業者である春日二郎は、1957年に自らが創業した春日無線工業でかつて、国産初のFMチューナーを製品化しました。その後アキュフェーズを創業し、1973年に発売した最初の製品もFMチューナーでした。今回のT-1300は、弊社にとって15機種目のFMチューナーになります。

現在では、FM電波を選択し増幅するフロントエンドの部品にはハイファイオーディオにふさわしいものがなく、弊社は特注部品を作って対応してきたのですが、FMチューナーが7年間くらい作れなくなった時期がありました。その後デジタル技術を応用してフィルターをつくり、製品化を実現したのがT-1000で、さらにデジタルの領域を広げ、フロントエンド以降をすべてデジタル化したのがT-1200です。

今回のT-1300は、アンテナからの電波を増幅したりフィルターをかけたりするフロントエンドの部分にメスを入れました。アキュフェーズのFMチューナーとして唯一残っていたアナログの領域です。それでS/Nがさらに良くなり、現在のアナログとデジタルの技術の粋を集めたチューナーとなりました。春日二郎のDNAを引き継ぐとともに、今後もハイファイでのFM受信の文化を守るべく努力してまいります。

 

市場の期待と信頼を担い、さまざまな取り組みを進めていく

―― たくさんのモデルが投入されて、市場にとって大きな刺激になりますね。ユーザー登録のシステムが高い精度で確立されているのも、お客様の信頼を得る大きな要因です。

鈴木 ありがたいことに、私たちの製品を購入されたお客様がずっと使い続けて下さっています。市場での製品の販売サイクルが4年から6年ぐらいで、私たちはそのサイクルに合わせてバージョンアップした新製品を出しています。そんな中で多くのお客様が2回に1回のバージョンアップのタイミングで買って下さっているとよくお聞きします。

中古市場でもアキュフェーズ製品は高額で取引きされているので、新製品を購入される方にも下取り額を使っていただけるのがメリットになります。そして新品でも中古品でも、購入された際それぞれに製品を登録していただく仕組みがあり、万が一リコールがあった場合にもすぐにお知らせすることができます。おかげさまで登録者数は5万人を超えましたが、毎年皆様に年賀状を送付させていただいています。お客様に安心して機器をお使いいただくために、この仕組みもしっかりと続けて参ります。

―― 昨今のオーディオ市場の国内および海外の動向と、それぞれに対するプロモーション、コミュニケーション活動についてお聞かせください。

鈴木 2025年の国内販売は、年初から低迷を続けてきました。景気がそれほど悪くない中でも製品が売れず、なんともやるせない状況でしたが、東京インターナショナルオーディオショウや大阪ハイエンドショウなどのイベントをきっかけに、お客様が少しずつ市場へ戻ってきたと実感しています。今後も販売店様や各地で行われるイベントに積極的に参加して、お客様に製品を聴いていただく機会を多く作ると同時にお客様とのコミュニケーションを図っていきます。

一方海外の販売は、世界的な円安の影響もあってアキュフェーズの製品は順調に売上げを伸ばしています。お客様との直接のコミュニケーションが重要なのは国内と同様で、海外での販売は国ごとに選定した輸入代理店にすべてお任せしているのですが、輸入代理店が出展するオーディオショウや、試聴会などのイベントに私たちも積極的に参加して、お客様とのコミュニケーションを図ってまいります。

―― 2025年を振り返っての歩みと、2026年の方向性についてお聞かせください。

鈴木 弊社は2022年に創業50周年を迎え、C-3900などのフラグシップモデルを50周年記念モデルとして発売し、その後はこれらの製品の技術と音質を他の製品へ展開してきました。製品の開発サイクルは平均して5年で、2024年に発売したE-800Sを皮切りに50周年記念モデルのモデルチェンジも始まっていますし、2025年はC-3900S でC-3900のモデルチェンジを果たしました。2026年からはこれらフラグシップモデルの技術と音質を、他の製品へも展開していきます。

オーディオは素晴らしい趣味です。好きな演奏家のパフォーマンスに触れれば人生の糧にもなりますし、またオーディオ機器のたたずまいや触感も喜びをかきたてるものになります。アキュフェーズとして、そうしたことを感じてご満足いただける製品を、ひとつひとつしっかりと作り続けお届けしていきたいですね。

―― これからの進化もますます楽しみですね。ありがとうございました。

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