公開日 2021/06/16 07:00

ソニー「Xperia 1 III」が到達した究極のAVクオリティ。キーパーソンに聞く進化のポイント

<山本敦のAV進化論 第202回>

ソニーの画づくりのノウハウが「シネマワイド体験」に活きる

Xperia 1 IIIには歴代のXperia 1シリーズと同じ約6.5インチ、4K/HDR対応シネマワイド有機ELディスプレイが搭載されている。独特な “長い” ディスプレイだ。

アスペクト比21対9、4K/HDRディスプレイによる映像の表現力がとても高い

映像のチューニングについてはXperia 1 IIと同様に、「クリエイターモード」はソニーが映像製作のプロフェッショナル向けに展開する業務用リファレンスモニター「BVMシリーズ」の映像をベンチマークとして画作りを追い込んだ。もうひとつの「スタンダードモード」の画づくりについてはブラビアの最新モデルの映像をリファレンスにしている。「基本的なコンセプトを変えずに、従来の画づくりを貫いた」と三木氏が説明している。

Xperia 1 IIIのディスプレイ設計を担当する三木愛子氏

Xperia 1 IIIの映像をNetflixで配信されている映画『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』などの作品を見ながらチェックした。色のバランスはとても自然でむやみな強調感がない。暗部に埋もれがちなテクスチャーを丁寧に引き出し、中間階調色も粘り強く真に迫る。アスペクト比21対9のシネマワイド体験をうたうディスプレイの持ち味は、4Kディスプレイならではの高い解像感と相まって、映像の世界に引き込まれそうになるリアリティを楽しませてくれる。

Xperia 1 IIIでは出荷時に個体単位でディスプレイの「色ずれ」を補正する品質チェックが行われる。スマホによるオーディオ・ビジュアル体験に一切の妥協を許さないソニーならではの取り組みが、本機のように一般に広く展開する機種にも採用される。かたやプロフェッショナル向けの端末である「Xperia 1 Professional Edition」と「Xperia PRO」に関しては、色味に加えて輝度のキャリブレーションも個体ごとに行っているところに違いがある。いずれにせよ、こんなことは長年にわたってソニーが積み上げてきた画づくりのノウハウを下地にできるXperiaならではの芸当だと言える。

スマホ初の4K/120Hz表示に対応

Xperia 1 IIIから4K/HDRディスプレイがネイティブ120Hz倍速表示にも対応した。Xperia 5 II以来の対応となるが、4K解像度のスマホとしてはXperia 1 IIIが初の試みになる。

端末の「画面設定」に入り、「低残像設定」をオンにするとリフレッシュレートを120Hzに切り換える。ただ、ディスプレイが消費する電力も上がるので、通常はオフにして使う方がベターだ。

低残像設定をオンにすると最大リフレッシュレートが120Hzまで伸びる

三木氏は4K対応の120Hzディスプレイが実現できた背景には、新しいパネルを搭載したことだけでなく、サプライヤーとのコミュニケーションを密に取りながら細部にわたる設計の最適化も行ったことを強調している。電源回路は新規に設計して、発熱をコントロールしながら本体のバッテリーの持続を維持している。設計を詰める段階では様々なユースケースを想定しながら万全を期していると三木氏が語っている。

本稿の執筆時点では4Kと120Hz表示を同時に満たすモバイル向けビデオコンテンツがまだ存在していない。モバイルゲームの『Call of Duty:Mobile』はXperia 1 IIIの120Hz対応ディスプレイによる滑らかな動画表示が体験できるコンテンツだ。ゲーム側の設定は「フレームレート」を「ウルトラ」にした後、Xperiaの端末側で「ゲームエンハンサー」から「最大画面リフレッシュレート」を「120」に設定するか、または「画面設定」内の「低残像設定の使用」をオンにする。

ゲーム系コンテンツはゲームエンハンサー機能によりさらに快適なプレイ環境で楽しめる

ゲームエンハンサーの中には黒画面挿入による240Hz相当の倍速駆動にパネルの動作を切り換える機能や、240Hz対応のタッチ反応速度、タッチ追従性の設定メニューもある。筆者も試遊してみたところ、ダイナミックに動くゲーム映像の被写体が滑らかに表示され、またストレスのない操作感を確かめることができた。

テレビには映像の残像感を低減するため、コマ間に新規映像や黒画像を挿入する倍速機能を搭載する製品もある。Xperia 1 IIIの場合はゲーム以外の動画をブーストして倍速表示にする機能は設けていない。

Netflix以外にも「自動クリエイターモード」が拡大

映像調整の新機能については、Xperia 1から特定のアプリを起動した際に端末の画質設定を自動的にクリエイターモードに切り換える「自動クリエイターモード」が搭載されている。当初Netflixアプリのみに対応していたこの機能が、Xperia 1 IIIからはNetflix以外の動画配信からゲーム、フォトビュワーまで様々なアプリが自由に追加できるようになった。

三木氏によると「クリエイターモードの画質チューニングにはNetflixとAmazonプライム・ビデオによるHDRの画質確認を実施して、認められた画質に追い込んでいる」という。

Netflix以外にもAmazonプライム・ビデオが自動クリエイターモードによりベストな環境での映像視聴が楽しめる

オーディオ・ビジュアル “最高品質” のスマホが誕生した

Xperia 1 IIIの商品企画を担当する滝沢氏は、「Xperiaのファンに限らず、映画や音楽鑑賞のクオリティ、モバイルゲームの快適なプレイ環境、そしてスマホで動画や写真をキレイに撮りたいすべての方々にXperia 1 IIIを楽しんでほしい」と呼びかける。

筆者も今回短い期間ながらXperia 1 IIIを試してみて、オーディオ・ビジュアルの性能については間違いなく史上最高の出来映えに到達したスマホであると確信した。目新しい技術やギミックに偏らない「底力」を備えた、鮮烈にキャラクターの立ったプレミアムスマホが誕生した。

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