公開日 2017/08/22 10:11

ヤマハ「“聴く”VR」とは何か? 開発者に聞いた将来像

<山本敦のAV進化論 第141回>
今年7月の半ばに開催された夏のポタフェス2017に、ヤマハが『 “聴く”VR』と名付けた新しい技術を展示した(関連記事)。ブースでも体験したが、コンテンツの世界に入り込んでしまったような自然な没入感を音だけで実現する『 “聴く”VR』に興味が湧き、今回はヤマハの開発者を訪問した。

ポタフェス2017での展示の様子

『 “聴く”VR』のプロジェクトリーダーであり、信号処理技術の開発を担当する湯山雄太氏、デジタル部の回路設計を担当する佐藤亮太氏、ソフトウェア開発の臼井篤志氏の3名に技術の詳細を聞いた。

写真左から臼井篤志氏、佐藤亮太氏、湯山雄太氏

■若い技術者が中心となって立ち上げたプロジェクト

『 “聴く”VR』は、ヤマハのオーディオ・ビジュアル開発部の中でも、まだ起ち上がったばかりの若いプロジェクトだ。関わるスタッフも今回のインタビューに対応いただいた3名のほか、アナログアンプ回路の設計、機械系の設計を担当するエンジニアが1名ずつと、デザイナー1名を合わせた合計6名。バランス良く構成されたメンバー各氏は、ふだんはヤマハのAVレシーバーの開発を担当しているそうだ。

『 “聴く”VR』のアイデアは、佐藤氏ともう1名のスタッフが常日頃「いつか形にしてみたいね」と口にしていたところ、湯山氏が仲間に加わり、以後本格的なプロジェクトへ発展した。「スタート当初は手探りでしたが、自分たちで企画を固めて、当時の社内のオーディオ・ビジュアル開発部門の責任者にプレゼンテーションをしたところ、プロジェクトとして認められてここまで来ることができました」(湯山氏)。

プロジェクトはまだ商品化が正式決定しているわけではないが、ポタフェスで試作機を展示して良い感触を得たことから、湯山氏によれば「いい流れが生まれているし、周囲にも多くの味方が付いてくれているので機運は前向き」という。彼らが目指す当面の目標は、2018年に『 “聴く”VR』の技術を搭載した第1弾の商品をローンチすることだ。

『“聴く”VR』プロジェクトはいい流れにあると湯山氏

ポタフェス2017の会場で『 “聴く”VR』というキャッチコピーが目にとまり、試聴体験の列に並んでしまったという方も多いはず。湯山氏によれば、自然な空間を創り上げることで、コンテンツ自体に没入する体験を表すコピーを開発者一同で考え、ポタフェス出展の直前に決定したそうだ。当然ながらまだ正式な技術名称ではないので、現時点では開発コードネームのようなものとして捉えるのが妥当かもしれない。

イベントでデモを体験した方々からは、『 “聴く”VR』とサラウンドヘッドホンがどう違うのかという質問も多く寄せられたという。湯山氏はその違いを以下のように説明している。

「サラウンドヘッドホンはコンテンツに収録されているマルチチャンネルの音声信号を再現したり、あるいは2チャンネルのソースからマルチチャンネルの音声をつくり出す技術を軸に、どちらかと言えばホームシアターのサラウンド感をヘッドホンで楽しむことを目的としたデバイスです。私たちの『 “聴く”VR』は、マルチチャンネルの音声を再現しながら、さらに空間のつながりや奥行き感を付与して、効果音やBGMのリアリティ、セリフの聴き取りやすさも高めて、いっそうの没入感を提供することを狙いとしています」(湯山氏)。

さて、『 “聴く”VR』の技術には大きな3つの構成要素がある。

次ページシネマDSPを活かした「超・多チャンネル拡張技術」がキー

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