公開日 2014/11/05 11:00
指揮者・武藤英明氏が語る映画「ミンヨン 倍音の法則」− 「倍音」とモーツァルトの関係とは
チェコ・フィル黄金期の音と言われた武藤氏指揮の「ジュピター」
武藤氏は桐朋音楽大学卒業後、1976年にチェコのプラハへ渡り、当時、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者だったズデニェク・コシュラー氏に師事。その後も、チェコを拠点に指揮活動をおこなっている。
チェコ・フィルハーモニーはモーツァルトの録音をデジタルになってからほとんどやっていませんでした。1989年にベルリンの壁がなくなったあとのチェコ・フィルは、わずかな期間ピエロフラーヴェクが首席指揮者でしたが、その後に来た指揮者はドイツ人、その次が、アシュケナージ、外国人ですね。次がズデニェク・マーツァル。これはアメリカに長いこといて感覚がアメリカ。その間に、レコーディング・ディレクターはモーツァルトをやる気にならなかったと聞きます。そんな中、レコード制作ディレクターが、私がチェコ・フィルハーモニーを指揮すると、チェコ・フィル黄金期の音がするというのです。
私がチェコで師事したのは、コシュラーさんやノイマンさん、ヴァーツラフ・スメターチェクさん……ドヴォルザークホールの音が、私の細胞の端の先端にまでしみこんでしまったんじゃないですかね。
仮に野茂英雄はアンダースローで投げろといえば投げられるかもしれないけれど、それではメジャーリーガーを相手にはできませんよね。トルネード投法ではなくなってしまいますから。松山英樹君と石川遼ちゃん、二人ともトッププロですが、スイングは違います。それが自分に一番合っているから、そうなってしまう。良い悪いではなく、質の違いです。私が指揮すると、その当時の音になっちゃうんです。だったらモーツァルトをやってみたいというレコーディング・ディレクターの話があったのです。
「倍音」とモーツァルト
ドヴォルザークホールのあるチェコのプラハは、1786年の初演が不評だったモーツァルト「フィガロの結婚」を高く評価し「ドン・ジョヴァンニ」を初演した町だ。プラハがモーツァルトにとって特別な町であると同時に、チェコ人にとって、モーツァルトは別格な音楽家だという。
モーツァルトは天才以上。作品を見ていると、どうも人間技とは思えない。悪魔の血が一滴入っている。そう考えると、納得がいく。
例えばメンデルスゾーン、天上の音楽、あの美しさ。天使が舞い降りている。けれど、舞い降りた天使の中に悪魔をみいだすことはできません。天上の音楽を書いた人は他にも何人もいると思いますが、その中にちょいと顔を隠した悪魔が潜んでいるのがモーツァルトなんです。
佐々木さんが、倍音とモーツァルトになぜこだわるかということなんですが、空気がないところには倍音はなりたたない。もちろん水でもいいんですけれど。真空状態では音が伝播しませんからね。そうすると、世の中に存在する倍音の中には、整数次倍音と、それから川の流れ、潮騒、松風の音とか、非整数次倍音、ようするに白色ノイズとがあります。ほとんど無限大といもいわれる倍音の組み合わせがあるわけです。その倍音の組合せで、モーツァルトは最も聖なる音の組み合わせに成功した、最初で最後の人。これを凌駕する組み合わせでできる人はいないと思います。
聖なる倍音の法則と、その反対の邪悪な音
「ミンヨン 倍音の法則」では、ミンヨン扮する戦争中を生きた女性(佐々木監督の母がモデルになっている)が、戦火を逃れて日本を旅する中、広島、長崎の原爆が投下された空を見上げるシーンがある。また現代のミンヨンが空を見上げるシーンもある。過去の事実、現在、未来を感じる想像力が招来されているようなシーンだ。
この倍音の法則の組み合わせにおける聖なる音の反対、人間が創りだした音の中で最も邪悪な音。これはもう、原子爆弾の炸裂する音ですね。
この邪悪な音、原子爆弾の音に関するデータはないんです。あのデータ好きのアメリカ人が、ちゃんとそれをとっていないというのが珍しい。それはそうです。我々が水爆実験とか、ビキニとか、アリゾナの砂漠で爆弾を落としたとか、あるじゃないですか。ところが至近距離では音がとれない。人間は死んじゃいますから。
画像は10キロメートルぐらい離れたところから、ズームアップで撮っている。よく、音がある画像がありますが、あれはあとで合成しているんです。なんとなれば、10キロ離れて音が伝わるのは、24〜25秒かかるんです。破裂してから、10、20、21、22秒と、まだ音が届かない。原子爆弾が爆発すると、気圧から何から環境が激変するそうです。だから今だに細かなデータ、音に関するデータを出すことができない。近似値ぐらいですら簡単ではない。だけど、これも人間が創りだした音であることには変わりない。
この対極にあるのがモーツァルトの音です。だから、もう、倍音の法則に佐々木さんがこだわるというのは、そういうことです。だけど、そのものずばりを言わないところが、ぶっ飛んだ佐々木さん。お題目ならいくらでもあるじゃないですか。核廃絶とか。直接的に言う人はいくらでもいます。それなのに何でこうなのか。核は多少減っているかもしれませんが、みんな手放そうとしない。要するに感性に訴えかけないと駄目なんです。
雲仙にいた、うちのおふくろは、火の玉が走ったのは見ている。おふくろの妹二人は長崎の中心部にいましたから、被曝して、それがもとで亡くなりました。1人は14歳。1人は17歳。一週間で1人、一ヶ月後に1人。即死の方が楽だったんじゃないか。苦しみ抜いて死にましたから。何か悪いことをしたのか。エノラ・ゲイでボタンを押したやつもちょっと精神を病んだそうですね。ところが(原爆投下時の米大統領)トルーマンを見てください。トルーマンは平気の平左。これをやるとどうなるかというイマジネーションの欠如です。オッペンハイマーも、原爆を作っちゃった後でごめんなさいしても遅いんです。トルーマンにしろ何にしろ、何でそういうことになってしまうのか。感性が欠落しているんです。子供の頃に良いものに接して感性を磨いていないと、そういうことになってしまう。
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