蒼い瞳が見た日本のオーディオシーン

日本の美意識からインスパイアされたヴィンテージ風スピーカー。米オーディオデザイナーとカリモクがコラボ

公開日 2026/02/26 06:30 栗原祥光
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カリモク家具(株)は2026年2月21日から6月5日まで、東京・西麻布の同社拠点KARIMOKU RESEARCH CENTERにて、オーディオデザイナーのデヴォン・ターンブル氏とコラボレーションしたスピーカーやソファなどを展示している。早速どのようなプロダクトなのか、イベントの概要と共にご紹介する。

デヴォン・ターンブル氏が主催するOJASとカリモクのコラボレーションによるスピーカー

スピーカーのほかチェアやオーディオラックも展開

デヴォン・ターンブル氏は、ニューヨークに拠点を構えるカスタマイズ・オーディオブランド「OJAS(オージャス)」を主宰する傍ら、グラフィックや服飾のデザイン、DJなどマルチに活動するクリエーター。

クリプシュとのコラボレーションのほか、ウェスタン・エレクトリックやアルテックなどのヴィンテージオーディオと日本独自のオーディオ文化に精通していることから、MJ無線と実験誌で連載を持っている。ゆえに、その名を存じている方もいらっしゃるだろう。

デヴォン・ターンブル氏

デヴォン氏とカリモクとのコラボレーションは2025年にスタート。デヴォン氏がカリモク家具の工場を訪問、3次元加工や突板技術に触れたことをきっかけとして、デヴォン氏が設計したスピーカーを、カリモクが製造するという座組が出来上がった。

「KARIMOKU RESEARCH Survey 03:FORM FOLLOWS FEELINGS」と題された本イベントは、地下1階から2階までの3フロアで展開される。地下1階はデヴォン氏がデザインしたスピーカーとソファ、ラックなど商品化を見据えたプロダクトを展示。すべてのプロダクトに、白木仕上げおよびデヴォン氏こだわりのライトグレーの2色が用意されている。

地下1Fの様子

白木仕上げはカリモク側の提案で、明るいリビングに合いそう。もう一方のライトグレーを選んだ理由をデヴォン氏に尋ねると、往年のアルテックなどからインスパイアを受けたことを告白。グレーの下から木目が透けて見えるところに、波間のような美しさがあると語る。

大きさの順に「Sanjo」「Rokujo」「Nurikabe」と名付けられた3種類のスピーカーシステムは、すべて磁気回路にアルニコマグネットを用いたフォステクス製フルレンジユニットが奢られている。キュービックなエンクロージュアはバーチ合板製で、ホワイトオークの突板で仕上げられている。販売価格は「Sanjo」が44万円、「Rokujo」が77万円、「Nurikabe」が165万円程度を予定している。

「Sanjo」

「Rokujo」

「Nurikabe」

ファニチャーにも注目だ。デヴォン氏も「初めて家具をデザインして苦労した」というローチェアは、リクライニング機構などを一切排除したシンプル・イズ・ベストを地で行くもの。

スピーカーのほか、チェアやテーブルなども計画する

ユニークなのは「座椅子」も検討していること。和室などでオーディオを愉しまれている方には見逃せないアイテムになりそうだ。

座椅子とテーブル

オーディオラックとソフトラックを兼用したかのようなローボードもシンプルなデザインで、部屋を選ばない雰囲気。造りも堅牢で大型アナログプレーヤーを設置しても大丈夫そうだ。

オーディオ&ソフト用ラック

アコースティックパネルも検討。どこか屏風を彷彿とする和のテイストだ。吸音材には硬質のスポンジ材が使われているようだ。

障子のようにも見えるアコースティックパネル

オーディオブランドが手掛ける吸音パネルやラックは機能や効果優先であるためか、家具とのマッチングがとりづらい製品が見受けられる。家具専門メーカーが手掛けるものは、家具との親和性はよいものの、効果の点でオーディオブランドに見劣りする場合もある。

デヴォン氏とカリモクが手掛けるファニチャーは、オーディオとインテリアの融合という点で、今後の動向から目が離せないプロダクトといえるだろう。市販化が今から待ち遠しい。

茶室を模した「サウンドハウス」

1階のフロアに入ると中央に灰色の大きな箱が。これは「サウンドハウス」と名付けられたルーム・イン・ルームで、デヴォン氏が日本文化の「間」の概念と音響哲学の接点を結び付けたもの。「『間の音 - Between Space & Sound -』By OJAS Tokyo and Karimoku Furniture」というタイトルがつけられている。

茶室を模したサウンドハウス『間の音  -Between Space & Sound-』

躙口を模したであろう狭い扉を潜り抜けて中に入ると、グレーで統一された茶室のような世界。壁は吸音パネルで構成され、中央にはデノン製フォノモーターとオルトフォンのロングアーム、SPUからなるアナログプレーヤーを配置。Rokujoと対峙する形で3席の座椅子が並べられ、主人(デヴォン氏)がかける音楽に対峙するという世界。どこか茶道にも似た雰囲気だ。

入り口から中を見たところ

ターンテーブルを茶室の炉に見立てている

木材を加工したマルチセルラーホーン

2階はうってかわり、解放感あふれたリスニングルーム。TADのユニットを用いた2ウェイスピーカーに、フォステクスが誇る800mmウーファーによる2.1チャンネルシステムを展示。

2Fの様子

注目は木製のマルチセルラーホーンで、デヴォン氏の3Dデータをもとに、カリモクの3次元加工技術により制作。木目の方向に至るまで配慮されたそれは、従来の鋳鉄製ホーンとは異なる柔らかな響きが印象的。こちらは販売の予定は無いとのことだが、要望があれば受注してくれるかもしれない。

TADのユニットを用いた2ウェイシステム

TADのドライバーユニット「TD2002」。振動板に48mmベリリウム材、磁気回路にアルニコマグネットが用いられている

デノン製モーターを用いたアナログプレーヤー

OJASのプリメインアンプ

会場ではデヴォン氏が執筆した雑誌のほか、東京・品川のレコード店「春の雨」セレクトによるアナログレコード、本展のキービジュアルを配したオリジナルTシャツ、レコードバッグ、ステッカーを販売。レコードバックはかなり使い勝手がよさそうに見えた。

デヴォン氏が寄稿したMJ(無線と実験)誌やレコードも販売

本展示はカリモクとデヴォン氏がコラボレーションしたプロトタイプの展示という側面は勿論のこと、外国人から見た日本のオーディオ文化の解釈を知る機会でもあるように感じた。

日本のオーディオシーンは海外と大きく異なると言われているが、デヴォン氏がこれからも日本のオーディオ文化を世界に向けて発信し続けることを願うと共に、カリモクがオーディオファイルに向けたファニチャーやスピーカーを手掛けることを嬉しく思う。今から製品化が待ち遠しい。

KARIMOKU RESEARCH SURVEY 03:FORM FOLLOWS FEELINGS

<開催期間>
2026年2月21日(土)- 6月5日(金)
<会場>
KARIMOKU RESEARCH CENTER
〒106-0031 東京都港区西麻布2丁目24-2
※東京メトロ表参道駅 A5番出口より徒歩10分
<営業時間>
12:00 - 18:00
<休館日>
土・日曜およびゴールデンウィーク(5月1日 - 5月5日)

 

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