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2024年のカーオーディオ市場を占う「まいど大阪 春のプチ車音祭」レポート
関西圏の主要カーオーディオショップが協力して開催しているカーオーディオコンテスト、「まいど大阪 春のプチ車音祭」が3月24日に開催された。関西圏を中心に、関東や東北エリアからも70台強のカーオーディオ車両が集結。2024年のカーオーディオ市場を占うこのイベントの模様をレポートしよう。
大阪湾に面した堺市の「海とのふれあい広場 第2駐車場」にて毎年開催されている「春まいど。今年は終日雨模様で、正午を過ぎても気温も10度以下とすっかり寒の戻りを噛み締める。スタッフも参加者も皆コートを着込んでの参戦となったが、コンテスト自体はその寒さを吹き飛ばすような熱戦が繰り広げられた。
今回の審査員には、昨年から引き続いて担当する小原由夫氏に加え、岩井 喬氏、秋山 真氏の2名の評論家が新たに起用された。オーディオへの深い愛情と審査精度の高さは昨年の「ハイコン」でもお墨付きで、カーオーディオ市場にフレッシュな風を吹き込む存在としてエントラントからの期待も高い。
今回のコンテストでは、3人の評論家全員に評価してもらう「エキスパートコース」のほか、評論家3名のうちの1名に評価を受ける「評論家コース」、システム価格帯別に分かれた「サウンドA」から「サウンドD」までの4コースと全6コースを用意。価格帯別のコースは、イングラフの木村氏やジパング道祖尾氏など、全国の有力ショップオーナーが審査員を担当する。
雨が強く降る時間帯もあり、特にS/N評価ではシビアな環境でのコンテストとなったが、冬の間に車を買い替えたり、カーオーディオシステムを一新したエントラントなど、気合いの入ったシステム提案が数多く見られた。前日には同じ審査員を迎えた「サウンドミーティング」も開催されており、そこで得られたアドバイスをもとに、審査直前まで音質チューニングを追い込んでいる。
メインの課題曲は2曲。アコースティックなジャズ作品、テディ・スウィムズの「Some Things I'll Never Know」と、小澤征爾&サイトウ・キネン・オーケストラの「ブラームス:交響曲第1番」の第1楽章。いずれも空間表現や楽器の質感を重視した音源となっており、定位感やタイムアラインメント、ユニット間のバランスなど、まさにカーオーディオの“基礎体力”を問われる楽曲でもある。今回の春まいどに関して言うならば、シビアなコンテスト環境だからこそ、「音楽の世界に没頭させてくれる」質の高いチューニングに関心が集まっていたとも言える。
いくつか注目の車両を紹介しよう。三菱・デリカ D5でコンテストに常連参加している近藤さん。グッと元気の良い音で、悪天候も吹き飛ばすタフなエネルギーに溢れている。少々力瘤が入り過ぎているかも…というようなところも感じられるが、“この音でドライブしたい!”というカーオーナーのこだわりがしっかり伝わってくるのは楽しい。
アウディ RS6で参戦の米田清隆さん。昨年の「春のプチまいど」のエキスパートコースで優勝をさらった車だが、今回は「ごくごく王道のサウンドを狙ってチューニングしました」と控えめなコメント。だが、テディ・スウィムズの伸びやかなハイトーンボイスにはっとさせられるし、ボーカルの声の消え際、残り香が鼻をくすぐるような繊細な表現も見事。弦楽器を指で弾くニュアンス感も丁寧に表現されており、複数の弦楽器の音色の違いも混濁せずに見えてくるのは心地よい。
竹松正彦さんは、「YouTubeで小澤征爾の動画もたくさん研究しまして、その鬼気迫る演奏を車の中でも再現したいと考えて音質を追い込みました」と気合十分。オーケストラの演者が音を出す、その一瞬前の空気感も再現するディテールの豊かさはたまらない魅力だ。サイトウキネンのメンバーの技術力の高さも存分に聴かせてくれて、まさに「音楽の世界に没入する」瞬間。
フォルクス・ワーゲンのビートルで参戦した肥塚英明さん。鳥取のオーディオショップ・ジパングからエントリーした。スピーカーはイスラエルのモレルで統一、アンプにはラックスマンの限定生産モデル「CM-20000 Limited」を組み合わせ。ステージを広く見晴らすような見通しの良さ、なめらかな肌触りとでも言いたくなるようなナチュラルな質感表現で、まさにクラシックのコンサートに臨席しているような豊かなステージングを展開する。
カーオーディオの輸入商社にとっても、コンテストは新製品のお披露目の場として非常に大切だ。フェリース・ソニードが輸入を手がけるイタリア・QUARTORIGO(クアルトリゴ)はアンプメーカーとして名高いが、近年スピーカーにも力を入れており、新たに上位グレードとなる「OPUSシリーズ」もラインナップ。繊細な模様が描かれたアルミバッフルも高い剛性感が感じられ、代表の西川氏も、「スピーカーとアンプのトータルコーディネートがかなり仕上がってきたように感じています」と大プッシュ。
岩手のカーオーディオショップ、サウンドフリークスは「OPUSシリーズ」のトゥイーター/ミッド/ウーファーを取り付けたBMW「RS530i」を用意。キリリと締まった立ち上がりのスピード感はクアルトリゴのユニットの魅力で、豊かなサウンドステージや楽器の質感の描きわけには、店主佐藤清人氏のセンスも光る。小原先生クラスで1位、岩井先生クラスで4位と上位入賞を勝ち取っていた。
最後は表彰式。エキスパートコースでは、AV Kansai 宝塚店から参戦の竹松正彦さんが優勝、2位はカーオーディオクラブの江口愛里さんがランクインした。3位は森本 健さん(AV Kansai天王寺店)、4位は米田清隆さん(AV Kansai天王寺店)、5位は肥塚英明さん(ジパング)。上位3位まですべてベンツがランクインする結果となった。やはりAV Kansaiは強く、関西のカーオーディオ市場を一歩リードする存在でありつづけるが、負けじと他のショップも着実にステップアップを重ねている。
コンテストの総評において、今回初審査員を務めた岩井氏も「小澤征爾では、脚色せずに原音にいかに忠実に再現してくるかということで判断しました」とコメント。秋山氏も、「この課題曲だからハマった、ということではなく、基本的なクオリティの高さをしっかり評価しました」とカーオーディオの基本を抑えることの重要性を改めて強調する。
最後に小原氏は、「今回の課題曲のテーマは“エモーション”です。ジャズボーカルについては、情熱的な歌の表現の熱気がどれだけ伝わってくるか、またクラシックでは、小澤征爾の取り憑かれたかのような情念を表現できているかどうか、ということが審査項目に大きく反映されました」と振り返る。全体的なカーオーディオのレベル向上を喜びながらも、さらなる健闘にエールを送っていた。
大阪湾に面した堺市の「海とのふれあい広場 第2駐車場」にて毎年開催されている「春まいど。今年は終日雨模様で、正午を過ぎても気温も10度以下とすっかり寒の戻りを噛み締める。スタッフも参加者も皆コートを着込んでの参戦となったが、コンテスト自体はその寒さを吹き飛ばすような熱戦が繰り広げられた。
今回の審査員には、昨年から引き続いて担当する小原由夫氏に加え、岩井 喬氏、秋山 真氏の2名の評論家が新たに起用された。オーディオへの深い愛情と審査精度の高さは昨年の「ハイコン」でもお墨付きで、カーオーディオ市場にフレッシュな風を吹き込む存在としてエントラントからの期待も高い。
今回のコンテストでは、3人の評論家全員に評価してもらう「エキスパートコース」のほか、評論家3名のうちの1名に評価を受ける「評論家コース」、システム価格帯別に分かれた「サウンドA」から「サウンドD」までの4コースと全6コースを用意。価格帯別のコースは、イングラフの木村氏やジパング道祖尾氏など、全国の有力ショップオーナーが審査員を担当する。
雨が強く降る時間帯もあり、特にS/N評価ではシビアな環境でのコンテストとなったが、冬の間に車を買い替えたり、カーオーディオシステムを一新したエントラントなど、気合いの入ったシステム提案が数多く見られた。前日には同じ審査員を迎えた「サウンドミーティング」も開催されており、そこで得られたアドバイスをもとに、審査直前まで音質チューニングを追い込んでいる。
メインの課題曲は2曲。アコースティックなジャズ作品、テディ・スウィムズの「Some Things I'll Never Know」と、小澤征爾&サイトウ・キネン・オーケストラの「ブラームス:交響曲第1番」の第1楽章。いずれも空間表現や楽器の質感を重視した音源となっており、定位感やタイムアラインメント、ユニット間のバランスなど、まさにカーオーディオの“基礎体力”を問われる楽曲でもある。今回の春まいどに関して言うならば、シビアなコンテスト環境だからこそ、「音楽の世界に没頭させてくれる」質の高いチューニングに関心が集まっていたとも言える。
いくつか注目の車両を紹介しよう。三菱・デリカ D5でコンテストに常連参加している近藤さん。グッと元気の良い音で、悪天候も吹き飛ばすタフなエネルギーに溢れている。少々力瘤が入り過ぎているかも…というようなところも感じられるが、“この音でドライブしたい!”というカーオーナーのこだわりがしっかり伝わってくるのは楽しい。
アウディ RS6で参戦の米田清隆さん。昨年の「春のプチまいど」のエキスパートコースで優勝をさらった車だが、今回は「ごくごく王道のサウンドを狙ってチューニングしました」と控えめなコメント。だが、テディ・スウィムズの伸びやかなハイトーンボイスにはっとさせられるし、ボーカルの声の消え際、残り香が鼻をくすぐるような繊細な表現も見事。弦楽器を指で弾くニュアンス感も丁寧に表現されており、複数の弦楽器の音色の違いも混濁せずに見えてくるのは心地よい。
竹松正彦さんは、「YouTubeで小澤征爾の動画もたくさん研究しまして、その鬼気迫る演奏を車の中でも再現したいと考えて音質を追い込みました」と気合十分。オーケストラの演者が音を出す、その一瞬前の空気感も再現するディテールの豊かさはたまらない魅力だ。サイトウキネンのメンバーの技術力の高さも存分に聴かせてくれて、まさに「音楽の世界に没入する」瞬間。
フォルクス・ワーゲンのビートルで参戦した肥塚英明さん。鳥取のオーディオショップ・ジパングからエントリーした。スピーカーはイスラエルのモレルで統一、アンプにはラックスマンの限定生産モデル「CM-20000 Limited」を組み合わせ。ステージを広く見晴らすような見通しの良さ、なめらかな肌触りとでも言いたくなるようなナチュラルな質感表現で、まさにクラシックのコンサートに臨席しているような豊かなステージングを展開する。
カーオーディオの輸入商社にとっても、コンテストは新製品のお披露目の場として非常に大切だ。フェリース・ソニードが輸入を手がけるイタリア・QUARTORIGO(クアルトリゴ)はアンプメーカーとして名高いが、近年スピーカーにも力を入れており、新たに上位グレードとなる「OPUSシリーズ」もラインナップ。繊細な模様が描かれたアルミバッフルも高い剛性感が感じられ、代表の西川氏も、「スピーカーとアンプのトータルコーディネートがかなり仕上がってきたように感じています」と大プッシュ。
岩手のカーオーディオショップ、サウンドフリークスは「OPUSシリーズ」のトゥイーター/ミッド/ウーファーを取り付けたBMW「RS530i」を用意。キリリと締まった立ち上がりのスピード感はクアルトリゴのユニットの魅力で、豊かなサウンドステージや楽器の質感の描きわけには、店主佐藤清人氏のセンスも光る。小原先生クラスで1位、岩井先生クラスで4位と上位入賞を勝ち取っていた。
最後は表彰式。エキスパートコースでは、AV Kansai 宝塚店から参戦の竹松正彦さんが優勝、2位はカーオーディオクラブの江口愛里さんがランクインした。3位は森本 健さん(AV Kansai天王寺店)、4位は米田清隆さん(AV Kansai天王寺店)、5位は肥塚英明さん(ジパング)。上位3位まですべてベンツがランクインする結果となった。やはりAV Kansaiは強く、関西のカーオーディオ市場を一歩リードする存在でありつづけるが、負けじと他のショップも着実にステップアップを重ねている。
コンテストの総評において、今回初審査員を務めた岩井氏も「小澤征爾では、脚色せずに原音にいかに忠実に再現してくるかということで判断しました」とコメント。秋山氏も、「この課題曲だからハマった、ということではなく、基本的なクオリティの高さをしっかり評価しました」とカーオーディオの基本を抑えることの重要性を改めて強調する。
最後に小原氏は、「今回の課題曲のテーマは“エモーション”です。ジャズボーカルについては、情熱的な歌の表現の熱気がどれだけ伝わってくるか、またクラシックでは、小澤征爾の取り憑かれたかのような情念を表現できているかどうか、ということが審査項目に大きく反映されました」と振り返る。全体的なカーオーディオのレベル向上を喜びながらも、さらなる健闘にエールを送っていた。
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