今冬発売予定

オルトフォン、新旗艦カートリッジ「MC Diamond」。専用設計の磁気回路やダンパー素材を採用

公開日 2022/10/04 20:12 編集部:小野佳希
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オルトフォンは、炭素微粒子を配合した専用設計のダンパー素材や無垢単結晶のダイヤモンド・カンチレバーを採用したほか、空芯コイルの巻線にAucurumを採用するなどしたフラグシップカートリッジ「MC Diamond」を国内発表。1,298,000円(税込)で今冬に発売予定であることを明かした。

MC Diamond

5月にドイツで開催された「ミュンヘン・ハイエンド」にて参考出展されていた製品の詳細が発表された格好。MWCNT(Multi Wall Carbon Nano Tubes、マルチ・ウォール・カーボン・ナノチューブ)と呼ばれる炭素微粒子を配合した、専用設計のゴム素材をダンパーに使用。これまでのダンパー素材に比べ不要共振の減衰を意図する「制動」と、適切な角度や位置にカンチレバーを保持し続ける「支持」の性能が更に向上したという。

ミュンヘン・ハイエンドで展示されていた実機

前述のとおり無垢単結晶のダイヤモンド・カンチレバーを採用。ダイヤモンドは地球上で最も硬いため、カートリッジが音溝からの音声信号をトレースして様々な加重が加わった際の変形が最も少なくなると同社は説明。カンチレバーで生じる損失も同様に最少であるため、「高音域は当然として低音域に至るまで極めて高解像度な、全てを見通すかのような再生が可能となる」としている。

また、ダイヤモンドは素材内部での音の伝達速度がボロンやベリリウムを超えて最も速いため、トランジェント特性に優れ、音の立ち上がり・立ち下がりが速いとも説明している。

創立100周年記念モデル「The MC Century」に代表される同社フラグシップシリーズの空芯コイル巻線には、これまでは各モデルともに高純度銅線が用いられていたが、今回の「MC Diamond」ではシリーズ初となるAucurum(オーキュラム)を採用。これは6N高純度銅線の導体表面に金メッキを施したもので、ラテン語のAurum(金、元素記号Auの語源)とCuprum(銅、元素記号Cuの語源)の2つを合わせて名付けられたものだとのこと。明瞭かつ滑らかなサウンドが特徴だという。

そして、歴代のフラグシップシリーズにのみ使用されてきたWRAD(Wide Range Armature Damping、ワイド・レンジ・アーマチュア・ダンピング)システムを本モデルにも採用。同社の特許技術であるWRD(Wide Range Damping、ワイド・レンジ・ダンピング)システムをさらに進化させたもので、シリーズ特有の空芯コイルを支えるアーマチュア(巻芯)の大口径化やそれに伴う磁気回路の大型化によって生じたスペースを活用し、ダンピング・システムのさらなる高精度化を目指している。

十字型の非磁性体アーマチュアの先端をボビン状とし、相対するダンパーゴムには中央に凸型のリブを入れてアーマチュア先端と嵌合のうえ密着させることで、カンチレバー動作時の制動と支持をより完全なものとしたとアピールしている。

長年の研究に基づき開発したという専用設計の磁気回路は、「非常に大型で強力」という磁石を搭載し、加えてさらなる高効率化を追求。その結果、非磁性体の素材を用いた空芯コイルであるにもかかわらず、純鉄を用いた鉄芯タイプのアーマチュアを併用して出力電圧を確保するいわゆる「オルトフォン・タイプ」磁気回路と同程度の出力を実現している。

ハウジングは、同社が持つSLMテクノロジーを用いてチタン粉末をレーザー溶融し、三次元的に一体成型。上記の磁気回路を支えるために大きく重いハウジングにしており、カートリッジ全体の自重は、同じダイヤモンド・カンチレバー使用モデルの「MC Verismo」の比べてほぼ倍の17.5gとなっている。この質量差はそのままサウンドにも反映されており、同社によれば「重心が低く腰の据わったサウンドをねらう場合はより質量のあるDiamondに軍配が上がる」という。

また、ハウジングの底面には、カンチレバーを経由して振動系やカートリッジ本体へと伝わってくる不要な共振をシャットアウトするためにTPE(Thermo Plastic Elastomer、サーモ・プラスティック・エラストマー)のボトムカバーを取り付けている。ゴムに似たこのエラストマー素材を使用することで、ハウジングを完全な剛体とせずに適度な不要共振の減衰を得られるように配慮している。

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