世界的にも貴重な機能を実装

【独HIGH END】デジビット、DSDマルチch再生に対応した注目のミュージックサーバー「aria」

2015/05/18 季刊NetAudio編集部・浅田陽介
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ドイツ・ミュンヘンで現地時間5月14日(木)から開幕したハイエンドオーディオイベント「Munich HIGH END2015」。いま、ハイレゾリューションが世界的な盛り上がりを見せているが、ヨーロッパ市場ではよりライフスタイルが意識される傾向が強いようだ。とりわけ、利便性を実現するネットワーク再生機器が特に高い注目を集めている。

そんな動向にあるなか、これまではUSBオーディオとネットワークオーディオは基本的に別のものとして扱われてきたが、今回の同ショウでは双方をハイブリッドしたような製品が登場してきている。とりわけ注目したいのが、スペインに本拠を構える2008年創業のデジビット(DIGIBIT)が展示していた「aria」、そして「aria mini」と名付けられたミュージックサーバーだ。

2008年にスペインで創業したデジビットのCEO、Juan J. Perez氏。スペインの半導体メーカーにて社長を務めた後、デジビットを立ち上げ現在に至るという。今回は同氏からariaの詳細をお聞きした

■aria

まず、上級機となるariaから。OSには64bitのWindows Home Serverを採用し、本体内部には2TBのSSDもしくはHDDを内蔵。UPnPおよびDLNAに対応し、内蔵ストレージに保存した音源を再生できるのはもちろんのこと、同一ネットワーク上に保存された音源の再生や、外付けのUSB-HDDからの音源も再生することが可能だ。

フルサイズの筐体を採用したaria。USB DACとの接続ではDSDマルチch音源の再生もサポートするなど、ユニークな機能を満載したミュージックサーバーとなる

さらにマルチルーム再生にも対応するなど、ネットワーク再生機器として豊富な機能性を実装。コントロールには無料で用意されるiOS/Android用アプリ「iAria」を使用する。

再生に対応するサンプルレートは、最大で384kHz/32bit PCMと5.6MHz DSDまでとなっているが、非常にユニークなのは、背面に用意されたUSB A端子からUSB-DACと接続することでDSDマルチch出力をネイティブで行うことが可能な点だ。現時点でこのDSDマルチchに対応したDACは、eXasoundの「e28」のみとなるとのこと。

また、ariaはTEAC製のDVD-Rドライブを内蔵し、本体でのCDリッピング機能も実装。CDをインサートすると自動でリッピングを開始する仕組みとなっており、WAVやFLAC、AIFFやALACといったPCMフォーマットにて音源を保存することができる。dデータベースはaria独自のデータベースとなるSonata DB(クラシック専用データベース)のほか、主要なCDDBに対応。コントロールアプリ上の基本設定画面にて選択することで、簡単にメタ情報を記録することができる。

ariaは本体にTEAC製のDVD-Rを搭載。CDをインサートすると、自動でリッピングがスタートする仕組みとなっている

ハードウェア的な部分では、DACなしのデジタル出力専用機と、DACありのアナログ出力専用機(USB A端子によるデジタルオーディオ出力はいずれも実装)の2つをラインアップ。DAC非搭載バージョンでは、RCA同軸とBNC同軸によるS/PDIF出力、AES/EBU出力、RJ45を採用したI2S出力を装備。一方のDAC搭載バージョンでは、これらの代わりにRCAとXLR出力がそれぞれ1系統ずつ搭載される。

DACつきバージョンとなるaria DACの背面端子。RJ-45によるLAN入力とUSB A端子による外付けHDDの入力を装備。USB A端子によるデジタルオーディオ出力はDACなしモデルでも共通の使用となっている

電源についても通常はスイッチング電源を採用するが、オプションでよりノイズ特性に優れたリニア電源の選択が可能。ユーザーのスタイルに合わせてさまざまなスタイルが選べるというのも、本機の魅力と言えそうだ。


■aria mini

一方でaria miniは、ariaの主な機能をユニークな筐体へコンパクトに収めたモデル。基本的な機能はほとんどariaを踏襲している。主な違いは、内部ストレージ、出力端子、そしてCDリッピング時に外付けDVD-Rドライブを活用する点だ。内部ストレージは2TBのHDDと1TBのSSD、出力端子はRCA×1系統のアナログ出力とUSB A端子によるデジタルオーディオ出力のみとなっている。

ユニークなデザインを採用した上で、ariaの機能をコンパクトに凝縮したaria mini

aria miniのリアパネル。出力はRCA×1のアナログ出力とUSB A端子のデジタルオーディオ出力を装備。外付けのDVD-Rドライブを接続するUSB A端子を用意する点がariaとの明確な違いとなる


aria miniにはコントロール用のタブレットデバイスを置くスペースも用意

aria miniにはディスプレイは一切存在せず、電源ON時のスイッチのみ用意する

また、本体にはディスプレイ機能を省き、再生時のステータスは全てコントロールアプリ上で確認する仕組みとしている。それ以外の基本的な機能等は全てariaと同一となる。


■iAria

ariaとaria miniは、いずれもコントロールアプリiAriaにてコントロールする。

aria、aria miniのコントロールには専用のアプリiAriaを使用。基本画面も整然とまとめられた実に完成度の高いアプリとなる

iAriaは実に多くの機能を実装したコントロールアプリ。音源のブラウズはアルバムアートのタイル表示やテキストのみの表示など3パターンを選択が可能。注目は、非常に多くの項目でソートがかけられることにあり、一般的なアルバムやジャンル以外にもサンプルレートや作曲者、指揮者、楽器など実に多くの項目から聴きたい曲を瞬時に選ぶことができる。

アルバムやアーティスト名の他、サンプルレート(写真)や楽器、指揮者といった実に多彩なソートに対応する

楽曲選択の画面では写真のような画面のほかテキストのみの表示にも対応


こちらがメインの再生画面。キューの表示や楽曲のステータス、ボリューム等のコントロールキーなど基本的な情報や操作キーが絶妙に配置されている

アルバムアートの全画面表示にも対応する

また、ariaの内部ストレージやネットワーク上のNASに保存されている楽曲をコントロール端末側へ転送することも可能。マルチルーム対応となっているため、ゾーンの選択によって部屋やシチュエーションによって、一方はスピーカーで・一方はタブレット端末へヘッドホンを接続して、といったようにそれぞれ別々の楽曲を再生することも可能となっている。

楽曲のシーク時には、選択した位置へ正確にアクセスできるよう経過時間を大きく表示。こうした細かな工夫も注目のポイントだ

また iAriaらしい機能として、メタデータの編集機能にも注目だ。全部で18に及ぶ項目をすべてアプリ上から変更することが可能となっているのも大きな魅力といえそうだ。

こちらがメタデータを編集中の画面。全部で18にもおよぶ項目を編集することができる

この他、直感的な操作が可能なプレイリスト管理や、出力等の切り換え、ボリュームのシークなどの機能も非常に優れた使い勝手を実現。日本語表示にも対応するなど、コントロールアプリとしては極めて完成度の高いものとなっている。

なお、ariaとaria miniはいずれも近々日本での取り扱いが決定している。オープンプライスでの販売が予定されているが、現時点で実勢価格は未定とのことだ。

単純にネットワーク再生するだけではなく、USB-DACと接続することでさらなる再生能力を拡張するariaとaria miniは、今後の注目の製品スタイルを採用するモデルとして注目したい存在だ。

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