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公開日 2026/05/26 06:30
新興メーカーと老舗メーカーがしのぎを削る

“価格と性能の良バランス” ネットワークプレーヤー4機種一斉試聴。iFi/eversolo/ATOLL/ティアック

栗原祥光

ネットワークオーディオ強化月間も最終コーナーに突入。本格的にオーディオに取り組みたい方に向けた、クオリティを徹底追求したネットワークプレーヤーが数多く登場する。ここでは中堅価格帯、20万円 - 40万円台のネットワークプレーヤー4機種の一斉試聴をお届けしよう。


新興メーカーと老舗メーカーがしのぎを削る


「毎月1,000円ちょっとで1億曲を超えるハイレゾ音源が聴き放題」。そう聞いて食指が動かない人はいないだろう。そこでオススメなのが、20万円 - 40万円のネットワークプレーヤーだ。それは、価格と音質のバランスが取れた魅力機が多いからだ。


今回ご紹介するネットワークプレーヤー


iFi audio「NEO Stream 3」:178,200円 (税込)
eversolo「DMP-A6 Gen2」:209,000円 (税込)
ATOLL「MS120」:253,000円 (税込)
TEAC「UD-701N」:418,000円 (税込)



機能面からいえば、本稿で紹介する4機種すべてが可変ボリューム機構とデジタル入力機能を有している。言い換えるなら、プリアンプとしても使える。すでにオーディオ機器を一通り揃えている方はもちろんのこと、これからオーディオを始める人も、本機とパワーアンプ内蔵スピーカーがあればストリーミングサービスが愉しめる。


そして本稿で紹介する4ブランドのうち、iFiとeversoloは2010年代に誕生した新進気鋭、ATOLLとティアックはオーディオに長けたブランドで、プロダクトに対する考え方や音質の傾向はかなり異なる。それゆえ、それぞれに魅力が生まれたように感じた。


新進メーカーの2社は、どちらも音の鮮度が印象に残った。どこかボジョレー・ヌーヴォーを思い出させるフレッシュでスッキリとしていながら、フルーティーな味わい。フロントパネルに設けたディスプレイにはアートワークのほか、各種設定メニューを表示するなど、現代的な部分が見受けられる。


それは操作アプリにもいえ、実にスマホライクだ。価格の面も含めて若年層に受け入れやすい製品に仕上げられている。


いっぽう老舗はというと、音楽を味わうことに主眼を置いた造りであるように思えた。豊穣な香りを漂わせながら、しっかりとしたボディ感を伝えるあたり、ワインで例えるならブルゴーニュ産2年熟成のデイリーワインといえそう。ハレの日ではなく毎日愉しむのは、こういうテイストの方が良いかもしれない。


ボジョレーを飲みながら新しい音楽との出会いを祝う。デイリーワインで毎日の音楽ライフを楽しむ。どちらがお好みかは人それぞれ。では試聴に移ろう。


Qobuzから3曲をセレクト


ワインと料理にはペアリングやマリアージュがあるように、これらのコンポーネントの中には、その楽曲の魅力をより引き出すものがあった。今回は試聴曲としてQobuzで公開されている楽曲から、「ジャズ」「クラシック」「ポップス」の3曲を選んだ。



「ジャズ」は、「黄金のカルテット」で知られるジョン・コルトレーン・カルテットによる、その名もズバリ『カルテット・プレイズ』から、ミュージカル映画「メリー・ポピンズ」の劇中歌をカヴァーした「チム・チム・チェリー」を選んだ。レゾリューションは192kHz/24bit。


名盤『至上の愛』の次作にあたるインパルス時代中期の作品で、黄金のカルテットの爛熟ぶりが愉しめる1枚。3拍子のリズムに乗せて、コルトレーンのソプラノ・サックスの舞い踊る。楽器の質感と独特のビート、何よりジャズの空気を伝えるかをチェックした。


「クラシック」は、イヴァン・フィッシャー指揮、ブダペスト祝祭管弦楽団による『ラフマニノフ:交響曲第2番』から、ダイナミックな第二楽章を聴いた。レゾリューションは192kHz/24bit。


チャンネル・クラシックならではの直接音と間接音のバランスが見事な録音。透明感のあるアンサンブルがラフマニノフの旋律を美しく引き立てている名演だ。その美しさと、時折みせる力強さをチェックした。


「ポップス」の試聴曲として選んだのは、日本の歌姫MISIAが4月10日にリリースした配信限定シングル「ラストダンスあなたと」。レゾリューションは48kHz/24bitだ。


GRe4N BOYZ(GReeeeN)のリーダーであるHIDEと共に手掛けた楽曲で、疾走感のある楽曲に、MISIAの力強い歌声が心地よい。彼女の歌声はもちろんだが、間奏に入るギターの質感にも注視した。


スピーカーにBowers & Wilkins「802 D4」を、プリアンプにアキュフェーズ「C-3900S」、パワーアンプに同「P-7500」を用意。ルーターとの接続の間にはEnglish Electricのスイッチングハブを用いた。


iFi audio「NEO Stream 3」 - スッキリと見通しのよい音場感


英国のブランドiFi audioのNEO Stream 3は、2026年4月に発売したばかりの新商品。「NEO iDSD 2」で定評のDA変換部に、最新世代のストリーミングエンジンを搭載したコンパクト機だ。フロントパネル左側には小型のディスプレイが配置され、アートワークなどが表示される。



iFi audio「NEO Stream 3」178,200円(税込)。光メディアコンバーター(右)も付属するが、使用しないこともできる


対応するストリーミングサービスは、Qobuz Connect、TIDAL Connect、Spotify Connect、Roon、AirPlay。純正アプリは用意されているものの、それはセッティングとUPnP再生に特化しているようで、Qobuzを音源とする今回の試聴ではQobuzアプリを用いた。


製品に専用の光メディアコンバーターが付属するのがユニーク。色々と試してみたい向きには見逃せない存在で、そして使いこなしが要求されるアイテムになりそうだ。試聴は光メディアコンバーターのあり/なしの両方を行った。


光接続で聴く「ジャズ」はサッパリとした明るい音色。S/Nが高く優しい音触が印象に残った。RJ-45接続に変えると、骨太の表現へと変化しジャズの空気を伝えてくる。「クラシック」はボディサイズに依るのか、サウンドステージが小さい印象。光接続では情報量の多さ、RJ-45接続ではダイナミックな表現に心が躍った。


ツボにハマったのが光接続での「ポップス」だ。スッキリと見通しのよい音場にキレのあるリズムが楽曲の疾走感とマッチ。MISIAの歌声もパワフルさと透明感で訴求。ギターの表現も美しく、ディテールも細やかで感心した。



「NEO Stream 3」の背面端子。アナログ出力はRCAのみ。デジタル出力として光デジタル、同軸デジタル、AES/EBUなどを装備。またRJ-45のほか光ポート、M12(テレガートナー等に採用)も搭載と、接続性の多彩さでは他のプレーヤーと差別化が図られている




専用アプリ「iFi Nexis」。UPnPと各種設定に特化しており、ストリーミングサービスの再生はQobuz Connect等を使用する



eversolo「DMP-A6 Gen 2」 -コントラスト良く愉しく聴かせる


2014年設立のZidoo Technologyのオーディオブランドであるeversolo。そのラインナップの多くは一体型ストリーマーであり、「DMP-A6」は中核を担うモデルとして2024年に登場。


現行モデルである「DMP-A6 Gen 2」は、第1世代機から電源をリニア化したほか、2.4G+5GデュアルバンドWi-FiやBluetoothなどに対応した2025年発売のアップグレードモデルである。



eversolo「DMP-A6 Gen2」209,000円(税込)


Android OSを搭載することもあり、対応するストリーミングサービスは、TIDAL、Qobuz、Amazon Music、Apple Musicなど豊富。専用のコントロールアプリも用意されているが、今回はQobuzアプリから操作を行った。


楽曲を問わずコントラストをつけて愉しく聴かせる印象。「ジャズ」は一音一音に力が漲り、ジャズの空気を伝えてくる。ドラムが少し先走っているように聴こえるものの、音に厚みがあり低重心。奏者の肌に光る汗を感じさせた。


「クラシック」は、オーケストラという楽器が大波となってリスナーに押し寄せる印象。音場は奥行きが浅めなものの、左右に広く、金管楽器の鳴りっぷりの良さも手伝ってダイナミックな演奏が楽しめた。


「ポップス」は体温を感じる暖色系の音色。声に太さがあり、MISIAが今もR&Bの魂があることを想わせた。演奏に声が乗るのではなく、声に演奏が乗る再現。一体感のあるプレイバックに心が浮き立った。



「DMP-A6 Gen2」の背面端子。HDMIはテレビと連携するARCのほか、I2S出力用の端子も搭載。アナログ出力はRCAとXLRを搭載




eversoloの専用アプリ「eversolo Control」



ATOLL「MS120」 -フランスの美意識を感じる陽性の音色


フランスのATOLLは、ハーフラックサイズの「MS120」とフルサイズの「ST300 Signature」という2機種のネットワークプレーヤーをリリースしている。本稿ではMS120を紹介する。


対応するレゾリューションは、PCMが192kHz/24bit、DSDが5.6MHzと、それまでの2機種に比べるとやや見劣りするものの、ストリーミングで使うには十分なスペック。



ATOLL「MS120」253,000円 (税込)


DA変換にはBurr-Brown(TI)のICが用いられているという。フロントパネルのディスプレイはややレゾリューションが低いものの、文字が大きく見やすい印象を受けた。


対応するストリーミングサービスは、TIDAL、Spotify、Qobuz、Amazon Musicなど。専用アプリのデバイス認識が他アプリより比較的早く、また感覚的に操作できるように感じた。


前2機種のストリーマーとは異なる色香漂うプレイバックに、フランスの美意識を感じさせた。彼の地のオーディオ機器らしい陽性の音色で、愉しく聴かせることに長けたプレイバックだ。


驚いたのは「ジャズ」だ。コルトレーンが黄金のクラリネットを吹くや、場の空気がジャズ色に染まり、黄金のカルテットが紡ぐ音色に心が奪われた。大河のようなゆったりとしたビートに乗せて、コルトレーンのフリーキーなインプロビゼーションが実に楽しい。フランスの地はジャズが盛んと聞いたことがあるが、それを納得させるものがある。ATOLLで聴くジャズ、実にいいではないか。


「クラシック」は、ロシアの雄大さ、力強さより華やかさを前面に押し出した、開放的で典雅な鳴らし方。優雅さではないあたりが、フランスというお国柄なのだろうか。ノリの良さから聴き心地がよく、あっという間に演奏が終わってしまった……。


「ポップス」は、J-POPをシャンソンへと変えるあたりが面白い。スタジオ録音なのに、なぜか南仏の向日葵畑でパフォーマンスしているかのようなイメージで、陽性の音色に元気づけられた気がした。毎日このような演奏を聴いていたら、きっと人生はラテン色になっていたことだろう。



MS120の背面端子。アナログのRCA入力も搭載し、プリアンプ的にも使用できる




ATOLLの専用アプリ「ATOLL Signature 2」。Qobuzとも連携できる



ティアック「UD-701N」 - 音の品位が高く厚みも感じる


ティアックのフラグシップライン、リファレンス700シリーズのネットワークプレーヤー。この機種のみフルサイズのボディであり、アートワークを表示する液晶パネルを有していない。なにより価格が税込41万8000円と、他の3機種と比べてずば抜けて高額だ。



TEAC「UD-701N」418,000円(税込)


DA変換にディスクリートDAC「TRDD 7」を搭載し、PCMは384kHz/32bit、DSDは22.5MHzまで対応。外部リファレンスクロック入力も備えるなど、オーディオファイルにとってのお楽しみが用意されているのも嬉しいポイントだ。


対応するストリーミングサービスはTIDALとQobuzのみ。「TEAC HR Streamer」という専用アプリは、アイコンが小さくて押しづらい時もあったが、動作そのものは安定しており、使い勝手も悪くはなかった。


価格の違いは一聴して分かった。前3機種が音色や鳴り感で音楽を愉しませるのに対し、ティアックは楽器の質感で音楽を伝える。老舗ならではの手練れの、そして真面目な仕事ぶりだ。


「ジャズ」は、音の重なりを綺麗に表出させ、肉付きの良さや厚みを感じさせるプレイバック。ピアノのサイズが一回り大きくなり、より豊かな響きをリスナーに伝える。リズム隊が先走ることも、コルトレーンが駆け足になることもなく、一体となってジャズの魅力を伝える。


「クラシック」は、日本の美意識、そしてHi-Fiという言葉がピッタリ。S/Nが高く奥行きのある表現で、楽器の配置が手に取るようにわかる。音の品位が高く、その佇まいがとてもよい。弦楽器の美しさ、金管楽器の煌びやかさなど、細かな音を追うといったオーディオ的な楽しみと、楽曲全体の佇まいを観るという音楽的愉しみの両面で訴求する。そこに日本流オーディオの美意識を見た。


日本人歌手ということもあってか「ポップス」は水を得た魚のよう。しっかりと実が詰まった再現は、聴き手の満足度を高めてくれる。歌い方がとても丁寧でかつ伸びやか。どこかクールで静的な面も垣間見えるが、それもまた日本流オーディオの美意識であると思わせた。



「UD-701N」の背面端子。XLRとRCAのアナログ入出力を装備。また10MHzの外部クロック入力も装備する




ティアックの専用アプリ「TEAC HR Streamer」。Qobuzとも連携できる


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