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公開日 2025/09/26 06:30
美麗なデザインでもコラボレーション

藍井エイル監修、キレよくナチュラルで満足度の高いサウンド。QoA「Misty Blue」レビュー

岩井 喬

QoA「Misty Blue」オープン価格(予想実売価格:税込33,810円前後)


 


QoAとは? 藍井エイル監修イヤホン「Misty Blue」誕生の背景


まさに百花繚乱といえる完全ワイヤレスイヤホン(TWS)市場の広がり、そしてユーザーへの浸透が進む中、その反動ともいえる動き=有線イヤホンへの揺り戻しが始まっている。手頃な価格でありながら他にはない “モノ” としての存在感、コンセプトを打ち出し、近年評価を高めているのがQoAだ。


“Queen of Audio” の頭文字から名前を取った本ブランドは、2019年の創業以来、すばらしい音質、そして高品質で美しい製品を届けるため、常に細部にまで気を配ったものづくりに取り組んでいる。また、製品ごとにさまざまな声優/俳優/アーティストをアンバサダーに招き、時にはサウンドチューニングも共同で行っていること、製品名にカクテルの名前を付けていることも特徴だ。



このQoAの新製品として8月に登場した「Misty Blue」は、アニソンシンガーとして数多くの人気アニメのOP/EDテーマ曲を担当している藍井エイルとサウンド/デザインにおいてコラボレーションを行った、青色を基調としたカラーリングが目を惹くモデルである。 


 


4ウェイ4ドライバー構成のハイブリッド型。美しいフェイスプレート



それではイヤホンの仕様を見ていこう。


低域担当の6μm厚PET振動板採用10mmダイナミック型ドライバーと、中域担当のチタンコーティングPET振動板採用8mmダイナミック型ドライバー、中高域担当のQoAカスタムBAドライバー、高域・超高域担当のKnowles製BAドライバーを搭載する、2DD+2BAハイブリッド構成の4ウェイ4ドライバーIEMだ。


フェイスプレートは専任スタッフによるハンドペイントが施されている。Rch側には藍井エイルの名も記されており、立体感のある重層的で上質な仕上げがすばらしい。


 


4.4mmバランス、USB Type-C接続もOK。イヤーチップは3種付属



付属品も見ていこう。銀メッキOCC導体を用いた2Pin(0.78mm)着脱式ケーブルは4芯編み込みリッツ線構成を採用している。プラグ部は3.5mm/バランス対応4.4mm付け替え仕様だ。


アナログ出力を持たないスマートフォンとの接続に活用できる48kHz/16bit対応DAC内蔵USB Type-Cプラグ→3.5mmジャック変換ケーブルも付属する。



さらにイヤーチップは音質傾向の異なる3種類を用意。いずれもシリコン製で、芯が紫色のパープル・イヤーチップはボーカルを心地よく再生。芯の色がサイズごとに黄・白・黒と分かれている3カラー・イヤーチップはバランスの取れたサウンド。別ケースに収められたトランスペアレント・イヤーチップはサウンドステージの広さが特徴となっているそうで、それぞれ3サイズ(L/M/S)、合計9ペアのイヤーチップが同梱されている。


注目のMisty Blueの音については、QoAのサウンドポリシーである、ウォームな質感とマイルドで聴き疲れしない音質傾向を継承しながらも、ボーカルの豊かさ、輪郭感も持たせたリッチな低域、シンセやストリングスも分離よく浮かぶ、ヌケよく透明感のある中高域の再現性を追求したという。




 

まず3種のイヤーチップごとの音質傾向を確認してみた。


パープル・イヤーチップはキレ感と口元のハリをヌケよくスマートに描きつつ、ボトムの密度、重心の低さを持たせており、声の存在感が高い。ベースの伸びや厚みも自然だ。


続いてやや硬めのシリコンを用いた3カラー・イヤーチップは、バランス志向で低域方向もナチュラルにまとめ、高域方向の響きも落ち着きよく、全体的に穏やかな印象を受ける。ボーカルは音離れよく、艶の乗ったハリある描写となり、弦楽器も潤いよく描く。


そしてトランスペアレント・イヤーチップは音場の左右の広がりがよく、音像のエネルギーを程よく分散する傾向にある。ボーカルはキレよくシャープに際立ち、リズム隊もアタックをタイトに表現。この傾向を踏まえ、全体のバランスを見るなら3カラー・イヤーチップが妥当だが、ボーカルの表現力についてはパープル・イヤーチップの方が安定的であり、中高域にかけての色付けも控えめなため、以降の試聴はパープル・イヤーチップで行った。


 


Misty Blueの音質レビュー:ジャンル別試聴インプレッション


試聴ではハイレゾDAP、Astell&Kern「A&ultima SP3000」を用い、4.4mmバランス駆動で実施。2発のダイナミック型ドライバーによる中低域の充実度、特にサブベース帯域を余裕で鳴らし切る描写力、そしてボーカル帯域を無理なく伸びやかに聴かせる、カスタムBAドライバーにかけてのナチュラルなクロスオーバーの繋がりを実感できる。近年のトレンドである深く張り出すベースの豊かさと輪郭、キックドラムとの描き分けと低域方向の階調表現についても適切に感じられた。また高域にかけても過度な脚色を抑え、シンセやストリングス、ホーンセクションの響きも分離よく自然に引き立たせている。


クラシックのアンドレア・バッティストーニ指揮/東京フィルハーモニー交響楽団『マーラー:交響曲第5番』〜「第1楽章」(96kHz/24bit)は堂々としたオーケストラの密度とパートごとの粒立ち、分離のよさを実感。特に金管パートの透明度と芯の強さ、そして定位の明確さや余韻のきめ細やかさなど、空間表現の巧みさにも驚いた。大太鼓の僅かなアタック感も締まりよく描き出し、弦楽器の流麗な旋律も艶よく爽やかに聴かせてくれる。


ジャズ音源の『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜「届かない恋」(2.8MHz・DSD)ではホーンセクションのハリ鮮やかな浮き立ちと、リズム隊の弾力よく歯切れよいアタックをバランスよく両立。バックに据えたピアノやシンバルもクリアに響き、余韻も実に爽やかだ。ソロトランペットのトップノートも煌びやかさを抑えつつ、ハリ感をスムーズにまとめ、スタジオの残響感まで透明度高く表現している。


ロック音源のTOTO『TAMBU』〜「Gift Of Faith」(192kHz/24bit)は大口径キックドラムのエアー感を締まりよく聴かせ、アタックの芯を明瞭に引き出す。ベースラインは更に深くリッチに響き、より低い帯域をコントロールよく描写。エレキギターのフラッシーなリフも鮮明で、スネアやシンバルの響きもヌケよくシャープである。ボーカルは細身であるが、口元の動きも滑らかで、低域方向のエナジーに負けない明瞭さで描き出す。


丁「呼び声」(TVアニメ『Unnamed Memory』オープニング主題歌/96kHz/24bit)のボーカルはしっとりと落ち着きよくボトムの安定感も十分に表現。口元の動きもハリ滑らかで自然なウェットさを感じられる。ハープやアコギ、ストリングスといった弦楽器の立ち上がりの煌びやかさ、スムーズなリリースと余韻の爽快感のバランスも絶妙だ。逞しく張り出すベースの量感と引き締め、キックドラムのタイトさとの両立も見事で、音数の多さに負けない、音場のクリアさを維持している。


 


藍井エイルの楽曲では、ボーカルの存在感が際立つ


最後に藍井エイルの楽曲もいくつか確認してみた。彼女ならではのキレのよいアップテンポなものとして「アイリス」と「流星」、そして対極にあるバラードの「約束」である。「アイリス」はボーカルの音離れがよく、輪郭もきつくなく明瞭に際立つ。リズム隊との分離もよく、厚みとキレのバランスも整い、スピード感がより高まる印象だ。ギターの芯の太さも印象的で、奥に定位するストリングスのほぐれ感、旋律のクリアさも申し分ない。パートごとの前後感も明確に描き出しており、音場再現力の高さも確認できた。


「流星」についても、この音場のレイヤー表現の巧みさを冒頭からのシンセとエレキギターの重なり具合で実感できる。ボーカルのキレ味、シャープな口元の動きと呼応するようなピアノのアタックは幾分ブライトで透明度が高く、リズム隊の厚みと好対照。ベースのハリもよく、その旋律の流れも鮮明だ。そしてドラムワークの緻密さも粒立ちよく引き出しており、情報量の多さに圧倒される。


一方、「約束」はよりナチュラルに描くピアノやストリングスの潤いと鮮度のよさ、適度なボトムの密度を持たせたボーカルのしっとりとした描写が落ち着きを生む。ベースの弾力のよさ、密度の高さが楽曲の安定感をより高めているように感じられた。


Misty Blueは2発のダイナミック型ドライバーによって、みっちりとした濃度の高いサブベースにおける表現と、藍井エイル楽曲に代表される、切れ味よいスピーディーなリズム隊のアタックと密度よい楽器の存在感を適切に描き分けられる能力を持っている。


加えてクラシックやジャズといったアコースティックなジャンルの楽曲でも空間情報を正確に捉え、定位や余韻の階調性においても満足できるレベルで表現。もちろん楽器そのものの音色感も素直に捉えていることも利点であり、なによりボーカルの存在感の高さ、程よい倍音の立て方による輪郭の明瞭さ、音ヌケのよさ、ナチュラルなボディ感を実現していることが最大の特長といえるだろう。


Misty Blueのサウンドは、藍井エイルファンだけでなく、色々なジャンルの音楽を満遍なく楽しむ数多の音楽ファンにとっても “福音” といえるような、満足度の高いものとなっている。少し背を伸ばして良質の有線イヤホンを手にしてみたいというワイヤード・ビギナーにとってもMisty Blueは絶好の選択肢となるはずだ。



 


QoA「Misty Blue」製品仕様


SPEC ●型式:ハイブリッド型 ●ドライバー構成:4ウェイ4ドライバー(8mmダイナミック型×1、10mmダイナミック型×1、カスタム仕様BA型×1、Knowles製BA型×1)●再生周波数帯域:非公開 ●インピーダンス:30Ω ●感度:105dB ●ケーブルの長さ:約1.2m(0.78mm 2pin着脱式) ●付属品:イヤーチップ3種9ペア、着脱式プラグ(3.5mm/4.4mm)、USB Type-C to 3.5mm変換アダプター、レザー収納ケース、2ポケットIEMポーチ、クリーニングクロス




(提供:サウンドアース)


 

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