公開日 2026/07/24 06:30

吉永小百合 × 二宮和也主演、音楽は坂本龍一! 原爆で亡くなった息子の亡霊が母の前に現れて…。

【第229回】ミヤザキタケルの気軽にホームシネマ

サブスクで映画を観ることが当たり前となりつつある昨今、その豊富な作品数故に、一体何を観たら良いのか分からない。そんな風に感じたことが、あなたにもありませんか。本コラムでは、映画アドバイザーとして活躍するミヤザキタケルが水先案内人となり、選りすぐりの一本をあなたにお届け。今回は2015年公開の『母と暮せば』をご紹介します! 

                   ◇

 

『母と暮せば』
(配信:Netflix / Amazon Prime Video / U-NEXT)

『母と暮せば』豪華版Blu-ray:7,370円(税込)/Blu-ray:5,170円(税込)/DVD:4,180円(税込)
発売/販売元:松竹
(C)2015「母と暮せば」製作委員会
※2026年8月時点の情報です

2010年に他界した劇作家・井上ひさしが、自身の戯曲「父と暮らせば」と対をなす作品として構想していた物語を、名匠・山田洋次監督が引き継ぎ映画化したヒューマンドラマ。

1948年8月9日、長崎。助産師として暮らす伸子(吉永小百合)の前に、3年前に原爆で亡くなったはずの息子・浩二(二宮和也)が現れる。その日を境に度々姿を現すようになった息子と思い出話や他愛のない会話を続ける伸子であったが、浩二の恋人であった町子(黒木華)の話題となり……。

最愛の息子の亡霊が、年老いた母親の前に現れる。それだけ聞くとファンタジーものであったり、涙なしでは見られない感動ものであることが想起されるだろう。無論、そういった要素も大いにあり、二宮和也演じる浩二の快活さも相まって忘れてしまう瞬間もある。

しかし本作の根底にあるのは、まず“戦争”。戦争がもたらす理不尽さや悲惨さの上に成り立つファンタジーや涙であることを痛感させられる本作。夫と二人の息子の命が戦争で奪われ、可能性に満ち溢れていた若者の未来が突如として絶たれ、共に歩む将来を思い描いた相手がいなくなる。

伸子、浩二、町子、三者三様の悲しい現実がそこにはあり、どう足掻いても時は元には戻らない。それでもなお日常は続き、人は生きていかなければならない。そんな状況下で描かれていくそれぞれの苦悩が、現代を生きる私たちに戦争がもたらすものが何たるかをとても静かに示してくれる。

戦場の悲惨さを描くのもまた意義のあることだが、戦争によって破壊された日常を描くことにもまた意義がある。その事実を実感させてくれる良作です。

(C)2015「母と暮せば」製作委員会

※本稿記載の配信サービスは執筆時点のものになります。

ミヤザキタケル
1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 宝島社sweetでの連載をはじめ、WEB、雑誌、ラジオなどで、心から推すことのできる映画を紹介。そのほか、イベント登壇、MC、映画祭審査員、BRUTUS「30 人のシネマコンシェルジュ」など、幅広く活動中。

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