公開日 2026/07/08 06:30

RGB Mini LED、QD-OLED、量子ドット。 ~4Kテレビの高画質技術が目指すものとは?~

連載「『見る』から『観る』へ変わる! 高画質の“ミカタ”」
甲野和彦
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RGB Mini LEDや量子ドットは高輝度化と広色域化の両立を目指す

4Kテレビ市場では、近年、新しい高画質技術が次々と登場している。

量子ドット(Quantum Dot)をはじめ、RGB Mini LED、QD-OLED、プライマリーRGBタンデムなど、各パネルメーカーやテレビメーカーが独自のアプローチで画質性能の向上を競い合っている。これらの技術は名称も具体的な仕組みも大きく異なるが、その根底には共通した方向性がある。それは、高輝度化と広色域化を両立することにより、明るく鮮やかな色の表現を可能にすることである。

この流れの背景にあるのが、HDR(High Dynamic Range)映像の普及である。現在では、UHDブルーレイ、4K-VODサービス、4K放送など、多くの映像コンテンツがHDRで制作・配信されている。

HDRでは従来の映像に比べて輝度レンジが大幅に拡大したが、単に映像が明るいだけではない。BT.2020などの広色域技術との組み合わせも含めて、これまで難しかった明るさと色の鮮やかさを同時に満たす映像表現が可能になった。例えば、夜景のネオンサイン、夕焼けに染まる空、花火の閃光、ライブ会場のレーザー光などは代表的な例である。

HDRで、 夕焼け空やライブ会場のレーザー光など、それまで難しかった明るさと色の鮮やかさを同時に満たす映像表現が可能になった

このような明るく鮮やかな色の表現力は、「カラーボリューム」として捉えるとわかりやすい。カラーボリュームとは、従来から2次元平面で表されてきた色域に対して、輝度方向を加えて、色と輝度を統合した3次元の立体で表す考え方である。

カラーボリュームが大きければ、単なる明るさや色の鮮やかさだけでなく、明るさと色の鮮やかさを同時に満たす映像表現が可能になる。HDR映像は、従来と比べてこのカラーボリュームが拡大しているのだ。

※画像引用元:ソニー公式サイト「What's HDR

最新4Kテレビの高輝度化と広色域化は、単なるスペック競争ではない。カラーボリュームが拡大したHDR映像コンテンツの普及に伴い、これにテレビとして対応する動きとして捉えれば、その必要性が理解できるだろう。そこで求められるのは、単なる高輝度化や広色域化ではなく、明るさと色鮮やかさを同時に実現する「高輝度化と広色域化の両立」である。

ところが、この2つを同時に実現することは必ずしも容易ではない。従来のディスプレイ構造には、高輝度化と広色域化が相反する側面があるのだ。

この課題に対するひとつの回答が「高純度RGB光源」である。

量子ドット、RGB Mini LED、QD-OLED、プライマリーRGBタンデムなどの技術は、いずれもこの考え方をベースとして高輝度化と広色域化を両立し、明るく鮮やかな色の実現を目指していると考えることができる。

本稿では、この「高純度RGB光源」という共通点に着目することにより、最新4Kテレビの画質技術を読み解いてみたい。

液晶テレビと有機ELテレビの基本構造

「高純度RGB光源」を理解するために、まずは液晶テレビと有機ELテレビの基本構造から見ていこう。

液晶テレビでは、背面から光を照射するバックライトが必要だ。バックライトで白色光を照射し、その透過率を液晶デバイスで制御し、R(赤)、G(緑)、B(青)のカラーフィルターを通すことでフルカラー化している。

一方、有機ELテレビは各画素が自ら発光する自発光型ディスプレイである。現在の主流であるWOLED(White OLED)方式では、有機EL層が画素ごとに白色光を発生し、R(赤)、G(緑)、B(青)のカラーフィルターを通すことでフルカラー化している。

カラーフィルター特性で広色域化すると光の利用効率が低下する

ここで、いずれの方式においても、色はカラーフィルターを用いて作られていることに注目してほしい。

光源の白色光には、赤・緑・青をはじめとするさまざまな色の波長成分が含まれている。カラーフィルターは、その中から赤・緑・青それぞれに対応する波長帯域を通し、それ以外の光を吸収することでRGBの各色を作り出している。ただし、実際には完全な単色だけではなく、ある程度の幅を持った波長帯域を通している。

この波長帯域を狭くして、より限られた波長だけを通すようにすると、不要な色の成分が減り、RGBはより単色に近い色になる。これを色純度が高いという。例えば赤であれば、オレンジや黄色が混ざった赤よりも、純粋な赤の方が鮮やかな色を表現できる。RGBそれぞれの色純度が高まるほど、ディスプレイが表示できる色域が広がるのである。

しかしこの方法では、色純度を高めるほどカラーフィルターで吸収される光が増え、光の利用効率が低下して高輝度化には不利になる。カラーフィルターの特性だけに頼る方法では、高輝度化と広色域化の両立は難しいのである。

高純度RGB光源によって高輝度化と広色域化の両立を目指す

そこで、従来からテレビの広色域化においては、カラーフィルターの改良と並行して、白色光源そのものを高純度なRGB光に近づけるというアプローチが追求されてきた。

これは、カラーフィルターを通す前の白色を、最初から色純度の高いRGB(赤・緑・青)の成分を持つ光にする、という考え方である。

光源そのものが高純度なRGB成分を持っていれば、カラーフィルターは各々が必要な色の成分をそのまま通し、不要な色の成分を少しだけ除去すればよくなる。その結果、より多くの光を利用できるようになり、高輝度と広色域を両立しやすくなるというわけだ。

このアプローチはSDR時代から長く取り組まれてきたが、HDR時代になってその必要性が大幅に高まったと言えるだろう。近年のMini LEDテレビや有機ELテレビは、この考え方を徹底的に追及することで、高輝度化と広色域化の両立を図っているのである。

「量子ドット」は「波長変換」で高純度RGB光源を実現する

その代表例が量子ドット(QD:Quantum Dot)技術だ。

量子ドットは、「波長変換」によって高純度RGB光源を実現する技術である。液晶テレビでは、発光効率の高い青色LEDをバックライト光源とし、その青色光の一部を量子ドットの性質を持つシートによって高純度の赤色光や緑色光に変換することで、高純度のRGB光源を実現している。

これにより、色域が拡大するとともに、カラーフィルターで吸収される光を減らすことができるため、高輝度化にも有利である。

「QD-OLED」は「青色有機EL+波長変換」で高純度RGB光源を実現する

量子ドットの技術は、最近では有機ELテレビにも応用されており、QD-OLEDと呼ばれている。QD-OLEDは、「青色有機EL+波長変換」によって高純度RGB光源を実現する技術である。

青色有機ELを光源とし、その青色光の一部を量子ドットによって高純度な赤色光や緑色光に変換することで、高純度のRGB光源を実現している。

これにより、色域が拡大するとともに、高輝度化にも有利である。

「プライマリーRGBタンデム」は「有機EL発光層」で高純度RGB光源を実現する

有機ELテレビで最近話題に上るのが、プライマリーRGBタンデム方式だ。

プライマリーRGBタンデムは、「有機EL発光層」の改善で高純度RGB光源を実現する技術である。有機ELの発光層を複数積層し、それぞれの層に赤・緑・青などに最適化した材料を用いることで、高純度のRGB光源を実現している。これにより、広色域化と高輝度化の両立を図っている。

「RGB Mini LED」は「RGBバックライト」で高純度RGB光源を実現する

液晶テレビの技術として最近話題に上るのが、RGB Mini LED方式だ。

RGB Mini LEDは、「RGBバックライト」で高純度RGB光源を実現する技術である。

従来の白色バックライトの代わりに、赤色・緑色・青色のMini LEDを光源として用い、高純度なRGB光源を実現している。さらにR・G・Bのバックライトを各々独立して制御できるため、高輝度化と広色域化のいずれにも有利な方式である。

高純度RGB光源がHDR映像の豊かな色表現を支える

ここであげたさまざまな技術は、その具体的な仕組みや構造は各々大きく異なる。また、その効果は必ずしも高輝度化と広色域化の両立だけはなく、それぞれに固有の特徴やメリットが存在している。

しかし、いずれの技術も、高純度RGB光源によって高輝度化と広色域化を両立し、明るく鮮やかな色の再現を可能にするという共通した方向性を持つ。そのことが、HDRを中心とするカラーボリュームの大きな映像、すなわち、明るく鮮やかな色の再現につながるのである。

各社の最新4Kテレビは、いずれも優れたカラーボリューム再現性を有している。その性能を活かして、明るく豊かな色の表現をぜひとも堪能してほしい。

甲野和彦

1961年京都市生まれ。国内大手電機メーカーにおいて、光ディスクおよび高画質技術の研究開発に従事。主に映像の記録再生機器分野において、長年にわたり画質責任者として多数の製品開発に関わる。映像コンテンツの画質にも造詣が深い。2026年に独立し、現在は画質分野のコンサルティングおよび執筆活動を行なっている。

■取材・執筆:甲野和彦
■編集担当:岡本 雄/長濱行太朗

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