<HIGH END>JBL「Summit EVEREST」降臨。3基コンプレッションドライバーの狙いを山之内 正氏が読み解く
昨年のミュンヘンに続き、今年のウィーンでもJBLのスピーカー群がハイエンド・ショウで特別な存在感を発揮した。今回は創業80周年を記念するイベントも行われSummitシリーズの頂点に君臨する「EVEREST」と「K2」が一気に公開された。
今回は「EVEREST」のみだが、ブース内のリスニング環境でサウンドを体験することができた。第一印象は動画でも紹介したが、その後同社のブースでじっくり聴く機会があったので、技術的な注目ポイントとともに概要をお届けしよう。
プロジェクト・エヴェレストのフラグシップにふさわしく、今回の2機種には注目すべき技術を数多く投入している。特に新設計のコンプレッションドライバーは、3つのデュアル・ダイアフラムドライバーの音響エネルギーを1つに集約してホーンから放射する独自構造を採用しており、音圧と音域の余裕は別格と言って良い。
写真を見ていただければわかる通り、3つのドライバーの音響をホーンに導くエクスパンション(拡張)マニホールドのソリッドな質感と精密感は異彩を放っている。音質をきわめつつ複雑な形状を実現するために複数の素材や製造方法を検討した結果、3Dプリンター技術でアルミ材から成形する方法にたどり着き、共振や固有音を排した理想的な音響特性を獲得したという。今回のEVERESTとK2の技術的なハイライトと言えるだろう。
3つのドライバーユニットの取付角度を吟味することで、音圧を最大化するとともに、中高域の位相特性を精密に揃えていることはいうまでもない。EVERESTは2インチ口径の「D2820」、K2は1.5インチ口径の「D2815」として、それぞれ850/1,080Hz以上の高域再生を担う。JBLが長年培ってきたコンプレッションドライバーの技術をフルに投入した特別なドライバーユニットであり、Sonoglass HDIホーンの形状も同ドライバーに最適化しているとのこと。
EVERESTは10インチ口径のミッドバスと15インチのウーファーをそれぞれペアで搭載し、K2では同一口径の低域ユニットを1個ずつ採用する。振動板は3層構造のカーボン・セルロースのハイブリッドコンポジット材で、俊敏な低音再生を狙っている。
クロスオーバーネットワークは多数のコンデンサーを集積させる「MultiCap」構成が特徴で、写真の通りずらりと並ぶコンデンサー群の存在感の強さに目を奪われる。
大容量コンデンサーで構成するネットワークに比べ、エネルギー損失を最小化し、透明感の向上とダイナミックレンジの拡大をもたらす効果が期待できるという。低域、中域、高域用のターミナルが独立しているので、バイアンプ/バイワイヤリング、トライアンプ/トライワイヤリングにも対応する。
新設計のコンプレッション+ホーンが放つ高密度かつハイスピードな中高音の浸透力の強さが新世代のEVERESTの最大の特徴であり、旧シリーズからの着実な進化を聴き取ることができた。サックスやトランペットは息の勢いが生演奏さながらに感じられ、マウスピースから漏れる空気の感触まで生々しく再現。圧倒的な音圧感だけでなく、Sonoglassホーンの巧みな設計に由来する指向性の広さも尋常ではない。ヴォーカルやアコースティックギターは付帯音が皆無で鮮烈、表情の豊かさに息を呑む。
デモンストレーションでは15インチウーファーと10インチミッドバスがもたらす圧倒的な低音のスケール感も積極的にアピールした。
ジェフ・カステルッチ「サウンド・オブ・サイレンス」やマルクス・フィリップ「ピンクパンサーのテーマ」に代表される「低音トラック」を大音量で再生し、部屋のなかだけでなく、ドアの外側に広がる広大なスペースまで深々とした低音で満たす実力を見せつけた。エアボリュームに余裕のある空間で鳴らしたときにEverestが放つ低音の量感は他では真似のできない領域に到達しており、別格と言うべき中高域の音響エネルギーにもまったく引けを取らない。
ウーファーとミッドバスをシングル構成としたK2は展示のみで、ウィーンでは再生音を確認できなかったが、6月のOTOTENでは日本国内でも披露された。K2は身近なリスニング環境でも真価を発揮すると思われ、期待が高まる。


