ネットワークスイッチの導入は、早い方が吉!DELA「S100/3」は空間描写性を大きく高める
ネットワークオーディオの音質を大きく左右する存在として、ネットワークスイッチの重要性にいち早く注目してきたDELA(デラ)。同社の最新モデル「S100/3」が登場、前機種との比較も交えて、その進化と実力をオーディオ評論家の山之内 正氏が検証した。
オーディオ用ネットワークスイッチの牽引役
20年近くネットワークオーディオで音楽を聴いていると、思いがけない現象に出会うことがある。リンの「KLIMAX DS」を使い始めてまもない頃、NASが増えたので、ポート数に余裕のあるバッファローのスイッチングハブ(ネットワークスイッチ)を購入した。それまで使っていた簡易なハブから8ポートの業務用モデルに変えたのだ。価格は忘れたが数万円で購入できた記憶がある。オーディオ機器に比べると格安と言ってよい。
音の変化は半端ではなかった。録音現場の空気が伝わるほど空間情報が豊富で、声や楽器のイメージは立体的で実体感がある。それまで聴いていた音はなんだったのか。LANケーブルで音が変わるのは体験していたが、その比ではなかった。
その数年後、オーディオ用のNASが登場し、それまで周辺機器と思われてきたNASが、実はオーディオコンポーネントに匹敵する重要な製品であることが知られるようになった。
口火を切ったのは、バッファローがオーディオファン向けに2014年に立ち上げた新ブランド「DELA」から登場した「N1Z」「N1A」だった。その後、同シリーズはストレージの領域を超えて性能と機能の進化を遂げ、オーディオサーバーとして確固たる地位を築いたのはご存知の通りだ。
DELAの開発陣はその頃から、ハブが音質改善に寄与することを認識し、NASと並行して開発を進めていた。そして、ブランド創設から5年後の2019年、オーディオ向けのネットワークスイッチ第一弾「S100」の発売に至る。
専用設計の電源回路や入念なノイズ対策が功を奏してS100はオーディオグレードと呼ぶにふさわしい性能を獲得し、SFPポートもいち早く搭載していた。S100や限定モデルのS10は複数のメーカーが相次いで開発に着手するきっかけとなり、DELAはオーディオ用スイッチングハブの重要性を伝える牽引役の役割を演じた。
リニア電源も投入したフラグシップ機「S1」
だが、DELAの取り組みはそこで完結したわけではない。
電源回路を強化してポート構成を見直した第2世代機のS100/2を2022年に導入し、2024年にはネットワークスイッチのフラグシップ「S1」を完成させた。
フルサイズの筐体にオーディオグレードのリニア電源を投入したS1は高性能ネットワークスイッチの基準機として高い評価を獲得し、ポートごとの1Gbps/100Mbps/10Mbpsの速度切り替えや10Gbps対応のSFP+など、先進的装備を投入したことでも注目を集めた。
フラグシップ機と同じチップセットを投入した第三世代機
そして、初代機S100から7年を経た2026年、DELAが満を持して投入したのが、ネットワークスイッチの第3世代となるS100/3だ。ハーフサイズのコンパクトな筐体などS100シリーズのコンセプトを受け継ぎながら、メインボードをはじめとする中身を大胆に見直し、SFPポートの増設など、ポート構成も一新している。
今回のリファインが大規模になった理由は、S1の開発で得たノウハウを惜しまず投入したことにある。チップセットはS1と共有したことをはじめ、クロックをNDK社の低位相ノイズグレードに格上げしたり、6系統のRJ45ポートを100Mbps×2系統、1Gbps×4系統という新たな構成に見直したこともその一例だ。
100Mbpsのポートを使用する際の互換性と安定性を大幅に向上させたことも、S1から継承したノウハウのひとつで、最新のネットワークオーディオ機器への柔軟な対応を果たしている。
SFPポートは従来の2系統から3系統に増設し、接続機器が増えても対応しやすくなった。ハイエンドだけでなく、ミドルレンジのネットワークオーディオ機器にもSFPポートを採用する例が増えるなど、最近の環境変化にいち早く対応した形だ。
背面のLEDインジケーターを消灯すると、電源オンを知らせる前面LEDが暗い表示に切り替わる。音楽を聴く時に照明を落とすリスナーやシアターユーザーへの配慮で、実際のユーザーからの要望に応えたきめ細かい改良だ。


空間描写と音楽情報の密度が向上
アキュフェーズとB&Wによるリファレンスシステムに組み込むネットワークスイッチとしてS100/2とS100/3を用意し、順次切り替えながら試聴を進めた。オーディオサーバーとしてDELAのN5、ネットワークプレーヤーはエソテリックのN-05XEを使用。
N5に保存したファイル音源に加え、N-05XEでQobuzを再生する際にもS100/2またはS100/3を経由している。
S100/2からS100/3に繋ぎ替えた時の再生音の変化は、楽器の定位やステージの奥行きなどを識別する空間描写力の向上として聴き取ることができた。
反田恭平がソロを弾いたラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は、第3楽章のピアノとオーケストラの間の相互作用がより強く感じられるようになった。演奏の細部が聴き取れるというレベルを超え、呼吸のやり取りや表情のシンクロなど、演奏の高揚を伝えるさまざまな情報が増えた印象だ。
ジョン・ウィルソンによるコープランド「市民のためのファンファーレ」は強烈なグランカッサの一撃がもたらす最大音圧から消え入る余韻の揺らぎまで、急峻なダイナミックレンジの変化を精緻に描写し、音楽情報のやり取りが一層きめ細かくなっていることに気付く。
ドミニク・フィス=エメの「Home」を聴くと、ボディ感を確保しつつ、声のにじみや硬さがとれて、ベースとのセパレーションが向上していることが分かる。その変化は微妙なものだが、何度聴いても同じ結果になるので、再現性の高い変化と言える。
ポート速度による音の違いを検証
以上はルーター、サーバー、プレーヤーいずれも1GbpsのRJ45ポートに接続した環境で確認した結果だが、ネットワークスイッチとN-05XEの間を100Mbps接続に変えた状態でも同じ音源を聴いてみた。
試聴室の再生環境ではファンファーレの金管楽器のハーモニーの柔らかさとトランペットの楽器イメージのフォーカス感などに微妙な変化が聴き取れるが、空間情報と音楽情報の密度に大きな違いはなく、音調も変わらない。
一部の音源(ドミニクなど)でベースの立ち上がりやキックドラムの瞬発力に差が出る例もあったので、速度による違いを試してみる意味はあると思う。
SFPケーブルによる音の違いも検証
最後にN-05XEとS100/3間の接続をSFPに変更し、光ファイバーとDELAのダイレクトアタッチケーブル「C1」の再生音も確認した。
ファンファーレとオーケストラの瞬発力、ドミニクの歌を支えるベースの芯の強さなど、力強さを求めるなら介在プロセスが少ないC1での伝送が優位に立ち、遠近感など空間描写では、光ファイバーが僅かにリードする印象だ。
ネットワークオーディオに本気で取り組むなら、ネットワークスイッチは早い段階で導入することをお薦めする。いずれ必要となるものだし、これから買うならオーディオグレードの製品を選ぶべきだ。S100/3は最有力候補になる。
BUFFALOからDELAへネットワークスイッチの歩み(編集部)
2013年、BUFFALOから「BSL-WS-G2108M/A」がオーディオ向けスイッチとして企画・商品化された。翌2014年には「DELA」ブランドが誕生。「N1Z/N1A」にはPLAYERポートとしてハブ機能が搭載された。
2016年には、メルコシンクレッツ社として独立。「BSGS2016/A」が「BSL-WS-G2108M/A」の後継として登場。そして2019年、DELAブランド初の専用ネットワークスイッチ「S100」が発売された。100Mbps/1GbpsのRJ45ポートに加え、SFPポートを備え、ネットワークオーディオにおけるスイッチの重要性を広く知らしめた。
その後、2020年の「S10」、2022年の「S100/2」、2024年のフラッグシップモデル「S1」へと進化。2026年には、S1で培った技術を受け継ぐ「S100/3」が登場した。
さらに同年には、「BS-GS2016/A」を受け継ぐ、カスタマイズされたスイッチとケーブルのセット「DELAセレクション AS-001」も登場。
DELAのスイッチへの探求は、10年以上にわたって続いている。(編集部)
(提供:DELA)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.202』からの転載です























