【特別企画】リッピングドライブ5モデルの音質を検証

DELAのアクセサリーはファイル再生の強力な味方。最新ドライブとハブの実力をチェック!

山之内 正
2020年11月25日
ネットワークオーディオ用ミュージックサーバーのブランドとして知られるDELAだが、実はファイル再生にまつわるさまざまなアクセサリーにも力を入れている。特に注目すべきは、CDリッピングやリアルタイム再生に活用できるディスクドライブ「Dシリーズ」と、いまネットオーディオでもっとも熱いジャンルとも言えるネットワークハブ「Sシリーズ」である。外部リニア電源の導入でも著しい変化を見せるDELAの最新アクセサリーシリーズ4モデルを検証してみよう。

■高音質なCDドライブはリッピング用途としても重要

ネットワークオーディオがハイファイの領域で市民権を得たのはこの10年ほどのことだが、その短い間に関連技術は放物線のように急激な進化を遂げた。その進化はもちろんいまも進行中で、ネットワーク再生の音質改善技術は着実に成果を上げている。

オーディオ用NASの価値を創出したDELAはその新たな進化に挑戦する有力ブランドのひとつだ。同社が「ミュージックライブラリー」と呼ぶオーディオ用NASのブラッシュアップに加え、CDドライブやスイッチングハブなどネットワーク再生に欠かせない周辺機器の分野でもDELAブランドの名を冠するにふさわしい製品を相次いで投入し、その勢いは衰える気配を見せない。


USB接続用光ディスクドライブ D100 70,000円(税抜)
USB接続用光ディスクドライブ D10 238,000円(税抜)
USB接続用光ディスクドライブ専用リニア電源ユニット付属 D10P  600,000円(税抜)
スイッチングハブ専用リニア電源ユニット付属 S10  600,000円(税抜)



DELAの2020年モデルのなかから、今回は、CDドライブのD100、D10とD10P、ネットワークスイッチ(スイッチングハブ)のS10に焦点を合わせて音質と使いこなしを紹介しよう。

D10のオリジナルは2018年に限定モデルとして発売されたが、気づいたときには完売という人気ぶりで、高品質なCDドライブの需要の大きさを改めて思い知らされた。そのD10のリバイバルとしてD10(2020モデル)とD10P(受注生産)が新たに登場。D10Pはリニア電源ユニットを組み合わせた仕様で、両機種合わせて30台と、今回も限定生産で販売される。もう少し生産台数を増やしてもいいのではと思うが、限定とはいえ今回改めて生産がスタートしたことは歓迎したい。


DELAのディスクドライブ「D10」
D10はN1やN10と組み合わせて、CDのリッピングに活用することを想定したCDドライブだが、ハーフサイズの筐体はN100シリーズとの組み合わせに最適だ。また、DELAのオーディオ用NASとの組み合わせだけでなく、パソコンと組み合わせて、CDをリッピングしたり、パソコンの音楽ソフトで、CD再生を楽しむ用途でも真価を発揮する。今回はdBpowerampをインストールしたMacBookと組み合わせてリッピングを行い、D10とD10Pのクオリティを検証することにした。


D10のリアパネル。PCやプレーヤー等に接続できるUSB3.0 typeB端子と、USBメモリやUSB-DACを接続できるUSB typeAを搭載

D10P電源ユニットのリアパネル。専用のDCケーブルも同梱される。S10の電源ユニットも同じ
dBpowerampは高音質リッピングの定番ソフトのひとつで、AccurateRipにも対応している。リッピングの精度を確保する上でリッピングソフトに何を使うかはとても重要だが、それと並んで、CDドライブの性能にもぜひ目を向けるべきだ。高い読み取り精度を確保していることはいうまでもない。読み取りエラーの頻度やデータ補間の有無がリッピングしたデータに影響を与えることはよく知られているが、信頼性や制振性など、ドライブ自体の物理的・機械的な性能にも気を配りたい。パソコン周辺機器という属性で判断してしまうと油断が生じる。特に、ドライブで再生した、CDをそのままリアルタイムで聴く場面も少なくないことを考えると、ハイファイコンポーネントの一部とみなして製品を選ぶことが大切だ。


Macへのリッピングデータ保存は、dBpowerampを使用。リッピング時に楽曲タイトルに【D10】などの型番を加えて別名で保存。Audirvanaから再生をした
■CDドライブを5種類でリッピングしてデータを聴き比べ

D10とD10Pでのリッピングと並行して、聴き比べることを想定してD100の旧モデルと現行モデル(D100-C-J)でも同じ音源を取り込んでおいた。さらに、かなり使い込んだアップル純正のCDドライブも参考のために用意している。つまり、リッピングに使ったドライブは計5台ということだ。音質の違いをどこまで聴き取れるのか、興味は尽きない。


D10/D10PとD100は、中央にディスクトレイ、左に電源ボタン、右にイジェクトボタンを搭載する。なおD10とD100の違いは、D10には鋳鉄製フットを採用、アルミ製サイドパネル、天面内部処理など、より物量が投入されている
用意したCDはジェーン・モンハイトの《テイキング・ア・チャンス・オン・ラヴ》。試聴用のレファレンスディスクとして頻繁に使っているためか、信号面の劣化が進んでいる状態だが、再生中に音が途切れたり、ノイズが発生する現象はいまのところ起きていない。しかし、この状態のCDは、CDプレーヤーで聴いているときとリッピング後にネットワークプレーヤーで再生した場合で無視できないほどの音の違いが現れることがあるので、どんな結果になるか、気がかりだ。


ジェーン・モンハイト『Taking a Chance on Love』
オーディオ用NASに保存したリッピング音源をUSB接続を用いてアキュフェーズのDC-950でDA変換して再生する。対象ドライブの型番をファイル名に加えて一斉にキューに登録し、次々に切り替えながら音を確認していく。リアルタイム比較なので差は分かりやすいはずだ。

まず結論から紹介すると、ドライブごとの音質の差は存在するが、基本的にはかなりの僅差で、ガラリと音が変わるわけではない。パソコン用の純正ドライブでも一定のクオリティの再生音が楽しめるし、D100の従来モデルと新世代機の間の差も非常に小さい。ただし、それぞれのドライブの間の違いは少ないのに、パソコンの純正ドライブの音を聴いたあとにD10Pでリッピングした音を再生すると、聴いた瞬間に両者の違いに気づくほど、音の鮮度やエネルギー重心の位置に違いを聴き取ることができる。


D10の内部写真。Blu-rayにも対応する新型高性能静音ドライブを採用する
D10Pは付属のACアダプターで電源を供給したD10に比べるとベースやホーン楽器の重心が低く、低音を中心にビッグバンド全体の瞬発力が大きく感じられたから、今回聴いた5台のドライブのなかでは頭ひとつ分は抜け出していると言っていいだろう。ヴォーカルのボディ感や声のぬくもりなど、中低域から中高域にかけての音色はどの音源で聴いても大きな差はないが、D10Pだけは発音の瞬間に唇の動きが見えるようなリアリティを実感した。先入観なしにランダムに切り替えて聴き直しても違いが分かるので、その差は実際に存在すると考えられる。

音の違いが生まれる理由はよく分からない。各ドライブで再生した音をリアルタイムで聴くときに同じような差が出るならまだ納得がいくが、今回はリッピング後のデータを聴き比べているので、電源ユニットの違いがなぜ音質に影響を及ぼすのか、判断がつかないのだ。実際に音の違いを聴き取れるのは確かなので、今後解析が進むことを期待したい。

■ソニーのロングセラーHDDプレーヤーの組み合わせも!

D10PをDELAのオーディオ用NAS以外のオーディオ機器とつなぐ応用例として、ソニーのHAP-Z1ESと組み合わせ、Z1ESのストレージにCDのデータを取り込むという流れも試してみた。HAP-Z1ESは一台で完結するHDDオーディオプレーヤーの人気モデルで、DSEEによるリッピング音源の音質改善も期待できる。


SONY「HAP-Z1ES」のリッピング用ドライブとしても利用できる
背面のUSB端子に、CDドライブ(D10P)を接続すると、Z1ES側で楽曲情報をネットから取得し、リッピングしたデータを本体内のHDDに保存することができる。そのデータをDSEEをオンにした状態で再生すると、CDプレーヤーで聴き慣れた音よりも鮮度やスピード感が上がったように感じられ、リッピングによって本来の音質が蘇ったような印象を受けた。D10Pとの組み合わせは価格がアンバランスになってしまうが、D10やD100を高音質リッピング用に導入するという選択肢は十分に考えられる。


ソニーのHAP-Z1ESは、ネットワークにつながっていれば、タイトルやジャケット等も自動で付与してくれるので便利
■電源を別筐体としたスイッチングハブS10では予想以上の音質変化を確認

続いてスイッチングハブのS10の話に移ろう。先行して発売されたS100が高評価を得たことを受け、50台の限定生産という形で発売されることになったプレミアム仕様のハブである。D10と同様、本体と同一サイズの独立した電源ユニットから電源を供給する仕様で、肉厚アルミ製の筐体や無酸素銅板によるシールドなど、構造と素材も共通する。


リニア電源つきオーディオ用ネットワークハブ「S10」
S10のヘッドユニットとS100の内部写真を比較する限り、両者の間に違いを見出すことはできないが、電源ユニットの巨大なトロイダルコアトランスや大容量のコンデンサーバンクはハイエンドオーディオ機器を思わせる構成で、安定した直流を供給するリニア電源として、正攻法で設計されていることが分かる。


右が電源ユニット、左がヘッドユニットの内部。電源ユニットには高級オーディオ相当の巨大トランスを搭載、本体にはヒートシンクも搭載し音質強化を図っている
搭載するポートは100Mbpsが4ポート、1000Mbpsが4ポートという構成でS100と変わらない。8番目のポートを光LAN伝送用のSFPポートと共用する仕様も共通で、S100と同様、オプションの光メディアコンバーターを組み合わせることでルーターとS10以降のネットワークオーディオ機器の間を光でアイソレートし、LANケーブルを介して外来ノイズが伝わるのを防ぐことができる。今回はこのオプションは使用しなかったが、ノイズの干渉が懸念されるネットワークルーターを遮断する効果は小さくないはずで、こちらにも期待が募る。


ヘッドユニットの背面端子。左4つのポートが100Mbps、中央4つが1000Mbpsに対応。右の縦2つはSFPポートで、SFPモジュールを差して使用する。中央にはLEDオンオフスイッチも搭載
リンのAKURATE DSMの再生時にS10の接続の有無を切り替えて音を確認した。試聴した音源は室内楽版のモーツァルトのピアノ協奏曲(192kHz/24bit)、スティーリー・ダン「バビロン・シスターズ」(96kHz/24bit)、アルネ・ドムネラス「High Life」(192kHz/24bit)の3種類だが、どの曲でもS10を介した接続の方が音場の透明感が高く、ピアノやギターの和音が安定する方向に響きが変化した。


ネットワークハブS10のテストには、LINNのAKURATE DSMとQNAPのNASを使用。ルーター直結の場合と、ルーターの直後にS10を挟んだ形で比較テストを行った
ハブの違いだけでそこまで差が出るのは不思議に思うかもしれないが、DELAのS100が登場する以前、バッファローの業務用スイッチングハブを導入したときに予想以上に大きな音質向上を体験したことがあるので、筆者にとって今回の結果は意外なものではなかった。


シアターシステムで音楽や動画配信サービスを楽しみたいユーザーの要望に応えて、S100のブラックモデルも登場。価格はシルバーと同じ138,000円(税抜)
ハブのグレードアップはストリーミングサービスの音質改善にもつながるので、ハイレゾやロスレスのストリーミングを常用している人には強くお薦めしたい。

本記事は『Audio Accessory vol.169』 からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。

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