公開日 2026/05/20 09:30

ソニー「1000X THE COLLEXION」の実力は? AirPods Max 2やB&W「Px8 S2」と比較レビュー

アラウンド10万円ANCヘッドホンの注目機
川端健次
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左からアップル「AirPods Max 2」、ソニー「1000X THE COLLEXION」、B&W「Px8 S2」

アラウンド10万円の高級ワイヤレスヘッドホンが、いま熱い。

このジャンルの嚆矢で、このマーケットを牽引してきたのは、やはりアップル「AirPods Max」だろう。初代モデルの発売当初の価格は67,980円(税込)だった。現在の基準だと安く感じるが、発売当時はかなり高価に感じたものだ。

AirPods Maxはその後値上げが進み、現在の最新モデル「AirPods Max 2」の価格は89,800円と、10万円の大台に迫ってきた。

もう一ブランド、この価格帯で注目したいのはBowers & Wilkins(以下B&W)だ。Px7シリーズという、AirPods Maxに近い価格帯のヘッドホンを出していた同ブランドは、2022年にフラグシップ機「Px8」を投入。これがなんと11万円台の高級モデルで、プレミアム化を加速させた。そして2025年後半に後継機のPx8 S2を発売し、さらに音質や機能をブラッシュアップさせ、高い評価を得ている。

そして今回、ソニーがこの価格帯に満を持して参入してきた。それが「1000X THE COLLEXION」(型番はWH-1000XX)だ。価格はオープンだが、想定売価は9万円前後。ソニーはそう言わないが、AirPods Max 2とガチンコ勝負という価格帯だ。

本項では、ソニー1000X THE COLLEXIONの実力を、AirPods Max 2と、少し上の価格帯のPx8 S2との比較をまじえ、くわしくレビューしていこう。

1000X THE COLLEXIONの製品プロフィール

1000X THE COLLEXIONのくわしい製品概要はニュース記事を参照いただきたいが、その名称からもわかるとおり、1000Xシリーズの最高峰、という立ち位置の製品だ。だから機能やデザインは、WH-1000XM6と共通の部分も多い。

1000XM6など、これまで1000Xシリーズで培った知見や技術をベースに、高級モデルにふさわしい外観の磨き込み、装着感の改善、そして音質向上を行ったのが1000X THE COLLEXIONだ。

 ソニー「1000X THE COLLEXION」。1000XM6などをベースに機能・デザインを刷新した

WH-1000XM6をベースに高級感を演出した

1000X THE COLLEXIONの外観は、これまでの1000Xシリーズのデザインをベースにしている。ヘッドバンド全体をぐるりと覆う金属が効果的だし、マット加工と磨き加工を組み合わせた丁寧な加飾によって、全体の印象をアップグレードすることに成功している。

ヒンジやヘッドバンド部のステンレスも、磨き加工のところとマット加工のところを使い分けるなど、芸が細かい

開発に2年かけたという合皮の質感も悪くない。天然皮革と比べると少し風合いが劣るが、コストや素材の耐久性、タッチセンサーとの両立、SDGsへの配慮など、諸々の要素を勘案したうえでの選択と推測する。

デザインの好みは人それぞれだが、既存モデルがベースであることを考えると、かなり健闘しており、うまく高級感を演出できていると感じた。ただし同時に、既存モデルをベースにせず、1000X THE COLLEXION専用のデザインを一から作っていたら、また違った印象になったのでは、とも思った。

なお、本体色はプラチナとブラックの2色展開。今回試用したモデルはプラチナだが、実質的にグレイッシュホワイトのような色合いだ。ブラックの実物も見たが、こちらもかなり質感は高い。

装着感は大変良好。質量増も重さを感じさせない

装着感は非常に良い。1000X THE COLLEXIONの最大の長所は、装着感ではないかとすら思える。

もちろん頭の形状や大きさとの相性もあるかもしれないが、違う頭の形をした何人かに装着してもらっても、1000X THE COLLEXIONの装着感の良さを絶賛していたので、やはり高いレベルにあることは間違いない。

側圧はあまり強くないが、それでいてしっかりと頭部をホールドする。頭頂部の当たりも適切なレベルにある。そして、1000XM6より質量がかなり増しているのに、装着感はむしろ良くなっているように思える。

その装着性の良さを支える要素のうち、特筆したいのはイヤーパッドの快適性だ。モチっとした低反発素材が内部にあり、直接耳に当たる合皮も滑らかで、装着していて心地よいと感じるほどだ。長時間使用でもまったく問題ない。

もちっとしていて心地よいイヤーパッド。装着時の不快感がないのは大きなアドバンテージだ

1000X THE COLLEXIONとB&W「Px8 S2」のイヤーパッドを比べると、Px8 S2のイヤーパッドは少し小さく、若干硬めだ。1000X THE COLLEXIONの、ふわっと包み込むという感覚には劣るし、良好なフィット感を得るには、イヤーパッドの傾きを前後に調整する若干の手間も必要だ。

AirPods Max 2とも比べよう。AirPods Max 2は、とにかく重く感じる。386.2gと絶対的な質量が大きいこともあるが、数字以上の重さを感じるのだ。これを着けて2時間の映画を観たことがあるが、かなり首・肩にダメージを受けた。またイヤーパッドの感触もガサガサしていて、1000X THE COLLEXIONのモチモチした心地よさに及ばない。

ノイズキャンセリング・外音取り込みも非常にハイレベル

1000X THE COLLEXIONのノイズキャンセリング性能は、非常に高い。ソニーによると、イヤーパッドの材質を変更したことなどにより、WH-1000XM6と比べ、若干ではあるがノイキャン性能が弱まっているという。だが元の1000XM6の性能が非常に高いので、多少弱まったところで、やはり最高レベルだ。ノイズを消す能力が高いのに、圧迫感が少ないのも大変素晴らしい。

AirPods Max 2もかなりノイキャン性能が高いが、それと比べても、明確に1000X THE COLLEXIONが上だ。その一方でB&W「Px8 S2」は、ノイキャン性能についてはこれら2モデルに劣る印象だ(当のB&W自身も「音質へ影響を与えないノイキャン」という方向性で製品づくりを行っている旨を以前から説明している)。

また1000X THE COLLEXIONは、外音取り込み性能もかなりハイレベルだ。外音取り込みをオンにして、騒音のある環境下で話してみると、自分の声もくぐもらず、自然に会話できる。

左側のイヤーパッドの手前下に電源ボタン、その上にノイキャン/外部音取り込みの切り替えボタンを備える。一番上にあるのは新設された360 Upmixの切り替えボタンだ

今回試した3機種のうち、最も自然に外音を取り込み、まるで装着していないような感覚が得られるのはAirPods Max 2だ。1000X THE COLLEXIONは、それには少し及ばない。そしてその2機種の後ろを、引き離されてPx8 S2が続く順番になる。Px8 S2は自分の声がくぐもって聞こえ、外音取り込みに関しては改善の余地がある。

1000X THE COLLEXIONは、高級感や音質を高めながら、1000XM6と同様の高いノイキャン性能や外音取り込み性能を備えている。プレミアム感がありつつ、機能性も犠牲にしていないのが本機の美点と言える。

音質チェック。新ドライバーや新プロセッサーの効果は?

次に音質を詳しくチェックしていこう。10万円近いモデルだけに、音質は非常に重要なポイントになる。

まず音作りにおいては、1000Xシリーズが近年行っている、世界の有名マスタリングエンジニアとの共創を継続した。

また音質に大きく関係する、様々な処理を行う統合プロセッサー「V3」を初搭載したのもポイントだ。メモリーが3倍になったほか、AI処理も高速化した。圧縮音源などをアップスケーリングするソニー独自の技術「DSEE」も、従来のDSEE ExtremeからDSEE Ultimateになり、ビット深度拡張にもAI技術を活用した。

音質を大きく左右するドライバーユニットにも、30mmの専用設計のものを採用した。カーボン積層コアコンポジット素材を振動板のドーム部に採用し、剛性を高め、ナチュラルな高域を目指したという。

まず、LDAC接続の音質をチェックしていこう。Androidの試聴にはXiaomi 15を使用した。

一聴して、情報量が多いが落ち着きのある、とても整えられたサウンドという印象だ。Silk Sonic「Leave The Door Open」では、各楽器の情報量をしっかり担保したうえで、ストレスフリーなサウンドが楽しめる。

ダイアナ・クラール「Desperado」では、ダイアナ・クラールのボーカルがグッと前に出てくる印象。声質についてもかなりクリアに整えられ、嗄れ声のニュアンスはそれほど出ないが、声の張りや力強さが感じられる。これはこれで、一つの解釈と感じる。

大瀧詠一「君は天然色」を聴いても、ほぼ同じ印象だ。イントロのピアノの響きはかなり鋭く、高域の伸びを高めたというソニーの主張に頷く。続く無数の楽器が入り乱れている部分も、良い意味で解析的になりすぎない。声質はあくまで明るく、少し高めに聞こえるほどだ。

LDAC接続の音は、ボーカル成分の強さが若干気になるものの、全体的に整理が行き届いている印象だ。派手さはないが、そのぶんニュートラルに、素材本来の音を堪能できる。

AirPods Max 2との音質比較

では、価格帯が同程度のAirPods Max 2と比べてみよう。AirPods Max 2はハイレゾやロスレスコーデックに対応しておらず、AAC接続になるため、iPhone 17 Pro Maxを使った。

コーデックの差によるものも大きいだろうが、「君は天然色」をAirPods Max 2で再生すると、イントロ部の音が団子になってしまう。ほかにも色々なジャンルの楽曲を聴いてみても、やはりLDACの優位性は大きく、全般的にソニー 1000X THE COLLEXIONの方が好印象だ。

では、同じAAC同士で比較したらどうなるか。ソニー1000X THE COLLEXIONをiPhoneにAACで接続してみた。iPhoneのシェアの大きさを考えると、この組み合わせで使う方も多いだろう。

AACで接続すると、1000X THE COLLEXIONの音質傾向が変わったことに気づく。LDAC接続では少し軽めに感じられたボーカルが深みを増し、全体的に重心が下がる。声やベースラインもファットになり、力強さが増す。わかりやすく低域に力を入れた音作りだ。

同じAAC同士で比較すると、1000X THE COLLEXIONに比べてAirPods Max 2は少しボーカルが軽めに感じられるし、ベースラインも控えめだ。AAC同士の比較では、LDACとAACを比べたときと逆の印象になるのが面白い。

このように、iPhoneとAACで接続すると、1000X THE COLLEXIONの低域はぐっと迫力が増すが、楽曲によっては少し出過ぎるケースもあるので、適宜イコライザーで調整してもよいだろう。

また、DSEE Ultimateをオフにしていると、くぐもって聞こえる場合がある。アプリから設定をAUTOにしておくのがおすすめだ。

AirPods Max 2。やはり金属筐体のインパクトは大きい 

B&W「Px8 S2」との音質比較

価格が2万円以上高いB&W「Px8 S2」とも音質を比べてみた。Xiaomi 15を使い、1000X THE COLLEXIONはLDAC、Px8 S2はaptX Losslessで接続した。

結論から先に述べると、やはり価格差なりの違いはある。1000X THE COLLEXIONでやや平板に感じたダイアナ・クラールのボーカルが、Px8 S2で聴くと、ウェットで情感豊かに聞こえてくる。細かな表現力が巧みで、音場表現も素晴らしい。まるで自分がその場にいるかのような臨場感がある。

また「君は天然色」においても、Px8 S2では、解像感を担保しつつ、空間表現も両立したイントロ部分の表現力にハッとさせられる。その後のボーカル部分も、ほかの2モデルでは気づかなかった細かな発声のニュアンスが聴き取れる。それでいて解析的にはなりすぎず、おおらかさも持ち合わせている。絶妙なバランス感覚だ。

米津玄師「IRIS OUT」のような、音数の多い最新楽曲で試しても、Px8 S2の再生能力は際立って高い。見通しの良さと空間表現力の良さが特徴で、これが本当にワイヤレスなのかと疑うほどだ。

Px8 S2のボタン類は配置があまりよくなく、手探りでは押し間違えることが多い。だがその音を聴くと、こういった細かな欠点があまり気にならなくなる

またPx8 S2は、AAC接続でも解像感やニュアンスの再現力が失われず、aptX Lossless接続と音の印象があまり変わらない。たとえばダイアナ・クラールの繊細な声量のコントロールを、AACでもしっかりと再現できる。

誤解がないよう強調しておくと、Px8 S2は確かに素晴らしいが、1000X THE COLLEXIONのレベルが低いわけではない。Px8 S2を選ぶ場合、ポイント還元なども考慮すると、おそらく3万円以上多く支払わなければならないはずだ。もう一台ヘッドホンが買える価格差がある。また、ノイキャンをはじめとした機能面は1000X THE COLLEXIONの方が上回る。これらをどう考えるか、悩ましいところだ。

新たにミュージックやゲームモードも追加した「360 Upmix」

さて、1000X THE COLLEXIONでは「360 Upmix」機能が強化され、これまでのシネマに加えて、ミュージックやゲームモードが追加された。ソニーは今回、この機能を大々的にフィーチャーしている。左イヤーカップの背面上方に、このモード専用の切替ボタンを用意していることからも、自信を持っていることがわかる。

今回、360 Upmixの新モードを搭載できた背景には、統合プロセッサー「V3」をはじめて搭載したということがある。これまでのV2に比べメモリーが3倍になり、これまでより多くのパラメーターを処理できるようになった。これによって新モードが追加できたのだという。

実際の効果はどうだろうか。まず「360 Upmix for Cinema」で『F1』を視聴してみると、一気に空間が広がり、効果音も適度に強調される。端的にいうと、臨場感がぐっと高まる。

ただし、作品やシーンによっては、特にセリフに、デジタル処理特有の不自然さがまとわりつくことがある。作品との相性を考えながら使うかどうかを考えたい。

新たに搭載された 「360 Upmix for Music」も試してみると、広がり感は素晴らしい。一気にステージが広がったような感覚を覚えるし、空間がパッと大きくなる心地よさがある。

一方でボーカルについては、機械処理されたような、やや不自然な音色に変化してしまうことも多い。いくつかの楽曲を試したが、メリットとデメリットを天秤にかけると、スタンダードの方がより自然に聞こえ、好ましいと感じた。

そのほか、360 Upmixにはゲームモードもある。FPSにフォーカスした音作りになっており、特に低遅延になるわけではなく、空間表現をゲームに合わせたというモードだ。

USB-Cケーブルを直接つなぐことはできない

さて、1000X THE COLLEXIONの音質に関わる面で、一つ残念な点は、USBケーブルで機器と直接デジタル接続できないことだ。

AirPods Max 2とPx8 S2は同機能を備えているため、USB-Cケーブルでワイヤード接続すると、ロスレスによる高音質伝送が可能になったり、遅延が大幅に抑制されたりするメリットがある。スペック上は、AirPods Max 2は48kHz/24bit、Px8 S2は96kHz/24bitに対応している。

ただし1000X THE COLLEXIONは、USBによるワイヤード接続はできないが、アナログ音声入力端子は備えており、両端が3.5mmステレオミニのケーブルも同梱している。このアナログケーブル接続時の音質がなかなか良いので、アナログ出力がある機器との接続には本ケーブルが活用できる。たとえばiPhoneはヘッドホン端子がないのでワイヤード接続はできないが、同端子があるPC/Macやゲーム機などでは有線接続できる。

USB-Cケーブルは充電専用で、音声信号の入力には対応していないのが少し残念だ

キャリングケースも進化。出し入れしやすく使い勝手も良い

ワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホンは、持ち運ぶことが多いため、キャリングケースの完成度も重要な要素だ。1000X THE COLLEXIONのケースはどうだろうか。

まず見た目からして、1000XM6のケースとはまったく異なることがわかる。1000X THE COLLEXIONはヒンジやバンドが変更され、イヤーカップを内側に折り曲げられないようになった。だから、1000XM6のケースを流用できない。

XM6のケースは、ヘッドホンを入れる際、イヤーカップを折り曲げる必要があり、これがちょっとしたパズルのような難易度だったのだが、本機のケースは、基本的にそのまま収納できるようになり、出し入れが格段にラクになった。

また、ヘッドバンドの形状を上手く利用して穴を設け、取っ手のようにしたアイデアも気が利いている。
折りたたまなくてもすんなり出し入れできるようになった。ケース自体の質感もまあまあ

WH-1000XM6ゆずりの豊富な機能も魅力

そのほか、イヤーカップをタップしたりスワイプしたりすることで再生操作やボリュームのアップダウンができるなど、WH-1000Xシリーズと同じ直感的な操作が行えるのも利点だ。物理ボタンの配置も含めてよく考えられており、手探りで操作ミスが起きないのも良い。

さらにユーザーの行動に合わせて自動的にノイキャンなどをコントロールするアダプティブサウンドコントロールなど、ソニーがこれまで磨いてきた、豊富でクオリティの高い機能がそのまま使える。

また6個のマイクとAIを使った、XM6で定評のある通話品質もそのまま搭載している。バッテリーは5分の充電で1.5時間の再生が可能な急速充電、いたわり充電に対応。またAuracast、10バンドイコライザーなども備えている。

まとめ

冒頭から何度も繰り返しているとおり、また製品名からもわかるとおり、本機はあくまで1000Xシリーズの高級モデルという位置づけのモデルだ。そして本機は、そのねらいどおりの仕上がりとなっている。

1000X THE COLLEXIONは、機能もデザインも音質も、すべてハイレベルにまとまっている。バランスのよい高級ワイヤレスヘッドホンを探しているユーザーにとって、有力な選択肢となるだろう。

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