公開日 2023/08/01 06:30

“ミュージックファースト”を貫くディナウディオ、その中核ライン「Evoke」シリーズを徹底試聴

【特別企画】音楽の本質を的確に引き出す

「Evoke 10」 -押し出し良い低域の量感を軸としたリッチなサウンド



まずはコンパクトな2ウェイ機Evoke 10から。前述の通り、28mmのCerotarトゥイーターと14cmのMSP・Esotec+ウーファーから構成されているが、クロスオーバーは1.4kHzと低く設定されており、フィルター特性は−12dB/oct.スロープを採用。なおウーファーのボイスコイルは38mm径のピュアアルミ製。ボビンはグラスファイバーを用いる他、スパイダー形状のダンパーにはノーメックスを取り入れている。

「Evoke 10」Walnut仕上げ 275,000円(以下ペア/税込)

試聴にはプリアンプにアキュフェーズ「C-3900」、パワーアンプにアキュフェーズ「A-75」を用意。プレーヤーにはアキュフェーズ「DP-570」を用いているが、DAC部のみを使用。USB入力へデジタルトランスポートとしてハイレゾDAP、Astell&Kern「SP3000」を繋いで音源を再生した。

スピーカースタンドに設置したところ

Evoke 10は手頃で小柄ではあるが、そのサイズの枠に収まらない、押し出し良い低域の量感を軸とした、リッチなサウンドを聴かせてくれる。高域は艶良く滑らかで、倍音のエッジを適度に利かせた、存在感のある音色だ。オーケストラは管弦楽器の旋律を艶良くスムーズに聴かせ、ボディの密度の高い濃厚なハーモニーが展開。しかし余韻の響きはスッキリとしており、混濁感はなく、そのバランスの巧みさに唸らせられた。

ジャズ音源のホーンセクションも鮮やかでハリのある描写であり、ボディも太い。ピアノやシンバルの響きも透明度が高く、低域方向の響きの厚みも感じ取れた。ウッドベースやキックドラムのボディは厚みがあり、押し出しも強い。ロック音源のリズム隊も厚みがあり、スネアドラムのアタックもきつさが抑えられている。エレキギターのリフも重厚で伸びやかだ。ボーカルは肉付き良く落ち着いたタッチで描かれ、耳当たり良くウォームな表現である。口元の動きは滑らかでウェットな艶感を持ち、程よい明瞭感を持つ。

11.2MHz音源のピアノはコクがあり、リッチなハーモニクスを聴かせる。ボーカルは湿潤で艶も良く、息継ぎのニュアンスも落ち着き良くしっとりと描く。クリストファー・クロス「Nature Of The Game」はピアノの煌びやかで清々しい響きと、ウェットで温かみのあるボーカルの耳当たり良い艶感がバランス良く融合。リズム・インで聴こえてくるベースの力強さと好対照で、穏やかさと躍動感を両立している。

「Evoke 20」 -ボーカルのリアリティが高く、より落ち着きと安定感がある



続いてブックシェルフ型の上位となるEvoke 20だ。こちらはウーファーがディナウディオの2ウェイの黄金比ともいえる18cm口径となる。トゥイーターはシリーズ共通であり、ウーファーの基本的な構造、部材も共通であるが、ボイスコイル径も52mmと大口径化。フィルターも2次オーダーの−12dB/oct.とEvoke 10と同じだが、クロスオーバー周波数は3.2kHzとEvoke 10よりもかなり高めに設定されている。

「Evoke 20」 Blonde仕上げ 385,000円

Evoke 10と比べ、より落ち着きと安定感のあるサウンドで、低音と高音の量感バランスも整う。ボーカルのリアリティも高く、ボディの厚みも自然でハリ艶良い。中高域との音の繋がりもスムーズであり、ネットワーク設計の良さも感じることができた。オーケストラの旋律は楽器の艶を引き立てた滑らかなハーモニーでまとめられ、ローエンドは深く伸びやかで、押し出しの良いゆとりのある響きを持つ。音場の広がりも良く、臨場感ある空間性を実感。

トゥイーターはソフトドーム。凹みやすいので取り扱いには注意

台形のキャビネット形状

ジャズのホーンセクションはボトムのコシを持たせながら、余韻をスッキリとヌケ良く爽やかに描き、存在感のある描写としている。ピアノやシンバルの響きも朗らかで、アタック感も明瞭だ。ウッドベースやキックドラムの胴鳴りも密度良く豊かに押し出すが、アタックのハリは艶があり、適度なキレ味を持たせている。

ロック音源のディストーションギターはコシのあるリフの太さ、歪み成分の艶やエッジをクリアに描写。リズム隊は厚みもあるがキレ良くアタックを引き締め、シンバルやスネアドラムもヌケ良くすっきりと描く。ボーカルは口元のハリを滑らかにまとめ、明瞭に表現。メリハリ良く爽やかなサウンドだ。

TOTO「I Will Remember」のファットなドラムのエアー感もふっと立ち上がり、ピアノの響きの落ち着き感、丁寧なボーカルの質感描写も踏まえ、音像の生々しさが際立ってきた。リヴァーブ処理の緻密さ、ピアノのペダル音も見やすくなり、より音楽に浸れる印象だ。11.2MHz音源の女性ボーカルは肉付きよくしっとりとした潤いと艶を伴う上質な描写である。ピアノやアコースティックギターのハーモニクスも階調細かく、低域方向の太さも十分で、非常に伸びやかでシームレスな表現だ。

次ページフロア型2モデルはより伸び良く安定的なサウンドを実現

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