公開日 2023/05/12 06:45

イヤホンドライバー第3の選択肢!?「MEMS」の技術と音質的なメリットを徹底解説

xMEMSのリファレンスイヤホン「Cowell」もチェック
text & photo 佐々木喜洋
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イヤホンドライバーの第3の選択肢!? MEMS技術を解説



今年の3月、「iFi audio社長が語る新製品情報と開発哲学」において、来日中のiFi audio社長の口から「MEMS」という聞きなれない技術の話題が出て、それがダイナミックやBAに次ぐ第3の選択肢になるという話に戸惑った方々も多いと思う。またつい先日の「春のヘッドフォン祭」には、iFi audioの社長が言及したxMEMS社の日本代表がブースを持って、実際にそのMEMSを使用したオーディオ機器を公に披露した。ここでは、その最先端の「MEMS」スピーカー技術について解説をしていきたい。

実際には、MEMS技術はスマートフォンの大半に既にMEMSマイクという形で普及している珍しくはない技術だ。だが、ここではオーディオユースとして使われるMEMS技術のスピーカー版について話をする。またMEMSスピーカーはいくつかのベンダーがあるが、今回は主にxMEMS社のユニットについて記述をする。現在、xMEMS社のMEMSスピーカー(トランスデューサー)には例えばフルレンジの「Montara」、高能率版の「Montara Plus」、超小型でフルレンジとしてもトゥイーターとしても使用できる「Cowell」などがある。

ヘッドフォン祭のブースで披露されたxMEMSのトランスデューサー。「Montara」「Montara Plus」「Cowell」などを展示

まず端的にいうとMEMSスピーカーとは、ダイナミックドライバーやBAドライバーのようなイヤホン向けのドライバーのことであり、最新の半導体技術を応用した「シリコンドライバー」あるいは「半導体ドライバー」ともいうべきものだ。既にMEMSマイクがあるので発音版はMEMSスピーカーと呼ぶが、ここではオーディオの従来技術と比較するためにMEMSドライバーと呼ぶことにする。つまり、「MEMSドライバー」とは、MEMSスピーカーユニットをイヤホンのドライバー(発音体)として使用するもの、ということである。

MEMSドライバー本体

MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の定義としては、超小型のメカニカルなデバイスやシステムのことを指す。このシステムはシリコンのダイから切り出すことができるという点ではSoCに似ている面もあるが、MEMSの大きな特徴は機械的な稼動部を持つという点である。この稼働部があるため、空気を振動させて音を出すことができる。このためドライバーの種類としては圧電型(ピエゾ)ドライバーとなる。

MEMSスピーカーを切り出すシリコンウエハー

具体的には下図を見てほしい。これは「Montara」と「Montara Plus」のCGによる解説図だ。例えば「Montara」では図の正方形の青い部分は筐体であり、赤く着色された部分が電圧により稼働する。「Montara」ではこの正方形が6つで1ユニットになっている。「Montara Plus」ではやはり長方形のユニットの中央部分の赤いところが稼働する。これが2つで1ユニットとなる。つまり乱暴に言えばICの一部が電圧で動いて空気を振動させるわけだ。

赤色の部分が電圧で稼働する

それゆえ従来のダイナミックドライバーやBAドライバーと比べた場合に、MEMSドライバーはシリコンチップであるという点がそのまま特徴となる。

まず、MEMSドライバーは従来型ドライバーよりも超小型・薄型である。つまりイヤホンを小型化できる。電力消費が少ないのもシリコン一体型ならではの特徴だ。これは再生時間を伸ばすのに有効だろう。

MEMSの音質的な優位性は?



音響的な優位性としては駆動部において極めて正確に動作が可能であり、従来型ドライバーと違いコイルなどがないので軽量である。このことから特に高域での歪みを減らすことが可能だ。また従来型ドライバーのようにいくつかのパーツを組み立てるものではないので製造誤差がない。このため左右の特性のマッチングが極めて優れている。これは位相特性を向上させる。つまり空間表現にも優れていると考えられる。またインパルスレスポンスも優秀で、リンギングなどが起きにくいという点からは着色感が少ないということも予想されるだろう。このため遅延特性にも優れている。

次ページ技術デモ用のリファレンスイヤホン「Cowell」をテスト

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