公開日 2023/05/05 08:39

いまだからこそ“二刀流”エントリーDAP、超小型Shanling「M0 Pro」に注目!

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第271回】

3.5mmシングルエンド駆動では、初代M0と比較して、明らかにパワフルな印象だ。宇多田ヒカル「BADモード」では、バスドラムの押し出しの強さ、アタックから抜けのスピード感などがアップし、四つ打ちのリズム感がクッキリする。かといって、リズムだけが際立って迫力重視な雰囲気になるわけでもなく、歌そして曲全体のしっとり感の再現性においても初代M0を上回る。

UA2との比較では、そのしっとり感においてUA2がM0 Proよりさらに好印象。しかしバスドラムやベースのクッキリパワフルさではM0 Proが上回り、総合的には互角と感じた。

だが本領発揮は、やはりバランス駆動だった。まずはホセ・ジェームズ「Bag Lady」やRobert Glasper Experiment「Human」などの、5弦ベースによる現代的な深い低音の描写。力感を込めつつタイトにまとめ、ベースの音像に密度や重みを与えてくれる。バランス駆動の効果のひとつ、いわゆる「アンプの制動力の向上」を実感できるところだ。

もちろん解像感や空間表現の向上も期待通り。星街すいせい「Stellar Stellar」のエレクトリックサウンドで構築された空間の見え方も、シングルエンド駆動での再生より精細かつ立体的なものとなる。

空間表現の立体感はUA2のバランス駆動と比較しても、M0 Proが上回る印象だ。M0 ProはDACチップがデュアルという優位もあるだろう。しかしそれ以上に、M0 Proはおそらくバランス駆動に重点を置いて設計されているのではないだろうか。そう思えるほど、M0 Proはバランス駆動時の音が特に優れていた。

バランス駆動重視DAP×バランス駆動専用イヤホン


ならばバランス駆動専用設計のイヤホン、しかもM0 Proと価格帯のバランスもぴったりなイヤホンとの組み合わせも試してみようと、Maestraudio「MA910SB」を使用し、バランス駆動の音質をチェックしてみた。

近頃また増えてきたトランスルーセントなデザインもポイント

MA910SBは、ダイナミック型+セラミックパッシブツイーターという構成の好評機「MA910S」の4.4mmバランス駆動対応版。しかもプラグを変えただけではなく、チューニングもバランス駆動を前提としたものに変更してあるとのこと。実売1万3200円なので、M0 Proとのセットでも3万円ちょいで済む。

この組み合わせの音は……シンプルに楽しい!中低域はあえてボリュームたっぷりに描き出され、リズムの存在感がグッと押し出される。しかし空間の広さに余裕があるおかげで、ベースやドラムスが大柄な音像になっても窮屈な感じにはならないのだ。

ボーカル、そしてギターやエレクトリックな音色のエッジはあまり強調しないが、エッジ感に頼らない明瞭度があり空間への配置も映える。過剰ではなく適度に演出し、それぞれの楽曲に凝らされた趣向を見せやすくわかりやすくして届けてくれるような音調だ。

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