公開日 2018/06/20 08:00

「Roon」がバージョン1.5に進化! MQAデコードがどう行われているかチェックした

LINN DS対応も検証

具体的には、MQA-CDでリッピング音した音源に「.mqa」を付けないでAudirvana Plus 3で再生した場合は、MQAコアデコーダーが起動せずに44.1kの互換性で再生される。Roonでは「.mqa」を付加しなくてもMQAコアデコーダーが起動する。

なぜ両ソフトでこのような差が現れるのか。これは、MQA音源としてのメタデータがどこに格納されているのか、という問題の再提起でもある。MQA音源ではメタデータは音楽ファイルのデータの中に埋め込まれており、これを確認するためにはファイルの中をいちいち解読する必要がある。

今回取材に用いた再生システム

そのためAudirvana Plus 3では、まずタグのMQA情報を確認する。MQA関連のタグ情報とは、「Encoder」と「ORIGINALSAMPLERATE」である。両方ともMQA専用のタグではないが、MQA音源の場合、EncorderはMQAエンコードに使用したエンコーダーのバージョン。
ORIGINALSAMPLERATEはマスター音源のサンプルレートである。ダウンロード音源ならば、音源の作成時点でこのタグも設定される。

例えば、タグエディターを使用して先ほどの2LのMQA音源の拡張タグを参照してみると、以下のように表示される(ちなみにEncoderタグの真ん中の16進数の値はMQA Studioを示す確認用のハッシュ値ではないかと推測される)。

ENCODER MQAEncode v1.1, 1.0.0+169 (b60a23e), DF77A107-A71F-4e57-A322-872C6D0E99C8, Dec 10 2015 05:55:20
ORIGINALSAMPLERATE 352800


配信サイトで購入、ダウンロードしたMQA音源であれば、こうした情報がタグにあるので、ソフト側もMQAと認識することができる。しかし、リッピング音源の場合にはこうしたタグが書き込まれない。

タグがないMQA-CDからのリッピング音源の場合、Audirvana Plus 3ではすべての音源を確認して速度が低下するのを避けるために、拡張子に「.mqa」がついている音源だけ、内部のデータを解析しにいく。つまり、MQA-CDリッピング音源は「.mqa」がついていないとMQA音源とみなされなくなる(この動作については、Audirvana Plusの開発者に確認を取っている)。

Audirvana Plus 3でMQAリッピング音源を再生。拡張子を変更していないので、44.1kHzのFLACとして表示されている。キューの一番下の384kHz FLACのみが拡張子.mqaを追加している

一方でRoonの場合、はじめにタグ情報を見に行くのは同じだ。Roonは音源をライブラリに追加した時点でタグ確認が行われる。加えてRoonは再生時、または定期的にファイルの中身の解析を行う機能がすでにあるので、このタイミングでかならずファイルの中身を確認してMQAの情報を割り出す。よって「.mqa」拡張子での判断は行っていない。つまり、MQA-CDをリッピングしてもRoonで聴く際には拡張子を変える必要はないのだ(この動作についても、Roon開発者に確認を取っている)。

RoonにMQAリッピング音源を読み込ませたところ。読み込みの途中なので、1曲目だけ384kHz MQA、2曲目以降が44.1kHz FLACと表示されている。時間が経つと全曲MQAとして認識された

このため、MQA-CDをリッピングした音源をRoonで扱う場合、まずライブラリに加えた初期段階では(タグだけを見て判断して)PCMのCD品質として表示されるが、そのうちにアルバムの1曲目が内部解析されてアルバムのサンプルレート表記はMQAとの“Mixed”(MQA以外のファイル形式も混在している)と表示される。時間が経つと全ての楽曲が解析されて、アルバムの表記はMQAに統一される。明示的に曲を再生にいけば、もっと早く解析をさせることができる。

ファイル拡張子に「.mqa」を付加すること自体は、MQAのファイル命名規約に則ったことでもある。ただし、実際は上記のようにソフトウェアによって挙動が異なるので注意が必要だ。


Roon1.5ではMQAを再生した際にもDSP処理が適用できる

Roonでは、MQA音源についてDSPを適用できるのが特徴のひとつとされている。なぜMQA音源でのDSP適用が難しいかというと、MQAの情報自体がデータの深部に埋め込まれており、それがDSPの信号処理によって壊れてしまうからだという。

そのためRoonではDSP処理の前にバイナリーデータの中のMQA情報を取り出し、次にDSPを適用し、またMQA情報を埋め込みなおすということを行っている。下記の画像のシグナルパスを見ると、「Preserve」と書かれている部分でMQA情報を取り出してEQを適用し、またMQA信号を戻しているのがわかる。

EQを適用してMQAを再生した際のシグナルパス

ただし、パラメトリックEQ、クロスフィード、ヘッドルームマネージメントの各DSPはMQAに適応できるようだが、今回検証した限りでは、サンプルレート変換は対応していないようだ。


まとめ − 再生ソフトによっても異なるMQA再生の挙動

Roon1.5は、96kHzまでのMQA音源をソフトウェアでコアデコードできるようになり、MQAレンダラーと組み合わせればそれ以上のサンプリングレートの音源もフルデコードできるようになった。以前でもMQAフルデコーダー搭載のUSB-DACやネットワークプレーヤーとの組み合わせには対応していたが、MQAレンダラーは利用できなかった。

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