公開日 2017/04/10 10:48

デノン「AVR-X6300H」実力検証。性能とサイズを両立した準旗艦 11ch AVアンプ

単体で7.1.4のアトモス/DTS:X再生に対応
山之内正
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筐体はフラグシップ機よりも高さと奥行きがそれぞれ30mmほどコンパクトで、実際に並べて見比べてみると、数字から想像するよりも小さく見える。ひと回りスリムなのにX7200WAより2ch多い11ch分のパワーアンプを内蔵し、しかも定格でチャンネル当たり125Wと十分なパワーを発揮するX6300Hは、オブジェクトオーディオに興味があるが、生活空間を侵食しない製品を探しているという人にお薦めできそうだ。

だが、肝心かなめの音質を見逃してはいけない。ダウンサイジングが音に影響を及ぼしていないか、複数の音源で本機の性能を検証してみることにした。

ステレオ再生では微小信号がもたらす響きや空間情報までを描き出す

今回はAVR-X6300Hの音質を確認するためにエラックの240LINEで7.1.4chシステムを組んだが、まずはアナログ接続のDCD-1600NEでCDの再生音を聴く。ステレオ音源でハイファイアンプとしての基本性能を確認することが目的だ。

「AVR-X6300Hの筐体内部。整然と並ぶ11ch分のパワーアンプ、そして大型電源が見て取れる

ネルソンス指揮ボストン響のショスタコーヴィチ第9番はオーケストラ全体がスピーカーの内側にかたまらず、前後左右に大きく音場が広がり、冴え渡るような伸びやかさが心地よい。一音一音の動きが活発で低音も不自然に沈まず、重苦しい響きにならない良さがある。

このCDはそれほど抜けの良い録音というわけではないのだが、低域がもたつかないシステムで聴くと、本来のクリアな音場が蘇り、見通しの良さを引き出すことができる。空間的な分解能も大事だが、音楽的な躍動感を引き出すには時間的な応答の良さが決め手なのだ。AVR-X6300Hはその重要な基準をまずはクリアした。

次にアレッサンドロ・ガラッティのピアノトリオを聴く。ピアノ、ドラム、ベースそれぞれの音像は若干大きめだが、目の前に楽器のイメージが浮かぶようなリアリティは格別で、ベースの弦の重さやシンバルの硬い金属音など、音の質感を描き分ける表現力が高い。ピアノとドラムは弱音でもタッチが細くならず、繊細だが神経質ではないし、ベースは重量級だが反応の鈍さはない。音像は大きめでも発音源にぴたりとフォーカスが合っているので、緩みやにじみを感じさせないことにも感心させられた。

USBメモリーに保存したハイレゾ音源の再生では、それぞれの曲ごとの音調の違いをていねいに描き分ける精度の高さがあり、ピアノのアルバムでは演奏の特徴に加えて楽器固有の音色や演奏会場の残響など、微小信号がもたらす響きや空間情報を聴き取ることができた。

ネットワーク再生はキュー再生にも対応。しかもAVアンプのGUIから操作が行える

ジャズのライヴ音源は広い音域に分布した倍音の存在を正確に伝え、楽器のアタックの再現性も高い。プリ部からパワー部まで、広い帯域にわたってアンプの周波数特性や位相特性が優れていないとこうはいかない。各チャンネルのアンプ回路をディスクリートで構成したメリットを実感することができる。姉妹機のAVR-X4300Hと同様、データ再生時にHDMIから出力される再生情報が充実していることと、選曲操作への反応の良さも特筆に値する。

次ページ大音量のアトモス再生でも圧迫感や飽和感がなく、全方位に余韻が広がる

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