公開日 2017/09/08 12:00

B&W、“過激な進化”の中級スピーカー「700シリーズ」。800 D3の技術継承/全ユニット刷新、15万円から

CMシリーズの後継
編集部:小澤貴信
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高域再生限界を拡大したカーボン・ドーム・トゥイーターを搭載

トゥイーターも従来のCMから刷新。従来のCMシリーズでは、アルミニウム製のダブルドーム・トゥイーターが搭載されていたが、700シリーズではB&W全機種で初採用となる新開発のカーボン・ドーム・トゥイーターが搭載された。従来のトゥイーターの高域限界(高域一次共振周波数)が38kHzだったのに対して、新トゥイーターは47kHzと大幅なワイドレンジ化を果たした。


カーボン・ドーム・トゥイーターのダイアフラムと磁気回路

こちらはアセンブリしたところ
澤田氏はこのカーボンドーム・トゥイーターの詳細を、開発背景からひも解いて説明してくれた。B&Wにおける最高のトゥイーターは、800 D3で搭載されているダイアモンド・トゥイーターで、高域限界は70〜80kHzにも及ぶ。最高の硬度を備える素材を用いたこのトゥイーターは、究極ではあるが、当然非常に高価で、ミドルレンジモデルへの搭載は不可能だ。

一方で、従来はミドルレンジのCMシリーズとエントリーの600シリーズにはアルミ製ダブルドーム・トゥイーターが搭載されていたが、ミドル機向けに「ダイアモンドとアルミの中間のトゥイーターが欲しい」として、今回それがカーボンドーム・トゥイーターの開発というかたちで実現されたのだという。

このカーボンドーム・トゥイーター、名前はカーボンだが、振動板そのものの素材にはアルミを用いている。では“なぜカーボン”なのか。従来のアルミ製ダブルドーム・トゥイーターは、アルミ振動版の周囲をアルミ製リングで補強するという基本構造を取っていた。これに対してカーボンドーム・トゥイーターは、メインのアルミのドーム振動板の表面/裏面に物理蒸着法によるカーボンコーティング(イオンプレーティングに類するものだという)を実施して硬度を強化。さらにその周辺部を従来のダブルドームと同様、こちらはカーボンファイバー製リングで補強している。

カーボン・ドーム・トゥイーターの分解図

なお、アルミドームの厚さは30ミクロン、カーボンコーティングの厚さは裏表でそれぞれ2ミクロンで、合計して34ミクロンという仕上がりになっている。カーボンファイバー製のリングの厚みは約300ミクロンとなる。結果として、従来のアルミドーム・トゥイーターとほとんど質量が変わらない、軽くて強靱なトゥイーターを実現できたのだという。ここでもコンピューター解析を示して、従来より高域限界近くの周波数でも変形がないことを説明した。

澤田氏はカーボン・ドーム・トゥイーター開発の意義について以下のように補足する。「ダイアモンド以外にも、トゥイーターの素材ならばベリリウムやボロンなどのダイアモンドに準じる性能を持つ金属が考えられるでしょう。しかし、いずれも毒性があったり加工や取り扱いが難しかったりして、結果として非常に高価なダイアフラムになります。今回のトゥイーターにおいては、比較的に身近な材料で特殊金属に匹敵する性能を実現したことに意味があります。当然、だからこそこれだけの性能をリーズナブルな価格で実現できるのです」。

トゥイーターオントップのハウジングも進化

従来のCMシリーズから引き続き、700シリーズでもフロア型とブックシェルフ型のトップエンドは、トゥイーターをエンクロージャーの上部に配置したトゥイーター・オン・トップ方式を採用している。このトゥイーターを保持するハウジングが700シリーズでは進化して、800シリーズに準じるものとなった。

トゥイーター・オン・トップ。ハウジングを800 D3相当に刷新し、メッシュにも改良が加えられた

従来のCMシリーズではハウジングが亜鉛ダイカスト製だったが、700シリーズではアルミの無垢棒からの削り出しに変更。サイズもより大きくなった。ハウジングはベル形状のため鳴きの影響が顕著に出るそうだが、700シリーズのハウジングはほとんど鳴きを排除することができたと澤田氏。そしてここでも、実際にハウジングを叩いて見せた。従来の亜鉛ダイカスト製ハウジングは確かにベルのようによく鳴る(鳴く)が、700シリーズのハウジングは中身の詰まったようなコンという乾いた音がした。これがスピーカー再生の音にも現れるのだという。

トゥイーター・オン・トップのハウジングの新旧比較。手前が700シリーズ、奧がCM S2シリーズのもの

実際に叩いて音を鳴らして実証する澤田氏

また、トゥイーターのメッシュネットも800 D3に準じるものへと改良された。従来はメッシュの開口率が約40%にとどまっていたが、700シリーズでは60%を超える開口率を確保。トゥイーターの性能を最大限発揮できるようになっているという。

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